vsフロアマスター
本年もよろしくお願いします
今年も感想、誤字脱字の訂正など、楽しみにお待ちしております
「今日のも外れか」
壁に向かってそう呟く。
「まぁ、明日の場所が当たりっていう可能性が高くなったってことでいいんじゃないかな」
「残っている場所は6階か……」
「そうだけど、どうしたの?」
「ここは、5階だよな」
「そうだね」
「たいして時間も経っていない。帰るのは転移陣ですぐ帰れる。なぁメリッサ、フロアマスターを倒して六階の場所も調べてみないか?」
「駄目だよ、そんな危ないことしないで、今日は帰って休もう?そして明日転移陣使って六階の場所を調べればいいんだよ」
「そうだな……確かに安全を期すにはそうするべきだな……帰るか。六階へは転移陣を使えばいい……あっ」
「えっ?なに、レン」
「転移陣というのは行ったことの無い階には跳べないんだったよな」
「そうだけど」
「ここはセカンダ遺跡だ、メリッサ。君はこの遺跡で六階まで来たことがあるのか?もしメリッサが到達済みで跳べるんだとしても、俺は六階まで行ったことが無いから跳べないんじゃ無いのか?」
「……あっ」
「その反応、ということは……」
「完全に忘れていたよ……あまりにセカンダ遺跡がファスタ遺跡とそっくりだったから、転移陣が使えないなんて考えてもみなかったよ……」
「明日、六階に行くとしても、またこの五階まで降りてきてフロアマスターと戦わなければならない。なら今日やってもいいんじゃないか?」
「……うん、そうだね」
「花火、お前は大丈夫か?」
「ワウ!」
「よし、行こうか」
▽ ▽ ▽
重々しい空気を発した両開きの扉の前、そこで休憩と装備の確認を行う。
「五階のフロアマスターはファスタ遺跡だと通常より大きいポイズンスネークだったよ、こっちも多分そんな感じのモンスターがでると思う」
「強かったか?」
「強かったね、でも大丈夫。私一人でも突破できたんだよ?私とレンなら大丈夫だって」
「ワウ」
不機嫌そうな花火の鳴き声。
「ごめんごめん、花火もいるもんね」
「ワウ!」
「……よし、いくか」
「うん」
「ワウ」
重い扉を押し開いていく。
ガリガリと削れるような音とともに、扉は開いていく。
部屋の奥で丸まっていた竜が目を開く。のそり、と体を起き上がらせると、自らの眠りを妨げた俺達に向かって、
「ガァアアアアアア!!」
と割れんばかりの咆哮を放った。
この一声に怯まない者はそういない、いても脅威で動きが少し鈍くなる。初めての場合は。
「こっちはレッドドラグーンなんだね」
「スネーク種であれば楽できたんだがな」
「くぅ」
まぁ、花火以外は初めてじゃないんだが。
「さて、試し撃ちだ。メリッサ、十秒後後にフラッシュ」
「分かった!」
腰にぶら下げていた六角のアレを引き抜き魔力を引き出し魔法を唱える。
「氷縛」
六角のアレから出た氷が床を走り、レッドドラグーンの四肢を飲み込んで固まりその動きを妨げる。
「この手に閃光を!光輝け私の魔力!フラッシュ!」
動けなくなったレッドドラグーンの顔の前で閃光が瞬く。
「グラァアアアアア!」
目を焼かれたレッドドラグーンが暴れようともがくが、氷で固まった脚は動かない。
「花火、腹。メリッサ、頭。俺は脚を狙う」
「ワウ!」
「了解!」
花火は素早くドラグーンに近づくと、四つん這いで固められたドラグーンの腹に滑り込み、爪で引き裂いて傷をあたえた。
メリッサは頭を振って暴れているドラグーンの頭を目一杯蹴り飛ばす。脳を揺らされたドラグーンは一時的に意識を失い、全身の力を無くす。
俺は腰にぶら下げていた剣を引き抜くと、ドラグーンの左の前足に剣を振っていく。
がつん、がつんと鱗にひびが入っていく。
腹の方からは花火が流した血が溜まり始めている。
メリッサの打撃は鱗の上からでも尋常じゃないダメージをあたえていく。
ついに鱗を断ち割り、ドラグーンの身に剣を突き立てる。血が吹き出して剣と俺の手を真っ赤に染める。
痛みに目が覚めたのか、ドラグーンが体をよじり始める。
「凄いよレン!このまま押しきれるんじゃない!?」
「ワウ!」
その時、みしっ、と微かな音がした。
その音は徐々にパキパキという音に変わっていく。
これは……
咄嗟にバックステップで距離をとる。
「メリッサ、花火、下がれっ」
「え?」
「ワウ?」
バキンとひときわ大きな音がして、レッドドラグーンの動きを止めていた氷が砕けていく。
「きゃっ」
「ワウッ!?」
勢いをつけてレッドドラグーンが一回転し、長い尾が花火、メリッサを弾き飛ばす。
「ガァアアアアアア!!」
怒りに満ちた咆哮。その目は、弾き飛ばされて動けないメリッサに向けられている。
レッドドラグーンは大きく息を吸い込みだす。それはドラグーン種に共通するブレスの予備動作。
俺はブーメランを引き抜きつつ、メリッサの前へ走る。
「間に合えっ、水壁っ」
豪、と迸った炎がメリッサへ向かう途中に現れた水の壁で遮られ、もうもうと湯気をたてる。
「間に合ったが……やはり一本分では持たないよな」
水の壁はその体積をどんどんと減らしていく。対する炎は、ドラグーンによりだし続けられている。
六角のアレの魔力を引き出し水の壁を補強する。
「おい、メリッサ。動けるか?」
壁際まで弾かれていたメリッサへ声をかけるが返事は返って来ない。
気絶しているのか?だとしたら頭を打った可能性もあるな。その場合一刻も早く治療しなければならない。メリッサだけではなく、花火も起きて来ない。
これは直ぐ戦闘を終わらせなければ。悠長にブレスを防いでいる暇など無い。
俺は、レッドドラグーンに向けて一直線に走り出した。




