ブラックマンティス
ブラックマンティスがその鎌を大きくふりあげて威嚇してくる。その視線は、俺とNo-25だけを往復していた。
「やはりか」
「なにか知っておるのか?」
「毎度、黒の棺を開けた後で強いモンスターに襲われていたんだが、今までは偶然だと考えていた。だが、あれはタリア神国が、俺たちホムンクルス、ひいては俺の魂が外に出ることを防ぐ最後の手段として用意したものだったんだ」
「だから、レン達ばかりを見てるんだね」
ブラックマンティスは素早く接近してくると、前列に立っていたメリッサとアゲハを無視して、モンシーロが担いでいるトゥーファイブと俺に向かって鎌を振り下ろしてくる。
モンシーロは片手で斧を、俺は剣を当てて鎌を防いだ。競り勝てないと判断したブラックマンティスは、機敏に動いて、メリッサ達の拳や魔法を避けつつ距離をとった。
「レン!こいつ結構速いよ!」
「うむ、至近距離なのに全然当たらんかったぞ」
「こっちも小さいの担いでるからあの鎌受けるだけで精いっぱいだぞ!」
皆が口々に叫ぶ。
「レンさん、私を下ろしてください。あなただけなら普通に戦えるのでしょう?なら、私を置いてでも戦うべきです」
「そうだな、分かった」
そう言って、アリア・ベルを手近な壁に下ろす。
「モンシーロ、トゥーファイブをアリア・ベルの近くへ下ろして、彼女達を守ってくれ。メリッサと俺は前衛でブラックマンティスの足止めを行う。アゲハは魔法で攻撃を、君の一撃が頼りだ」
「了解」
「ふむ、やってやるかのう」
「まかせろ」
個々から強い返事が返ってくる。それを聞いた俺は勢いよくブラックマンティスに駆け寄った。
攻撃対象が自分から近付いてきたので、ブラックマンティスはその鋭い鎌を左右から挟み込むように振るう。
「憤怒、最大」
左の盾を左から来る鎌に、右手の剣を右から来る鎌にそれぞれ叩きつける。憤怒によって力の上がった腕は、ギリギリと鎌を押し返していく。
「メリッサ、足を」
「了解!」
メリッサの蹴りがブラックマンティスの足の一本をへし折る。
「獲った!」
危険を感じたのか、ブラックマンティスは大きく跳躍し、メリッサから距離をとった。
よし、この調子で足を削いでいって、機動力を落とせば、魔法が当たるようになって、仕留めることができる。
そう思った俺は先ほどと同じように距離を詰め、ブラックマンティスの攻撃を誘う。
釣られたブラックマンティスは右の鎌で水平に切りつけてきた。その攻撃を再度盾で受けようとして、その衝撃が小さいことに違和感を覚える。
「レン!?」
焦ったようなメリッサの声に、自分の体を見て見ると、右脇腹から、だらだらと赤い血が流れ出ていた。盾の方は、ニ撃目に耐えきれ無かったのか、すっぱりと下から三分の一ほどが切れ落ちていた。
とりあえず左手で出血部に回復魔法を使おうとしてみる、しかし、直ぐ側にいるブラックマンティスの攻撃にも気を配らないとならないため、回復魔法に集中できず、うまく発動できない。
そうしているうちに、ブラックマンティスは追撃として左の鎌を振るう。
絶体絶命の状況の中、俺は冷静に鎌の動きを見切ると、鎌の方へと飛び込んだ。
鎌が薄皮一枚裂くか裂かないかというところを通り過ぎていく。俺は、すり抜けざまに剣を振って、ブラックマンティスの左鎌を断ち切り、駆け抜けていくついでに足へも剣を振って傷を付ける。ブラックマンティスはそれにより、体勢を崩した。
「アゲハ、今だ!」
「まったく、無茶をしおる。ゆくぞ?巻き込まれるでないぞ!」
アゲハは、そういった後、軽く息を吸い込むと。
「焼き払え『フレイムカーペット』」
と言いつつ魔法を発動させた。
炎の膜が地面に薄く拡がっていく。それは、ブラックマンティスにたどり着くと、その体に纏わりつくように登っていき、その身を焼いていった。
纏わりつく炎を掻き消そうとブラックマンティスは辺り一面に動き回る。
しばらく動き回ったブラックマンティスは、やがて動きを止めた。それに合わせて、アゲハも火魔法を止める。
そこから現れたのは、全身が焼け爛れていて、各部から煙を上げるブラックマンティス。
「さすがにここまで焼ければ動くまい」
「そうだね」
メリッサとアゲハが気を抜いた瞬間、ブラックマンティスは急に起き上がり、残っていた足で勢いよく跳躍すると、トゥーファイブ向かって鎌を大きく振り下ろした。
「しまっ!?」
「なんじゃと!?」
油断していたメリッサ達は反応しきれず、俺も負傷のせいか追い付けそうに無い。
ブラックマンティスの鋭い鎌がトゥーファイブに振り下ろされる、それをモンシーロが左腕を当てて受け止める。
「俺を、忘れてんじゃねぇぞ、黒蟷螂野郎」
鎌を受け止めつつ、モンシーロは、残った手で斧を振り、ブラックマンティスの首を断ち落とした。




