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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
メリッサの故郷+エルフの国
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治癒魔法

グロ注意です

 夕食後、治癒魔法を教えてもらうためメリッサと二人座って待機する。暫くして、メリーさんがやってきた。


「それじゃあお母さん、お願いします」


「よろしく頼みます」


「うふふ~お母さん張り切っちゃうわね~。じゃあまずは……」


 ひゅっ、と風切り音が聞こえた。


「えっ、痛っ!」


 声を上げたメリッサを見てみると腕に一筋の赤い線が入っていた。俺の腕に目を落とすと、同じ線が腕に入っている。


「これは、切り傷か。しかし何故?」


「あらあら、治癒魔法でしょ?ならまずは怪我をしないと」


 そういうと、メリーさんはどこから取り出したのか分からないナイフをくるりと回した。


「え!?ちょ、ちょっとお母さん!教えてくれるって、何か理論的な物を教えてくれるんじゃ無かったの!?」


「うーん、戦闘中の動きの無駄は分かるけど、流石に魔法は感覚的な事しか教えられないわねー」


「それにしたって傷を負う必要は無いんじゃないか?普通の体にかけるのでは駄目なのか?」


「だって私がこれを習得したときはもっと深い怪我を負ってたし、やっぱり見た目の変化がある方が分かりやすいかなーって」


「一つ聞くけどお母さんその時どんな傷を負ってどんな風に習得したの?」


「えーっとね、たしかあの時は……そうそう、スケルトンの剣を受け損ねちゃってね?腕が落ちちゃったの」


「え?」

「は?」


 俺とメリッサの声がシンクロする。


「それでね、流れ出る血を気合いで止めてたんだけど、もしかしたらこれ腕治せるかなって思って、いい感じにくっ付けて固定して2日ほど気合いを込めたまま放置してたら治っちゃったのよ。それでね、後から聞いてみれば、私が使ってた気合いって魔力だったらしくて、なんか治癒魔法が使えちゃってたみたい」


 軽い声で言い切ったメリーさんに対して聞いていたメリッサの顔色は暗い。


「大丈夫か?メリッサ」


「だ、大丈夫。家のお母さんが少し人間辞めてたエピソードが増えただけだから」


「そんな訳で頑張ればメリッサちゃん達も直ぐに習得できるわ」


「できるか!お母さんの基準に合わせないで!」


「あらら、そう?」


「どんな感じで扱っているのかだけでも教えてほしいのだが」


「そうねぇ、普段傷が治るのを気合いで早めてる感じかしら。傷口を魔力の塊で塞ぐ感じね」


 言われた通りに傷口に魔力を集中させてみる。しかし、治っていく感じはしない。

 メリッサも俺もしばらく魔力を流し続けたが、治る気配は現れなかった。


「今日はここまでね、じゃあ腕を出して、治してあげる」


 メリーさんが一撫ですると、赤い線は綺麗さっぱり消えてしまった。


 ▽ ▽ ▽


 翌日、朝食をいただいた後メリッサは道場に連れて行かれた。

 俺は畑仕事を手伝うように言われ、無口なレッサさんと二人で鍬を使い畑を掘り返していた。


「あっち、頼む」


「分かった」


 昼休みを挟んで農作業、そして夕食の後に治癒魔法の練習。


 またひゅっ、と風切り音。二回目なのにいつ付けられたか分からない傷。

 その傷口に魔力を集中させる。


 そんな日が数日続いた。


 ▽ ▽ ▽


「ん?」


 いつもの通り魔力を流していて、違和感を感じた。傷口が魔力を吸っている?これは治ろうとしているのか?

 しばらく魔力を流していると、なんとかさぶたが出来た。


「あら、レン君出来たんじゃない?」


「え!?本当!?」


「そのようだ」


「ど、どうやったの?」


「すまん、全く分からない。違和感を感じたことぐらいしか、あとは傷口が魔力を吸った感じがしたが」


「傷口が魔力を吸う感じ……いけるかも!」


 結局、その日もメリッサは出来なかった。


 そしてそれから更に数日。


「あ、これ?この感じ?」


 メリッサの魔力が薄い緑色になっている。少しずつ傷が塞がっていき、しまいには見えなくなった。


「で、できたぁ」


 感動のあまりにメリッサはぐでんと脱力する。


「お疲れ様メリッサちゃん、レン君もよく頑張ったわ。メリッサちゃんは一段強くなったし、レン君は足腰が強化された。それに治癒魔法も覚えてこれで安心ね」


「お母さん、ありがとう」


「世話になった」


「うふふ、どういたしまして」


「それじゃあ、治癒魔法も覚えたし明日のお昼には出発するよ」


「そう、分かったわ。それじゃあ、寝ましょうか」


 そして翌日。


「持っていく食料はこれか、水が多いな」


「砂漠を越えていくからね、このくらいは必要なんだよ」


 どっさりと積まれた食料を魔法具にしまっていく。


「よし、これで終わりだな」


「うん、出発だね。一旦戻ろう」


 メリッサの家に戻ると玄関にメリーさんとレッサさんが立っていた。


「準備は終わった感じね」


「うん」


「どうする?休憩してから行く?」


「いや、このまま行くよ」


「そう、メリッサちゃんもレン君も頑張ってね」


「うん、頑張る。お父さん、お母さん、行ってきます」


「行ってくる」


「行ってらっしゃい」


 メリーさんがそう答えると、レッサさんが一歩前に出てメリッサの頭を撫でた。


「頑張ってこい」


「うん、頑張ってきます」


 嬉しそうなメリッサの顔。

 次にレッサさんはこっちを向いて手を差し出してきた。俺も手を出してレッサさんの手を強く握る。


「また来い、待ってる」


「必ず、戻ってくる」


 しばらく握っていたがどちらともなく離す。


「行くか、メリッサ」


「うん」


 そして、コキョ村を後にするのだった。

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