フィフス遺跡
あの後、走ってメリッサを追いかけた結果、鬼ごっこのようになってしまい、フレット商業国家まで休み無しで駆けてきてしまった。
「か、体が思うように動かないな。また酸欠になってないか、これ」
「ぜぇ、ぜぇ、私達なにやってんだろ」
「わふぅ(つかれたぁ)」
「あ、あの、大丈夫ですか?なにか魔物とかに追いかけられたりとかじゃないですよね」
俺達の様子がおかしかったので見に来た門兵さんに心配されてしまった。
「だ、大丈夫だ。おふざけの止め時を見失っただけだから、心配はいらない」
「それならいいのですが……あー、しばらく詰所で休んでいってください、フレット国の大まかな案内をいたしますので」
「本当ですか?ありがとうございます」
「申し訳ない」
「では皆さん、こちらに」
門の近くの詰所に案内される。
「ここに腰かけて待っていてください、交代の手続きを取ってきますので」
▽ ▽ ▽
なんだか、隣の通路を通る門兵達に見られている気がする。
というよりも、交代で見張られているのか?これは。
それもそうか、魔物に追われてもいないのに息を切らしている相手なんて信用できないよな。
と隣を通る兵士達の声が微かにだが聞こえた。
「あの娘、可愛いな」
「だよな、やべぇよな」
「お前、さっきもここ通ってなかった?」
「た、隊長!?す、すいません巡回行ってきます!」
あ、違うな。これはあれだ、メリッサに魅了されているやつだ。そういえば前回のエルフの国の時は、多くの人と関わらなかったからな、少し忘れていた。
「すいません、少し手続きに手間取ってしまいました。それで、旅の方達は何故この国に?」
「七大遺跡に挑戦しに来た」
「なるほど、腕試しですか。この国には七大遺跡の内の二つがありますが、どちらにいかれるおつもりで?」
「とりあえず近い方から」
「なるほど、それではフィフス遺跡へ案内します」
「あの、直接遺跡に行くんですか?宿とか、事前の情報収集とかしたいのですが」
「大丈夫です、行けば分かると思いますから、着いてきてください」
▽ ▽ ▽
「これは」
「すごいね」
遺跡であろう古びた建造物の周りを囲うように、ぴったりと建物が増設されている。
「門兵さん、これはいったい?」
「なんと説明すればいいんですかね。遺跡の隣に宿を作って、情報を共有できる溜まり場を作ったものが、徐々に発展していったものと言えば分かりますか?」
「把握した」
「そうですか、ありがとうございます。中には武器屋や防具屋の出張店舗もありますので、大抵の物はここで揃いますよ。あとは、この国のほとんどの建物がお店ですので、何か欲しい物があれば探してみるといいと思いますよ」
「丁寧にありがとう」
「いえ、仕事ですので。それでは」
案内は終えたと、門兵は帰っていく。
「とりあえず、入ってみるか」
「そうだね」
重厚な両扉を押し開けて中に入ると、そこは外とはまた違った熱気に包まれていた。
「おや?新顔かい、珍しいもんだねぇ。そして犬っころまで連れてんのか、変わった組み合わせだねぇ」
扉の近くに座っていた女性が声をかけてきた。
「よぉ、格好いい兄ちゃんにかわいらしい嬢ちゃん。物見遊山や下手な腕試しなら止めときな、七大遺跡はそこらの遺跡とは危険度が段違いだからね」
「大丈夫です、私達ファスタ遺跡の9層まで潜った事があるので」
「なるほど、顔に似合わず実力者って訳かい、なるほどね。なら、情報の重要性は分かるよな。遺跡の情報は突き当たりの本棚に纏められてあるよ」
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「いいってことよ、長くここで探索者やってると他の探索者に世話焼きたくなるんだ。あたしの自己満足に付き合わせてるだけさね。あと、最後にひとつ、あんた達も分かってるとは思うが言わせて貰うよ」
女性はより真剣な顔になると一言
「引き際だけは間違えんじゃないよ」
と言った。
「あぁ、肝に銘じておく」
「はい、分かっています」
そう答えた俺達二人を女性はじっと見て、そして
「そうかい。頑張ってくるんだよ」
そう微笑みながら言った。
「はい」
「あぁ」
女性と別れて、彼女に教えてもらった本棚を目指す。
「やぁ、新入り君達。君達すごいねぇ、あのルコ姐にどやされずにあそこを通る人はそうはいないからねぇ、きっと優秀なんだろうねぇ」
また別の女性に声をかけられた。
「あぁ、急に話しかけてごめんねぇ、ここでは割りとよくあることなんだけど、他じゃそうないからねぇ。君達の探しているであろう本棚はここだよぉ」
女性が指指した所には本棚があり、そこには遺跡の情報が書かれた本が詰まっていた。といっても、ほとんどは複製された本で、二種類の本しかないようだ。
フィフス遺跡のモンスターは蛙型のモンスターで構成されているようだ。
通常の蛙を大きくしたようなモンスター、メガトード。
メガトードに似た姿形で、少し緑がかっており、少しでも傷がつくと風船のように膨らんでいき、爆発して毒の霧を撒き散らす、ポイズンボール。
この毒は致死に至ることは少ないが、毒を受けると体中に激痛が走り、行動を阻害する要因となる。
基本的にはこの二体が遺跡の中をうろついていたり、体色を変え潜んでいる。
奴らの基本攻撃は舌を使った攻撃で、ものすごい勢いで飛んでくる舌は、小さな岩を投げつけられたような衝撃を生み出す。それを、結構な速度で連射可能であり、単純故に脅威的である。
「なるほどな、蛙か。大変そうだ」
「レン、こっちのはいままでで分かっている遺跡のマップだったよ」
「そうだねぇ、マップだねぇ。でもそれ、最新版じゃないんだぁ。最近、浅めの層で黒い金属の固まりがある隠し部屋が見つかってねぇ、それを載せたマップの差し替えが終わってなくてねぇ、だからはいこれ、縮尺とかしっかりしてなくて落書きに近いけど、新しく見つかった部屋の場所の地図だよぉ」
「いいのか?こんなものを貰って」
「そうだねぇ、『情報は共有』がここのルールだからねぇ、君達も何か気づいたら共有してねぇ。私にでも話してくれたらいいからねぇ」
「分かった、そうしよう」
ひとまず本棚から離れる。
それにしても、トントン拍子で、黒の棺の位置が分かったな。
「どうする?レン。今から行ってみる?」
「そうだな、どうやら三階層にあるらしいからボス部屋に挑まなくてもいいようだし、宿をとって、解毒の準備を整えたら一度行ってみるか」
「分かった、じゃあまずは宿からだね」
▽ ▽ ▽
施設内にあった宿と道具屋で準備を済ませ、遺跡の入り口の前に立つ。
「次で魂の内の半分が戻ってくる事になるのか……早いというべきか、まだ半分というべきか」
「もう半分、だと私は思うよ。大丈夫、半分までこれたんだもん、私とレンなら絶対全部取り戻せるって」
「ワウ!」
僕もいるよ!というように花火が吠える。
「そうだな。メリッサも花火もいる、大丈夫だな。よし、行くか」
「うん」
「ワウ」
俺達は、大きく口を開ける遺跡の入り口へ、足を踏み出していった。




