サイドストーリー メリッサからみた彼3
〈side:メリッサ〉
レンの盾の完成の為に一日待つことになった。
いつもなら、この間に次の移動の準備とかをするのだけど、それはアゲハさんが手配してくれたみたいで既に揃っていて、今日のうちに私がしておかなければならいことは無い。そのため、とても暇になってしまった。
ちなみに、モンシーロさんはすでに自分の仕事をしに帰った後である。
「どうするべきだろうか」
レンもしたいことがないみたいで、私に尋ねてきた。
と、そういえば、花火と離れたままだったことを思い出した。
「ならまず、花火の様子見に行ってみない?」
「そうだな、引き離されてから一日近く経つしな」
ということなので、花火と会うために木々の中を歩いていく。
「と、適当に歩き始めてはみたものの、俺は花火がどこにつながれているのかを知らないのだが。メリッサは知っているのか?」
「いや?レンなら知っているかと思って」
どうやら、どちらも知らずに歩いていたみたいだ。
「モンシーロは既にいないしな、そこらの人に聞いてみるしかないか」
「そうだね。あ、あそこの人だかりとかよさそうだね」
そこには、結構な量の人が列をなしていた。
見てみると、どうやら女性や子供の比率が高い。
「なんの集まりなんだろうな」
「吟遊詩人とかかな?でも、ついさっきまで鎖国してたから、そんなにすぐには人は来ないか。じゃあなんだろう?」
レンが列の最後尾にいた女性に声をかけた。
「すまない、この列はなんの列なんだ?」
あれ?花火のことを聞くのが先じゃ……でも、確かに気になる。なんの列なんだろうなぁ。
「この列はねぇ!それはもうふかふかで可愛らしい黒鉄色の毛を持ったワンちゃんの列なの!ほんとに可愛らしいのよ!?」
花火の列だった。
「なぁ、メリッサ。花火大人気みたいだな」
「そ、そうだね」
とりあえず、列の先頭へ行ってみる。そこには、子供たちに遠慮なしに撫でられている花火がいた。
そのうえ、プレゼントらしき食料が山のように積まれていた。
「アイドルの握手会みたいだな……というより列の整理している人とか、はがしもいるから、もはや握手会そのものっていったほうが正しそうだな」
「握手会ってなに?あとアイドルってのも」
「アイドルってのは、吟遊詩人に似た職業で、歌を歌いながら踊りを踊る個人やグループのことをいうんだ。握手会ってのは、そのアイドルと握手ができる会だな」
「へぇ~」
とここで、撫でられていた花火がこちらを見つけたと同時に。
「クゥ~ン」
と助けを求めるような声で鳴いた。
「そんな風に鳴かれると助けないわけにはいかないよな」
レンはそう言って群がる人々を花火からひき離そうと近づいて。
「花火君が嫌がりましたので、本日のおさわり会はこれにて終了します!解散!」
レンがひき離すまでもなく。恐ろしく統率のとれた動きでいなくなっていった。
「なんというか、なにもしていないのに疲れた気がする」
「というか、気が抜けただけじゃない?」
「そうかもしれない」
「ワウ!」
寄ってきていた花火が、心配してたんだよ!とでもいうように鳴いた。
「すまない、心配かけたな」
「私達どちらとも無事だからね」
「ワウ!」
でも、僕はご主人たちなら大丈夫って信じてたからね!とでも言うようにレンに顔を擦り付けている。
「そうか、ありがとうな」
「ありがとね」
「さて、花火は見つけた。次は何をしようか」
「ワウ!」
なら遊んでー!と鳴いたような気がした。
「そうだな、基本移動と戦闘だったもんな、遊ぶか」
ということで、レンと花火は遊ぶことにしたみたいだ。
そして、三十分。そこには、笑顔のレンがいた。
なんというか、その笑顔に魅入ってしまった。普段、人形のような真顔をしているギャップなのか、その無邪気な笑顔がとても可愛らしく見えた。
それと同時に確信した。
『感情が、戻ってきている』と。
「憤怒と慈悲を確認、統合します」「憤怒と慈悲、及びそれに付随する機能の復旧を確認しました」これは、レンが黒の棺に触れたあと、レンから出てきた言葉である。この後に、レンはアリア・ベルにたいしての怒りをみせている。
暴食と節制の魂を統合した時も同じである。あの時は空腹を訴えていた。
「今回の、憤怒と慈悲は何が復旧したのかなぁ」
怒り、だけではないだろう。今現在笑っていることがその証拠だ。七大罪と、七美徳どちらもが共通する機能が復旧しているのだろう。
「たぶん、暴食と節制の時は食欲が戻ったんだろうなぁ」
なら憤怒と慈悲の共通点はなんだ?
「あ、そうか。他者への感情か」
というよりは周囲への感情と言った方がいいだろうか。
ともかく、これでレンの感情を取り戻す方法がはっきりしたわけだ。
「よし、頑張るぞ」
「いったい何をだ?」
あまりに考え込み過ぎていたのか、レンがとても近くに来ていたのに気づかなかった。
「わっ!?レン!?」
「すまない、驚かせたか。なにかメリッサが考え込んでいたようだったので気になってな」
「あー、えっと。そうだね、少しレンのことを考えてたよ」
「俺のことをか?」
「うん。レンの感情が確実に戻ってきているって思って、だから、レンを完璧に元に戻すためにも、頑張らなきゃって思ってね。思ったというより口に出ちゃってたけど」
「そうか……俺は本当に、君に助けられてばかりだな」
レンが私の手をとる。
まっすぐな瞳が、まったくそらされることなく、私の目を見てくる。
「メリッサ、今までありがとう。これからもよろしく頼む」
かなりの至近距離でレンのことを見つめることになってなんだか顔が熱くなってしまう。
落ち着け、私、きっとレンは普通に今までの感謝を述べているんだ。冷静に言葉を返せばいいだけだ。
「ど、どういたしまして。こちらこそよろしくおねがいします」
その私の言葉に、レンが優しく微笑んだ。
なんというか、至近距離でこの不意討ちの微笑みは反則じゃないかなと、思う。
「わ、私。先にホテルに戻って休んでるから」
とりあえず、撤退。
ただ、しばらくはあの顔を思い出して休めそうに無い気がする。




