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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
プロローグ(脱出)
6/106

サイドストーリー メリッサから見た彼

 «サイド:メリッサ»

 彼に会ったのは、偶然だった。


 突然歩いていた通路が崩れ落ち、私もそれに巻き込まれた。階段を探すため、通路を道なりに歩く。そこで一つの扉を見つけた。


 罠を警戒しつつ扉を開ける。

 そこには、宝箱など何もなく、ただ黒い金属の塊だけが置いてあった。

 思わず、近づいて触れる。

 一瞬、光が走ったように見えたが気のせいだろう。

 立ち止まっていると、黒い金属が蠢く。

 どろりと黒い金属が流れ落ちると、裸の男がそこに寝ていた。


 それが彼だった。


 165セメルほどの身長で筋肉質ともいえない体、この辺りでは珍しい黒髪。


 彼の名前は、トビカゼレンというらしい。

 出身地は聞いたことの無い場所、彼の記憶は無い。感情の動きが見え辛く、どこか人形じみている。


 見せて貰ったステータスは異常そのもの、ageは0、異常な蓄積魔力と、全くもって平均値の能力、一切無いスキルと魔法。

 そして、謎のバー。

 大罪と美徳。聞いたことの無いボーナス。

 黒い金属塊に封じられていたため、危険人物でないか確かめなくてはならない。


 ひとまず、彼の様子見をしつつ、この遺跡から出ることにした。


 一日目の道中は問題無く来れた。彼は特に騒ぐこともしない。初心者故の無用心は多少目立ったが、それだって他の初心者に比べると、用心している方だった。

 道中の彼は、私との会話に全て正直に答えているように見えた。彼の純粋な賛辞は純粋な故に心に響く。

 なぜ、彼はあんなものに封じられていたのだろうか。単純な疑問が浮かぶが、彼自身もそれは知らないのだろう。


 二人で安全地帯に泊まる。彼は、戦力として最も重要な私を休ませようとした。

 彼自身が休むつもりは無いらしい。生存戦略としては正しい。

 だけど私は、少し納得がいかない。彼自身も疲れているはずだ。しかし、彼には怠惰の大罪がある。それを盾に彼は休まないと言う。苦し紛れに私は告げる。


「他の人に襲われなくても、君に襲われる可能性がある」


 言ってから気付く、そのことを考慮していなかった自分に。

 探索者として失格だ。いくら親しくてもその部分の警戒は必要なのに。


「襲うなら、命の危険が無くなってから充分襲うさ」


 動揺していた所に刺さる一言。

 赤くなったであろう頭を隠すために毛布を被る。警戒を解かずに眠るが、彼は全く動かない。

 結局、朝まで彼は動かなかった。



 次の層の広場で、私はミスをした。

 動かないリビングアーマーに油断して彼を危険に晒した。

 それでも彼はリビングアーマーを倒すために自らを囮にして攻撃のチャンスを与えてくれた。

 しかし、私はリビングアーマーを仕留めきれなかった。

 リビングアーマーに隠れて彼は気付いていなかったかもしれないが、彼が盾を投げてくれなかったら、私は3手先で斬られていただろう。

 だから、彼が斬られそうになった時は本気で叫んでいた。


 彼を砕けたリビングアーマーの瓦礫の下から引っ張りだす。

 気づけば本気で怒っていた。

 彼は平気で自分の命を晒す。人形の様な感情がそうさせるのだろうが、見ていられない。

 彼が町に行って大丈夫になるまで、私がついていないといけない。

 そう思いつつ、私は彼に手招きをしたのだった。

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