故郷コキョ村
メリッサ、花火を連れて森の中を歩いていく。
「もうそろそろ到着だよ」
「そうなのか?完全に森の中だが」
「大丈夫、後少しだよ」
しばらく歩いていると先を歩いていたメリッサが急に走り出した。
俺も追って走り出すがメリッサはすぐに走るのを止めてくるりと振り返る。
「なんだったん……」
「レン、ようこそコキョ村へ」
いつの間にか森は開けていて、頭上は澄んだ青の空が広がり、メリッサは太陽を背に微笑んでいた。
周囲を先を尖らせた丸太で作った柵で囲んであり、丸太のログハウスがちらほらと点在していた。
「コキョ……故郷?」
「うん?コキョ村だよ?」
「コキョか、なんか惜しいな」
「何が?」
「故郷がコキョなんだろ?惜しくないか?」
「別に?どうしたの?」
理由が分からないといった風にメリッサは首を傾げる。
「……なにかが噛み合ってない気がする」
「……そうだね」
二人してその場に立ち止まって考え込む。
すると、
「おーい、そこの二人!そんなとこでなにしてんだ?」
と村のほうから声がかかった。
「はっ!そうだよ!村の前なのに何やってんだろう私、レンほら早く行こうよ!」
「あ、あぁ」
メリッサに引っ張られて村の門らしき場所を潜ると、先ほど声をかけて来た男がそこにいた。
「あ、あれ?もしかしてメリッサちゃんか!?」
「うん。マーモさん、お久しぶりです」
「おぉ、綺麗になったなぁ。そんで、どうしてこっちに?」
「ちょっと世界を旅することになったから、その前に家に顔だして行こうかと思って」
「へぇ、大丈夫かい?最近はタリア神国が不穏な動きしてるとか旅人がよく口にしてるけど」
「タリア神国には寄らないから大丈夫だよ」
「てことは7大遺跡かい?」
「そうだよ、さすがマーモさんだね」
「伊達に村1の物知りとはいわれてねぇよ」
「って言っても旅人さんとのお酒の席での聞きかじりの知識でしょ」
「違いねぇ」
「「はははは」」
なんというか、自分の友人が自分の知らない人物と話しているとこう……何をしてればいいか分からなくなる。もし、今感情があったら更に気まずい思いまでしていたんだろうか。
「んでこっちの兄ちゃんは?」
急に来たな。
「あ、この人はレン。私の旅の仲間だよ」
「レンだ」
「レン、この人はマーモさん。コキョ村の自警団員」
「マーモだ、よろしく」
すっと差し出される手。一瞬呆けてしまったが俺もすぐさま手をとる。
「ふむ、悪くは無い……か?」
マーモはぐにぐにと俺の手を強く握ってくる。
「レンは私に土をつけたんだから当然だよ」
徐々に握る強さが強くなっていく。
「ほぉ、そりゃ凄いな。メリッサちゃんに勝つとはねぇ」
俺の手を握る力はぎっちぎちだ。
「そろそろ、いいか?」
「おぉ、すまねぇな。ちっと握りすぎたか」
「いや、問題は無いが」
「こら!レン!痛覚が無いんだからしっかりと確認しなきゃ駄目でしょ!」
「あぁ、そうだな」
すぐさま手に集中して、握ったり開いたりしてみる。
異常は……無し、稼働……良好、問題は無いな。
「よし、大丈夫だ」
「よかったぁ」
「すまなかった」
「大丈夫だったんだ、問題は無い」
「そうかい、ありがとな」
「それじゃあマーモさん、この辺で」
「おう、俺もそろそろ仕事に戻らなきゃなんねぇからな。後で家に顔だすぜ」
「じゃあ」
「またな」
マーモと別れて村の中心の方へ向かっていると、幾人かの人に声をかけられ、そのたびにメリッサは話し込むのだった。
▽ ▽ ▽
「これがメリッサの家か」
「そうだよ」
そこに建っていたのは普通のログハウス。ここに来るまでに何戸か見た物より少しだけ大きい程度の物。
それだけを見ると普通だろう。しかしその家の横には小さな体育館並みの道場が建っていた。
思い返すと修行の時に「家の道場のトレーニングメニュー」とか言っていたな。
ということは、俺が教えて貰ったのはメリッサの家の流派ということなんだろうか。
「レン?どうしたの?入るよ?」
「あ、あぁ」
メリッサが木の扉をノックする。
少し置いてがちゃりと扉が開くと、家の中からぬっと2メートル近い大男が顔を覗かせる。
「メリッサなのか?」
「ただいま、お父さん」
「お帰り、疲れたろう。上がりなさい」
メリッサのお父さんがこちらを見た。
「君は?」
「この人はレン、今の私の旅の仲間だよ」
「そうか、君も上がっていくといい」
「はい」
「ワウ」
「花火はそこで待っててね」
「ワウ」
メリッサ、メリッサの父の後に続いて家の中に入る。
「そこに座るといい。今お茶を入れよう」
「お構い無く」
メリッサのお父さんはそのがっしりした腕で繊細にお茶を注いでいく。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
湯呑みを置くと、俺の向かいに座るメリッサ父。何も言わずにこちらをじっと見つめてくる。
かといって俺にどうすることもできない。
しばらくの間俺達はじっと見つめ合っているのだった。




