表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
プロローグ(脱出)
5/106

脱出

 瓦礫から引っ張り出された俺を待っていたのは、メリッサの怒った声だった。


「レン!」


 その後に、何を続ければいいのか分からなそうに、メリッサは頭をかきむしる


「俺は、大丈夫だ。剣を受けた時に両腕が折れたみたいだが、命に別状はない」


 とりあえず、彼女を落ち着けるために、無事を報告する。


「そういうことじゃないよ!死んじゃったらどうするのさ!」


 しかし、彼女の昂りは収まらない。


 死ぬ......か、リビングアーマーの剣を盾で受ける時も、一切恐怖が無かった。

 体を走る痛みも、知覚しようと思わなければ感じない。

 今の俺の体はどうなっているのだろうか。


「レン!聞いているの!」


「あ?すまない、なんの話だった?」


「君は、自分を粗末にしすぎるって話だよ!」


「しかし......あれしか手は...」


「そういことじゃないよ!」


「分かった。次回から、気をつける」


 彼女の声に、ついそう答えていた。


「よろしい。絶対だよ」


「あぁ」


「じゃあ、腕を出して」


「なぜだ?」


「言ったそばから!右腕!血!」


 確かに右腕を刺されていた事を思い出す。


「すまない、忘れていた」


 俺は右腕を出す。


「忘れられるものじゃないと思うけど」


 メリッサは、小包から包帯を取り出すと俺の腕に巻き付ける。


 治療を終えると、メリッサが手招きする。


「さぁ行こう、外へ」


 ん?まだまだ道は長いと思っていたが、ここでおわりなのか?


「しかし、あと5層残っているのでは?」


「あ!ごめん、言って無かったね。遺跡には、各キリ層ごとにフロアマスターと転移魔方陣が存在してね、探索者はここから外へ出入りできるんだ。」


「なら下の転移魔方陣のほうが近かったのでは?」


 純粋な疑問をぶつける。


「フロアマスターって言ったよね。下から上がってくるなら転移魔方陣だけ使えるけど、上から降りていく場合は、毎回フロアマスターと戦わなくてはならないんだよ」


「そうか」


「ということでレッツゴーだよ」


 メリッサが階段を登り出す。つられて、俺も登っていく。


 登りきった先で見た物は、柔らかな光をたたえた泉。

 様々な光の粒が浮き。鏡のような水面が揺れる。

 光の反射は小部屋に、様々な模様を描く。


「綺麗......なんだろうな」


 まったく感慨が湧いてこない。恐怖を感じない点では有用だが、こういう点で心が動かないことは世界との格差を感じる。この格差にでさえ悲しいという感情は動かない。やがて、考えるのが面倒になった。


「行くか」


 メリッサに近づく。


「それで、どうすればこれは使える?」


「じゃあ、おいで」


 メリッサは躊躇いもなく、泉に足を踏み出す。

 俺も、ゆっくりと泉に足を踏み入れる。


「入ったね?行くよ!転移!」


 景色が歪む。体が揺さぶられるような感じがする。少し気持ちが悪い。

 揺れが収まると、そこには日の光がさす、入り口が見えた。


「行くよ」


「あぁ」


 メリッサに連れられて、日の光の下へ足を踏み出すのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ