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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
メリッサの故郷+エルフの国
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えぐい武器(盾)

 昨日、豪勢にもてなされた俺達は、モンシーロとともにとある工房の中にいた。


「これが国一番の武具屋の店か?意外に小さいんだな」


 目につくのはまっさらな壁と呼び鈴らしき鈴が置かれただけのカウンターのみ、剣も盾も置いてはいない。


「オーダーメイドでやってるからな、店舗部分はこれで十分らしい」


「なるほど」


「疑問は晴れたか?なら呼ぶぞ」


 モンシーロは、呼び鈴を鳴らす。


 ………………


 …………


 ……


 呼び鈴の音が消えても変化は全くない。


「来ないな」


「来ないね」


「確かに来ないな、サイズの調整その他で本人を連れてこいと言ったのはあちらなんだが」


 と、どこからか微かに物音が聞こえたような気がした。

 その音の出どころが気になって、あたりを見回すが、そもそも何も置かれていないので目星をつけることができない。


「どうしたの?レン」


「いや、何か物音聞こえたような気がしたのだが……気のせいだったみたいだな」


 俺たちが話している間に、モンシーロがもう一度呼び鈴を鳴らす。


 静寂の中にまた鈴の音が響きわたった。しかし、その残響が消えかける頃になっても例の武具屋は現れない。


 そのことに、モンシーロは軽く舌打ちした後で。


「聞こえてないのか?なら、ここで待っていてもしょうがないな。よし、中に入るか」


 と言った。


 モンシーロはカウンターの天板の一部を持ち上げてカウンターの中へ一歩踏み出し。


「うぉっ!?」


 と大声をあげる。


「どうした」


 急いで近づいてみると、そこには少年が倒れていた。


「おい、なんで……なんで……」


 モンシーロがぶつぶつと呟いてる中、またあの物音が聞こえた。

 その物音が何なのか、はっきりとする前に。


「なんでこいつは、自分でした約束すっぽかしてここで熟睡してやがんだあああああ!!」


 モンシーロが切れた。あと、あの物音は寝息だったらしい。


「ん?うぅ、うるさいなぁ。何?なんなの」


「おいこら、何呑気に寝てやがる」


 言葉ともにモンシーロは少年を揺さぶる。


「あ、もんちゃん。おはよー、どうしたの?」


 気の抜けた朝の挨拶とともに、少年はモンシーロを逆なでしていく。


「どうしたのじゃない、約束通り依頼主を連れてきたんだ。それなのにお前はこんなとこでぐっすりとはな」


 モンシーロのこめかみにはっきりと青筋が浮かぶ。


「あ、そのことで怒ってたのか。ごめん、さっきまで作業してて、その後君たち招く準備しようとしたら急に眠くなってね。いやはや」


「いやはや、じゃない。それで、どれくらいできているんだ?」


「依頼されてた盾は、使用者の体のサイズにあわせる作業で終わりだよ」


「さすがだな。それで運ぶのを手伝えばいいのか?」


「いや、ちょこっと作業したいから、工房のほうに案内するよ。ついてきて」


 勝手に話が進んでいるが、この少年は誰なのだろうか。


「すまないが君は誰なんだ?この武具屋の跡取りかなにかか?」


「なにそれ。えっと、あれ?モンシーロもしかして僕のこと言ってなかったの?」


 話を振られたモンシーロは笑いをこらえるかのように顔を手で押さえていた。


「くっ、子供と間違えられたのはこれで95人中94人だな、ぷふっ。こ、こいつが武具屋の主で俺と同い年のオオムラだよ。くっそ、腹痛い」


「は?同い年?」


 あらためて目の前に立っている少年に目をやる。しかし、どうみても中学校の、クラスで一番小さい奴位に背丈が無い。


「これが国一番の武具屋なのか?」


「これっていうなよ!盾作ってやらないぞ!?あ、でもあの子達が日の目を見ないってのはちょっとなぁ……ぶつぶつ」


「またぶつぶつやってるよ……まぁ、安心してくれ、腕は確かだ、俺が保証する。おい!考え事してないでさっさと案内しろ!」


「あ、ごめん。じゃあ、着いてきて」


 オオムラに案内されて奥へと入っていく。


「ここが僕の工房さ」


 オオムラが扉を開けるとそこには、無数に並べられた剣、盾、弓、鎧、鎖鎌、兜。ありとあらゆる武器、防具が無秩序に並べてあった。


「凄いな」

「壮観だねぇ」

「いつみても、恐ろしい量だな」


 各々が口々に言葉を漏らす。


「ほら、立ち止まってないでこっちに来てよ」


 いつの間にやら結構な距離を行っていたオオムラに呼ばれ、工房の一角へ行く。


「さて、この台にのってるのが依頼されてた盾。その名も、『さそちゃんシールド』だよ!」


「さそちゃんシールド……?」


 物凄い名前で呼ばれたその盾は、今まで使っていた丸盾を2.5個ほど横に並べた大きさの中型盾だった。色は、あの素材からまるまる一つ削りだしたのか、ジャイアントスコーピオンの焦げ茶色一色だけ。そして、デザインなのか盾の片側に、カーブのかかったカットが入っていて。まるで蠍やザリガニの閉じた鋏のような印象を受けた。


「そう、さそちゃんシールド!格好いい名前でしょう!さて、次は持ってみてよ」


「あ、あぁ、分かった」


 さそちゃんシールドを持ち上げてみる。今まで使っていた丸盾よりは重いが、想像していた重さよりは軽く持ち上がった。

 さそちゃんシールドの裏側は、鉄の板が裏打ちされてあり、更にその上に、ボウガンの射出部のような機構がついた平べったい箱が取り付けられてあった。


「これの腕通しはどこだ?」


「それは、今つけるよ」


 そう言うとオオムラは、卓越した手さばきで腕通しを取り付けてしまった。


「どうだい?ぴったりかい?」


「そうだな、丁度いい。しかし、この箱はいったいなんなんだ?」


「よく聞いてくれました!」


 それを聞いたとたん、オオムラのテンションがはねあがる。


「それはねぇ、さそちゃんシールドのすんごい機構の一部なんですよ!」


「機構?」


「そうです、素晴らしい機構なんですよ!まずは、取っ手のツマミを回してください」


「こうか?」


 言われた通りにツマミを回す。すると、ばちんという音とともに取っ手が二つに分割するとともに、蠍の爪のようだと思っていた部分が本当に開いた。


「これがさそちゃんシールドについてる機構のその(いち)!さそちゃんシザー!分割した取っ手を元に戻すように握りこむとまた鋏が閉じるんだよ。これで、目の前の敵をグリップ&ホールド!」


「……これは、使えるのか?握力が捕縛するときの力に直結しているんだよな、なら直ぐ逃げられるのでは?」


「大丈夫!これは、とっておきを使うための前段階にしか過ぎないんだからね。今度はその箱についてる止め金を外してみて。あぁ、鋏が挟める範囲は危ないからなにもない状態で使うようにね!」


 とりあえず、指示どおりに鋏の範囲になにもないことを確認して、止め金を外す。するとその瞬間、ガチンとあの箱から幅広の刃が勢いよく飛び出し、鋏の範囲を埋め尽くした。


「やっぱ何度みても格好いいなあ!それはさそちゃんギロチン!さそちゃんシザーで狙いを固定してさそちゃんギロチンで一撃必殺って寸歩さ!それに止め金は魔法で操作できるから、触って操作する必要なし!」


 その説明に、メリッサとモンシーロはヤバイものを見たような顔になる。というか、ヤバイものそのものだな、これ。


「さらに、魔力を定期的に流すことによって、魔力を貯めやすくなった魔鉄を基本的に使ってるから、水とか氷を纏わせたりできるよ」


 高性能だな。


「なぁ、オオムラ、お前がさっきまで作業してたってことはまだ何かしら仕掛けがあるのか?」


「いや?」


「いや?って、ならなんで寝てないんだ?お前」


「それはこの『さそちゃんソード』とか、『かまさそちゃんズサイズ』とか作ってたからだねぇ、特にさそちゃんソードについては、硬い外骨格からまるまる一本削りだしたから時間がかかって、かかって」


「なにやってんだ」


「だって、あんな素材あまり手に入らないんだよ!?本当に創作意欲が湧いて湧いて。あ、そうだそこの二人、どんな防具使ってるの?今ある?」


「私は無いです」

「俺のはあるぞ?」


「見せて見せて」


 巾着から防具を取り出していく。


「へえ、空間魔法の付与された巾着か、凄い珍しいなぁ、それで防具は……うん、なるほど。そっちの人のも同じ防具だったりする?」


「はい」


「なるほど。じゃあ、サイズ測らせて?」


 なにが、『じゃあ』なのかも分からないが、許諾するまえに恐ろしいほどの勢いと圧力でサイズを測られる。


「よし、データは揃った!じゃあ、僕はまた作業に戻るから、明日取りに来てねー」


 そう言ってオオムラは作業に入ってしまったのだった。

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