メリーの特訓
メリーさんの後を追って道場へと入る。
道場の壁には様々な武器がズラリと懸けられていて、静かに光っている。
「うふふ、来たわね。武器は壁のを使ってね、刃引きしてあるから気兼ねなく振れるでしょ?」
「刃引きされていても鉄の塊だろうに」
「当たらなければどうという事は無いのよ?」
「そうは言ってもだな……」
「レン、手加減はしなくていいよ。本気でやらないとやられるのはこっちだから」
「そうか」
いつも以上に真剣な顔のメリッサに、それほどの事なのだと感じた。
言われた通り、壁にあった鉄剣を手に取る。
「それじゃあ始めましょうか」
メリーさんの目がまた静かに開かれていく。それに伴い張り付くような冷たい空気が道場を満たしていく。
「うふふ、二人がかりでお好きなようにどうぞ」
メリーさんが声をかけるや否やメリッサが走り出す。
「うぁぁああああ!」
「うーん、メリッサちゃん、殺気の中だとぎこちなくなるのは相変わらずねぇ」
何時ものメリッサとは違うぎこちない突撃。気合いで自分自身を誤魔化そうとするような、そんな戦い方。
このままではいけないので、ブーメランを引き抜くとメリッサのいる辺りに向けて、広範囲に静電気程の電気が流れるように魔法を放つ。
「あひっ!?」
「あら」
細い雷がメリッサを目掛けて飛び、メリッサを中心に電気が同心円上に広がっていく。メリーさんは魔法を放った瞬間にバックステップで距離を取った。
「レンくんは魔法も使えるの?本当に面白そうな子ね♪」
出来る限りスピード重視で放ったと言うのに軽々と避けられたな。まぁ、距離を取れただけましか。
メリーさんが接近してくる前にメリッサの側へ駆け寄る。
「大丈夫か、メリッサ」
「大丈夫じゃないよ!バチって!バチってきたよ!?」
「よし、緊張は解れたな。俺が前に出る、メリッサは援護を」
「えっ、うん!」
盾を前に出しつつメリーさんとの距離を詰める。
「うふふ、仲良しね。妬いちゃいそう」
話してる途中だが構わず剣を垂直に降り下ろす。
メリーさんはそれを半身になって紙一重でかわした。
切り返して逆袈裟に振るが、下から掌を添えられて剣筋を逸らされる。
空いた腹に掌底が繰り出されるが、ギリギリ引き戻した盾で受けることができた。
しかし、1メートルほど後ろにずらされてしまった。
「レン!3秒!」
「了解」
「あらら?」
メリッサの合図がかかった。メリーさんは準備を始めたメリッサの妨害をしようとメリッサへ向けて走り出す。
俺は盾を構え直し、メリーさんの前に出て道を塞ぐ。
3秒
盾の裏に剣をしまい、ブーメランを引き抜いて氷の礫を放つ。
しかし、近距離で射出したそれも回避されてしまう。
2秒
次に氷の礫の中に風の魔素を圧縮したもの入れた魔法を放つ。
それは射出された後、メリーさんの目の前で内側から破裂して細かい氷の散弾となって降り注ぐ。
しかし、回避と逸らしの合わせで、その全てが処理されてしまう。
1秒
もう中断は出来ないと考えたのか、メリーさんは俺とメリッサが一直線になる位置に体を置き、詰めよってきた。
俺はブーメランをしまいつつ、剣を引き抜き、盾を顔の前に翳す。
0秒
「フラッシュ!」
俺の目の前で真っ白な光が起こる。
まさか俺も巻き込むような魔法だとは思って無かっただろう。あのタイミングでは防御は不可能だ。
俯いて動きを止めているメリーさんに剣を降り下ろす。
「うふふ、残念♪」
その声は耳元から聞こえた。
直後強い視界の揺れと鈍い衝撃。
体のバランス保っていられなくなり、そのまま意識はブラックアウトしていった。




