疑問
「レン、はいどーぞ」
メリッサが『兎串屋』の串を差し出してくる。
「いや、もういいんだが」
「クゥーン」
花火が辛そうな声を挙げた。
それもこれも、この兎串屋もあわせてまわった屋台が6軒目なのである。もう腹一杯で串など入らないのだ。
「そう?本当に大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。腹一杯だ」
「遠慮してない?」
「あぁ」
「じゃあ私が。あむ」
メリッサは美味しそうに油の乗った串焼き肉をたいらげていく。
「ん、美味しかった。それでさ、レン」
「なんだ?」
「どうして食欲が戻っているの?遺跡で何があったの?」
ほんわかした雰囲気から一転、真剣な面持ちでメリッサは聞いてきた。
「……何故食欲が戻ったのかは俺もよく分かっていないんだ。
今朝メリッサを置いて遺跡に向かった後に、目的の場所で俺が封じられていたあの黒い直方体と同じ物を見つけた。それに触れた途端、以前のあの時のように口から淡々と言葉があふれでてきたんだ。確か中身はこう、『暴食と節制を確認、統合します。統合完了、暴食と節制、及びそれに付随する機能の復旧を確認しました』と」
「暴食と節制及びそれに付随する機能の復旧……?そう言ったんだね?」
「あぁ。もしかしたらそれこそが空腹感や満腹感が戻った原因なのかもしれない」
「統合、復旧……レンの空腹感とかは壊れていたわけじゃなく存在してなかったって事だよね。なら、痛覚なんかも存在して無いから感じないのかな……」
「そうかもしれないな」
「それで、その後は?」
「夢を見た」
「夢?」
「日本の頃の思い出、いつもと変わらない道を歩いてる夢だった。只、最後に光る魔方陣が現れて場面が切り替わり、遺跡の中のような場所が見えたところで夢が終わったんだ。
それが現実なのかは俺には分からない。夢とは記憶を整理するもの、日本とこっちの記憶が曖昧になった結果あの夢を見た可能性も捨てられない」
「でも、記憶は戻ったんだよね。忘れていた日本の時の事を思い出したんだから」
「あぁ」
「じゃあ、あの黒い直方体にはやっぱり何かがあるんだね!あれを探していけばレンは元に戻れるんだ!」
「そうだな」
「よし!そうなれば善は急げだよ!次の遺跡に向けて準備だよ!」
「次か、次はどこなんだ?」
「ここから一番近いのは、第三の遺跡サーダ遺跡だね。この世界の南にあるエルフの大森林の遺跡だよ」
「エルフの大森林か、ここからどう行くんだ?」
「この町からは東南東に一週間ほど行ったところにあるんだけど、エルフの大森林との間に大きな砂漠地帯が在ってね、オアシスの町を中継しなきゃいけないからまずは東に行くよ」
「そうか」
「あ、でもその前に少し寄り道してもいいかな?砂漠地帯までの道の途中に私の故郷の村があるの、世界を回る旅になるから挨拶をしていきたいんだけど、いいかな?」
「もちろんだ」
「よし、それじゃあ私はお土産とか旅の準備してくるから、レンは宿をチェックアウトしてきて。町の東の門で合流しよう」
「分かった」
「じゃ!」
そういうとメリッサは勢いよく走っていった。
「さて、俺達も行くか。行くぞ、花火」
「ワウ」
▽ ▽ ▽
「ということでチェックアウトを頼む」
まとめた荷物を担ぎ、カウンターの少女へと話しかける。
「そうですか、寂しくなりますね。えっと、レンさん方は一週間の予定でお支払い頂いて四泊なさりましたので、三泊分払い戻させていただきます」
少女はカウンターの裏から袋を取りだしその中から銅貨をいくらか取りだしてこちらへ渡す。
「確かに。それじゃあ」
「はい、よい旅を。花火君もお元気で」
「ワウ!」
▽ ▽ ▽
「あっ、レーン!」
花火とともに東の門で待っていると、メリッサが手を振りながら駆けてきた。
「メリッサ、準備はもういいのか?」
「うん、大丈夫。武具屋のおやじさんにも挨拶してきたし、お土産も買えたよ」
「そうか、なら行くか」
「うん、行こう」
「ワウ!」
東の門の通用口を押し開ける。門は毎日使っている為か、ギィーと音をたてながらも軽快に開いていく。
「そういえば、アリア·ベルには挨拶をしなかったな。宿でも姿を見かけなかったしな」
「お昼だからね、みんな出かけてるんだよ。まぁ、縁があればまた会えるんじゃないかな」
「そうか、そうだな。また会えるかもな」
「ワウ」
「そうだな、お前もいるしな」
「花火を撫でるために追ってくるかもね」
「「ははは」」
さて、次の遺跡への一歩を踏み出そうか。
〆方が上手くいかなかったのでもしかしたら書き直すかもしれません




