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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
メリッサの故郷+エルフの国
55/106

01(ゼロワン)

「 ……統合中


  ……統合中


  ……統合完了


 憤怒と慈悲、及びそれに付随する機能の復旧を確認しました

 復旧した憤怒と慈悲の効果についての説明を開始します


 憤怒の大罪、出力を上げている間、筋力、魔法の変換効率を上昇させます


 慈悲の美徳、出力を上げている間、他者への回復魔法の効果を上昇させます


 以上で説明を終了します」


 終わったな、よし次は。


「続いて記憶の統合を行います」


 だろうな。


「……統合中


  ……統合中


  ……統合完了、記憶を展開します」


 やはり、意識を保つことができず、また倒れるのだった。


 ▽ ▽ ▽


「勇者召喚は成功か」


「はい、成功しました。しかし、転移恩恵は物凄いものです、もし反抗されたりしたら私達は……」

   

「構わない、こいつは反抗することはない」


「なぜ?」


魂裂き(たましいざき)の秘術を使う、あのホムンクルス達を用意しろ」


「ですが魂裂きの秘術を用いてこの者の魂を抜くといたしましても、その魂を植え込んだホムンクルスが動き出すことになりますよ?」


「それなら各地の遺跡に一つづつ封印しておけばいい、ちょうど7つあるんだ7つに裂いて各地に置いておけば一つに成ることも無いだろう」


「分かりました、ではそのように致します」


「あぁ、頑張ってくれ」


「全てはタリア様の為に」


「全てはタリア様の為に」


 ▽ ▽ ▽


 記憶の再生が終わった俺は、あの黒い精神世界に居た。


「今のは......以前にも見た記憶?いや、以前よりも明瞭だった......いったいこれは......」


「君がこちらの世界に来た時の記憶さ」


 いつの間にやら、俺とそっくりな姿形をした『あいつ』が立っていた。


「君がさっき見たのは魂の分割によって失われていた記憶の一部、タリア教によって今のこの状態になる前の記憶だね」


「タリア教とは何だ?今この状態とはどういうことだ?」


「待った、一から話していこうか」


「あぁ、頼む」


「タリア教は、この世界の創造主とされる女神さまを信仰対象とする宗教だね、始まりの都市フラットの町の神父さんも一応この宗教だったように、この世界で最もメジャーな宗教だ。この大陸の中央には、タリア神国っていうのもあるくらいの宗教だよ」


「そうなのか」


「そこで問題になるのが、このタリア神国で、この国はタリア教以外を認めない主義を貫こうとしているんだ。地方のタリア教徒や教会は、他宗教や無宗教者とも仲良くやってるのにね。そして、時折宗教戦争を仕掛けては、大した戦果も得られずに引き下がっていたみたい」


「その国が俺とどう関係を?」


「うーん、まずは僕の由来が先になるかな。タリア神国の深部は戦争に勝つためにいろいろと禁忌に触れるような実験をしていたんだ。実際にあった計画としては、旧人類が作った戦闘生物の、オーナー設定がされていない個体を使役して戦争に利用する『T計画』とか、人造で人間を生み出して、従順で強力な兵士を作ろうとした『H計画』とかね。まぁ、前者は数集めるのが大変で頓挫、後者もろくにまともなホムンクルスができなかったし、きれいに人間になったのも動き出さなかったから頓挫してるんだけどね」


「それで、お前は何者だ?」


「僕?僕かい?僕は、『H計画』の最初期の検体にして、七体しかできなかった完成品のうちの一人『No-01』さ。タリア教の奴らからは、ゼロワンって呼ばれてたっけな」


「ホムンクルスだというのか」


「うん、そうだよ」


「なら、なぜ俺と同じ姿をしている?」


「それは、君がこの世界にいる理由を説明すればわかるよ」


「ならさっさとしろ」


「了解。戦闘用の兵士を大量に用意することに失敗したタリア神国深部は、次に一人いるだけで戦争に勝てるような兵士を作ろうと考えた。そこで、深部が目を付けたのは、勇者召喚だったんだ」


「小説でよくあるあれか?」


「そうみたいだね、ここより上位の世界に穴を開けて、人間を落とす。界を渡った人間の体は、この世界の人間にはほとんど太刀打ちのできないような強さになるらしいね」


「それで、運悪く俺が当たったって訳か」


「そうだね」


「しかし、それならなぜ俺はここにいる?奴らは強い兵士を作るために俺を呼んだんだろう?」


「そうだよ、奴らは君が目当てで呼んだんだ、正確には君の体が目当てだけどね」


「体?体もここにあるが」


「いや、君の体はここには無いよ。それこそが、僕と君が同じ精神世界を使っている理由さ」


「なんだと?どういう意味だ」


「君の魂は、魂裂きの儀によって記憶とともに分割され、唯一綺麗にできた七体のホムンクルスの中に封印されたうえで、更に黒の棺の中に封印されたのさ」


「つまり、今の俺の体は本当の体ではなくお前たちの体を間借りしているってことか?」


「そう。それで、完成した僕たちが動かなかった理由が、魂のパーツが足りていなかったっていうことだったんだけど、そこに魂の欠片を持った君がやってきた事でこちらの魂が君の魂をコピーして、僕が生まれたって訳」


「つまり、俺の魂を基にしているから、俺に似ているということか?」


「そうだよ」


「そうなら、俺の本当の体はどこにあるんだ?」


「たぶん、タリア神国によって操り人形にされて戦わされているね。あの国のことだから、天使だとでも呼んでるんじゃないかな」


「天使だと?身勝手に俺の体を使っておきながら!」


「そこは、ほら。僕の推測だから、どうどう、ほら落ち着いて」


「すまない、熱くなった」


「素直でよろしい。それでだ、君が今置かれている状況は理解できたかい?」


「あぁ、俺は今お前の体を間借りしていて、本当の体はタリア神国が使っている。黒い直方体にはお前のようなホムンクルスが入っている。そうだろう?」


「そう、そこでなんだけど。僕から一つ、頼んでもいいかい?」


「何をだ?」


「僕以外のホムンクルス、彼らを解放してほしいんだ。あぁ、最優先は君の魂の回収でいい、セカンダ遺跡の仲間は全てが終わってから訪れる感じでいいからね」


「それはいいんだが、どうすれば解放できる?」


「簡単だよ、黒の棺に光魔法をぶつければいい」


「それだけで、いいのか?」


「そうだよ」


「なら出来そうだ」


「そう。あ、そろそろ時間みたいだ。じゃあ頼んだよ」


「任せておけ」


「そうだ、君の魂の規模が大きくなってきた結果、個別の精神領域が形成され始めてるから」


「どういうことだ?」


「簡単に言うと、こういう形ではもう会えないよ」


「そんな事をこのギリギリで言うな!」


「ごめんね、とりあえず伝えておくべき事を優先して教えてたからこんなギリギリになっちゃった。まぁ、僕の持ってる知識は君が参照しようと思えばできるから」


「はぁ、そういう話では無いのだが……」


「それじゃあ。後、僕が消える訳じゃないから安心してね」


 おい待て。その言葉が出る前に、意識が浮き上がる感覚がした。


  ▽ ▽ ▽


「あ、レン。起きた?」


 目を開けたら直ぐ近くにメリッサの顔があった。頭に当たる柔らかさも考えると、これは膝枕か。


「あぁ。俺はどれほど寝ていた?」


「倒れてからさほど経ってはいないかな」


「その娘、お主が倒れてから直ぐに膝枕をしおったぞ。お熱いのぉ」


「ふぇ!?」


「お前が起きるまでずっとそわそわしてもいたな」


「ふわっ!?」


「本当に俺にはもったいない程のパートナーだよ」


「あ、ああああああぁぁ!!」


 堪えきれなくなったメリッサは顔を真っ赤にしてゴロゴロと転がり出す。


「全くもってからかいがいのある反応をするのぉ」


「そうだな、それには同意する」


「むぅ!皆して私をからかうの止めてよ!」


「それはすまなかったのぉ。さて、そちらの用事は終わったな?」


「いや、待って欲しい」


「なんじゃ?まだあるのか?」


「すぐ終わる」


 立ち上がって黒い直方体に近づく。


「魔力よ、闇を照らす光となれ『ライト』」


 光の球を作り、黒い直方体に押し当てる。


「何をしておるのじゃ?」


「これでいいはずなのだが……」


 少しして、黒い直方体が緩み始め、どろりとした黒い塊が流れ落ち、そこから裸の少年が現れた。


「ん!?なんじゃ?これは」


「これは……レンの時と同じ……」


「黒の棺が魔力を吸っていたのは、彼の生命維持を行っていたからだ」


「ふむ、確かにの、魔力の吸収は止まっておるようじゃな」


「彼は、結局何者なのだ?」


「彼は……」


 俺が話そうとした瞬間、閉じていた部屋の扉が勢いよく音を立てて開けられた。


「なんじゃ!?」


「アゲハ様、私の後ろに!」


 そこに立っていたのは、見たことのある顔。


「アリア·ベル、なぜ君がここに」


 止まり木亭で毎朝花火と戯れていたあの女性が、何故かそこに居た。


「あぁ、やはりあなた方が悪魔だったのですね。花火君が居た時点で想定はしていたのですが……それにしてもなんということでしょう!こんなことが起こりうるとは!」


 質問に答えずに、一人話し始めた彼女を見て、背筋に何か薄ら寒い物を感じるのだった。

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