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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
メリッサの故郷+エルフの国
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砂漠

 一歩踏み出すごとにざくっ、ともさらっ、とも言いづらい音が鳴り、それとともに踏み込んだ足が足首まで滑るように埋まっていく。煌々と輝く月と星々によって真っ暗になることはないが、その代わり刺すように冷たい空気が周囲を取り巻いていた。


「大丈夫ですか、お客さん達。水の補給は頻繁におこなってくださいよ」


 砂漠の横断を始める前に雇った案内人がそう忠告してくる。


「分かっている。メリッサは大丈夫か?」


「うん、大丈夫」


「ワウ!」


「それにしても砂漠は暑いところだってのは良く聞くけど、夜になると本当に寒くなるんだね」


「そうですね、それを知らずに耐暑装備だけ準備してきた旅人が案内人も雇わずに砂漠(ここ)へ向かって、年に何回か死人が出る程ですからねぇ。砂漠ではいつもの旅の常識は通じないっていうのに……」


「普通は夜歩く事は無いもんな」


「えぇ森や平原ならそうです、ですが砂漠は昼は休み夜移動するのが鉄則です。夜間の涼しい内に移動すれば運動で発生した熱によって寒さを凌げますし、暑い昼の間は動かなくて済みますから」


「そこで暮らす者の知恵だな」


「そうですね、まぁ口煩く言われてきたので知恵というよりは掟みたいなものですが」


「掟か、破れば死にかねないからな。確かにそっちのほうがしっくりきそうだ」


「それにしてもお客さんのその魔道具は凄いですねぇ」


「確かに凄い物だとは思うがそれほどの物か?」


「えぇ、砂漠を渡る際に必要な水は案外と重いものなんですよ。平地はそれだけで済みますが、ここでは足場の悪さも相まってかなり体力を消耗します。その点その魔道具は二人分の水を入れているというのにたいした重さじゃない、砂漠の商人からしたら殺してでも手に入れたい品物でしょうね。まぁ砂漠で無くても商人にとっては垂涎の品だとは思いますが」


「だからこのバックを背負わせたの?」


 俺とメリッサ、花火は今いつも使っていたバックよりも一回り大きいバックを背負っている。それは案内人の彼から背負う様に指示された物で、中には形を保つための骨組みだけが入っている。


「勿論です。あの程度のバックで渡れる程ここは甘くはありません。それなのに渡れた場合、何か特別な物の力のお陰ということになります。そして商人はそれの正体を多かれ少なかれ探ってくるでしょう。後は先程話した通り、殺してでも奪い取ろうとする商人が現れる事でしょう。そんな事になって、あなた方を送るっていう依頼を失敗すれば、食っていけなく成るのは私ですから」


「そうか、そっちのほうが信用はできるな」


「お客さんに死んでほしく無いってのもちゃんとあるんですよ?」


「ねぇ、道を間違えたりして送るのを失敗すれば評判が下がるのは分かるけど、途中で依頼人が襲われて死んだ場合、評判って下がるものなの?」


「えぇ、キャラバン等で分業している場合はともかく、個人の案内人は依頼主を守るのも仕事の内です。ですので……」


 案内人はこちらを向くと同時に、腰にさげた剣を一閃する。

 切り抜いた場所を見てみると、そこには真っ二つになった蝎の亡骸が有った。


「このように、ある程度の実力が無いといけないんですよ」


「蝎か、すまない。助かった」


「いえ、仕事ですから。ところでお客さん、良く蝎のこと知ってましたね。あまり知られていない生物なのですが」


「あ、あぁ……以前書物で見たことがあってな」


「そうですか」


 不自然な間を詮索すべきではない事柄と思ったのか案内人は一言そう言うとまた前を向いた。


「お、あの明かりは。お客さん達、そろそろ見えてきましたよ。あれが砂漠の休息地、オアシスです」


 そこには暗い夜中に煌々と松明を燃やし、明かりを灯し続ける大きなオアシスの町があった。

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