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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
メリッサの故郷+エルフの国
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出発

 昨日は、花火と遊んで一日過ごしてしまった。

 ということで、一日経ったのでオオムラの店へ向かう。道は覚えたので、俺とメリッサの二人だけで、モンシーロは今日はいない。


「オオムラ、いるか?」


 店の扉を開けると同時に何かを踏んだ。


「ぐぇ」


 足元を見るとそれは、オオムラだった。


「いてて、なんだよ、もう」


「なんだ、というと客だ。それより、なんでまたこんなところで寝ているんだ」


「あぁ、昨日のお客さんか。なんで寝ていたかっていうと……今日もさっきまで作業してたからだね」


 昨日も徹夜していたような……こいつの体大丈夫なのか?


「えっと……大丈夫なの?」


 メリッサも心配に思ったのかそう問いかけた。


「もちろん!うちの子は完璧に仕上がっているよ!あとは使用者に合わせて調整するだけだよ」


 見当外れの回答に場が一瞬固まる。


「……たぶん、メリッサが聞きたいのはお前の体調のほうだと思うんだが」


「うん、そのつもりで聞いたんだけど……」


「あ、そうなの?まぁ、死なない程度には生きてるよ」


「かなり限界じゃないのか、それは」


「まぁ、大丈夫でしょ。そんなことより、早く工房にいくよ、子供たちが待ってるんだから!」


 強引に引っ張られて工房に連れていかれる。


「さて、さそちゃんシリーズのお披露目だ!」


 そこに並べられていたのは、昨日見た『さそちゃんシールド』『さそちゃんソード』『かまさそちゃんズサイズ』だけでなく、ブーメラン三本、籠手一組、胸当て二つ、腿あて二組、脛あて二組だった。


「これを、あのあと一晩で作ったっていうのか?」


「そうだよ、なんというかもう、パッションが止まらなくてね、作れちゃった」


「作れちゃった、で作れる物じゃないだろうに……」


「子供達への愛があればなんとかなるもんなの!それよりも説明と調整を始めるから、さそちゃんシリーズを着けてみてよ。あと、そっちの女の人のほうは籠手もね」


 言われるがまま、メリッサと俺はさそりの防具を身に付けていく。


「まずは、さそちゃんチェストプレート。以前使っていた防具の形そのままだから、単純に防御力が上がった形だね」


 オオムラは形そのままだというが、以前の防具よりも体に合うようになっていて、動きやすくなっている。


「次はさそちゃん腿あてと、さそちゃん脛あて。どちらも、裏に衝撃吸収用の布を当ててみたから、以前より衝撃に強くなっていると思うよ」


 こっちの防具二組も、筋肉の収縮に合わせてぴったり張り付いてくるかのようにちょうどいいサイズで作られてあり、オオムラが本当にエルフの国一番の武具屋であることがよく分かる。


「そして、さそちゃんグローブ。着けたままでも作業がしやすいように、ベースに革のグローブを使って、拳の部分にさそりちゃんの殼を、握ったり開いたりしたときに邪魔にならない感じの組み方で付けてるから、普通の革グローブと同じくらいな感じで握ったり開いたりできると思うよ」


「あ、レン。このグローブ凄いよ、本当に革のグローブ付けてるみたい」


「試しになにか殴ってみたいなら、そこの丸太にしてね」


 オオムラが指示した丸太は、オオムラ自身も何度か試しに攻撃するときにに使っているのか、切られた跡やら、叩かれた跡やらが沢山ある丸太だった。


「いいんですか?なら、お言葉に甘えて」


 メリッサは立て掛けてあった丸太に正対すると、音も無く正拳突きを放つ。


 ズドンと音ともに、メリッサの拳が丸太を貫通していた。


「何時ものより力の伝わりかたが良いような気がする」


「そ、そうか。良かったな」


「ねぇ、彼女って何者?なんで丸太貫通してんの?」


 オオムラが小声で確認してくる。


「普通の武道家だ。母親が少しだけ人間を辞めかけている気はするがな」


「普通、って。いやいや。普通の武道家なら丸太を貫通出来るって?そんなことになってたらこの世界だれも

 かれもが武道家目指すよ!」


 確かに。


「二人で何話してるの?」


「いや、何も」

「防具がきつくないか聞いただけだよ」


「そう」


「そういえばだな、代金はどれくらいになるんだ?」


「代金はエルフの国が払うらしいから安心していいよ」


「そうか」


「じゃあ、気をとりなおして。調整していくよ!」



 その後、しばらくの間調整と、過去に作った家族(武器、防具)の説明を聞かされた。

 解放された頃には既に夕方になっていた。


 ▽ ▽ ▽


 次の日の朝。出発の準備を整え終えた俺たちを見送るのは、アゲハ、モンシーロ、アリア·ベル、リュート、そしてオオムラ。


「もう少しゆっくりしてゆけば良いのに、もう出発かえ?」


「あぁ、早く魂を取り戻したいんだ」


「そうか、なら無理に引き留めはせぬ」


 次に、モンシーロが口を開く。


「神樹様を救ってくれてありがとう。魂集めがうまくいくように応援してるぞ」


「ありがとう」


 そして、オオムラ。


「さそちゃん達をよろしく頼むよ!」


「そうだな、十全に使わせて貰う」


 最後に、アリア·ベルとリュートが一緒に声をかけてくる。


「レンさん、出発ですか」


「あぁ。ベル、リュートをよろしく頼む」


「はい」


「練さん、他の皆も、よろしく頼みます」


「任せろ。ゼロワンにも頼まれたからな、なんとしてでも救い出すさ」


「ありがとうございます」


 とりあえず、皆に声はかけたな。メリッサの方も話し終わったようだし、行くか。


「あ、レン。出発する?」


「あぁ」


「それじゃあ、皆さようなら」


「さようならじゃ」

「さよならだ」

「いってらっしゃい」

「お元気で」

「さようなら」


 メリッサの言葉に反応して皆が口々に返してくれる。


「行くか」


「うん」


「ワウ」


 こうして、エルフの国を立つのだった。

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