食事の差?
ゆっくりだった体感時間が元に戻る、と同時に足の踏ん張りがきかずによろめいて砂に膝をついてしまう。
「ワウ!」
花火が走ってきて、体を俺に摺り寄せてくる。褒めて欲しい!というような感じが伝わってきたので、喉のあたりを転がすように撫でてやる。
「よしよし、大活躍だったな、花火。......ただ、お前本当に花火なんだよな?」
そう言うのも、もとは森に擬態出来るような濃い緑色だった、花火の背中側が濃い灰色というか、銀色に黒を混ぜたような色に変わり、腹側の白色の毛の面積が前見たときよりも明らかに広くなっているからだった。
「ワウ」
俺の問いかけに花火は肯定的な感じで反応する。やはり、花火か。となると、この変色はどういうことなのだろうか、それに先ほど花火が発光したり、雷を放ったことも気になる。
「レン!大丈夫!?怪我してない!?」
「お客さん、素晴らしい魔法でした!」
考えこんでいると、メリッサ達が戻ってきた。
「少し無理して魔力を使ったから疲れたが怪我は無いな」
「そう、よかった」
俺の無事を確認できたメリッサの視線は次に花火へ向かう。
「それで、この狼くんはやっぱり花火なんだよね」
「そうらしい」
「ワウ」
「本当に不思議ですね……テイムモンスターにはこのような事が起こりえるのでしょうか……」
「雷放ってたし、光ってたし、色変わってるし。何がなんだかだよ……」
「花火、さっき使っていた雷の魔法を見せてくれないか」
「ワウッ!」
分かった!任せて!と言わんばかりに吠えると、花火は少しバックステップで距離を取り、体の回りに雷を纏い出した。
「なるほど、さっきの光は雷が帯電していた時の光なんだね」
「完全に電気を扱ってるな、本当にどういうことなんだ?」
「この個体にだけ変化が起きたんですよね?では、こちらのテイムモンスターと野生のモンスターとの差を考えればよろしいんじゃないでしょうか」
「差か、食事に魔力を吸わせている事か?」
「確かにそれしか考えられないけど……」
「魔力ですか、そんなものが食事の代わりになるんですね」
「そうみたいなんだよね」
「なら、お客さんの魔力を吸って、お客さんの得意魔法を使えるようになったというところでしょうか」
「確かに電気魔法は得意だが……そんなことがあり得るのか?」
「実際使えてるんだし、今はそう思うしか無いかもね」
「そうか」
「それより、お客さん。少しご提案なんですが、移動を1日伸ばして明日の夜に移動しませんか?」
「どういうことだ?」
「ジャイアントスコーピオンの腹に埋まった剣を取り出すのには時間がかかりそうですし、あの頑強な殼を持っていきたいじゃないですか、そこで一旦オアシスの町に戻って人手を呼んできます。ジャイアントスコーピオンの大解体ですよ!ですが、そんな事をしていたら、現地の到着が明け方になってしまいます。ということで本日はオアシスに戻りましょうということなのですが……」
「確かにあの硬さは魅力的だが……メリッサはどうする?」
「うーん、確かにあれで作った籠手は使ってみたいかも」
「俺の盾の素材としてもよさそうだしな、そうするか」
「まいど、では案内します」
▽ ▽ ▽
戻ってきたオアシスの町で、案内されたホテルはあの高いホテルだった。
「おい」
「いえ、心配しないでください、費用はこちらで出します。あのジャイアントスコーピオンの余った素材を商人達に売る際の紹介料だけで十分黒字になると思いますから、そんな臨時収入を産んでくれたお客様へのサービスです。それではお休みなさい、明日の昼頃には終わっているはずなので、その頃に町の広場へ行ってみてください」
「わ、分かった」
勢いで押しきられて呆然と立っていると、既に手続きを終えたらしい案内人から鍵を渡された。今さら断る訳にもいかずそのままそのホテルに泊まった。確かに高そうなだけはある質のよいホテルだった。
▽ ▽ ▽
その後、言われたとおりに昼頃に広場へいくと、殼が完全に剥ぎ取られ、剥き身にされ、刺身のように細切れになって少し美味しそうになっているジャイアントスコーピオンの姿があった。いくらかの殼――といっても一つ一つが大きいので結構な量になる――を受け取り、残った素材を集まっていた商人達に売っているとちょうど日がくれかかる頃になっていた。
案内人とともに砂漠を渡るが、主クラスの大きさのジャイアントスコーピオンはさすがに出ることはなく、二体ほど倒して目的地に着くという順調な道のりだった。
そして、エルフが住む大森林に続く平原へとたどり着いた。
「それじゃあお世話になったな」
「いえ、こちらこそ。本当に儲けさせていただきました」
「いろいろありがとうございました」
「いえいえ、仕事ですので」
「ワウ!」
「はい、ありがとうございました。しばらく行けばエルフがコンタクトをとってくると思うので、それまで森のほうへ歩いて行って下さい。それでは、またのご利用をお待ちしています」
そう言ってから一礼すると、案内人は元きた道を帰って行った。
「さて、こちらも行くか」
「そうだね」
「ワウ!」
3つめの遺跡は近い。次の記憶はなんなんだろうか。
そう考えつつ、森の中へと入っていくのだった。




