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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
第二遺跡セカンダ
32/106

魔力

 〈side:メリッサ〉


「今晩は、メリッサ。いや、初めましてと言うべきなのかな?」


「私の名前を知っているの?」


「そりゃあ勿論、今まで一緒に旅して来たからね」


 レンの姿をした誰かは飄々と答える。


「貴方は、レンなの?それとも別の誰かなの?」


「うーん、そうとも言えるし、そうじゃないとも言えるし……」


「どういうこと?」


「僕は僕であり、彼は彼であるんだけれど、僕は彼の一部であり彼も僕の核であるんだ。まぁ、ここら辺は理解出来なくて当然かな?なんたって僕自身も詳しいところは良く分かって無いんだから」


「何を……」


「最後に僕が一つだけ言えることは、今の彼は本当の彼ではないということだよ。本当の彼はもっと普通の人間さ。それは旅を進めていけばわかるはず。メリッサ、彼の欠片を集めるんだ」


「欠片?」


「そう、欠片。おっと、もう限界かな?それじゃあメリッサ、お休みー」


「え!?ちょっと!?」


『誰か』はそう言うとフラフラとベッドに近づき、そのままボフンと倒れこんだ。


「大丈夫!?」


 レンの顔を覗きこむ。

 そこには、静かな寝息をたてるレンの寝顔だけがあった。


 ▽ ▽ ▽


 〈side:練〉


 朝起きるとメリッサが少し眠そうな顔でぼーっと呆けていた。


「どうした、メリッサ」


「あ、あーレン?おはよう。ちょっと寝付けなかっただけ、大丈夫だよ」


「本当か?無理されても困る、遺跡の探索は延ばすか?」


「大丈夫、これくらいの不調は誤差の範囲内だよ」


 力強く断言するメリッサ。


「ならいいんだが」


「……ねぇレン、昨夜の事は覚えてる?」


「昨夜?俺が寝た後の事か?」


「うん」


「いや、全く分からないが何かあったのか?」


「え!?いやーハハハ。えーっと、昨日寝てたらベッドから落ちちゃって、恥ずかしい所見られて無かったかなーと思って」


「そうか、それなら大丈夫だ、見てないぞ」


「そう!それならいいんだ!ははは……」


「?」


 何かメリッサの笑いが歪な感じがした。


「本当に大丈夫か?」


「だ、大丈夫!それよりも早く遺跡に行こう!着替えるから、ほら出てった出てった」


「あぁ」


 メリッサに部屋から追い出された。まぁ、こっちの準備は終わっていたので問題は無いが。


「そうだ、花火を呼んでこないとな」


 ということで中庭に向かう。

 そこでは、朝早くからアリア·ベルに抱きつかれている花火の姿があった。


「なんというか、三回目なのに見慣れてしまった自分が居るな。花火、来い」


 それに気づいたのか、花火は前回のようにベルの腕からすり抜けてこっちへ来ようとする。


「モフモフ!」

「ワウ!?」


 一声を発しつつ、ベルは横とびで花火に飛び付き抱きしめ直す。

 花火は首を引き抜いて拘束を解き、後ろに跳んで距離をとった。


「花火くん、あとちょっとだけ、ね?ね?」


「ワウッ!」


 手をわきわきさせているベルと、花火が向かい合って牽制している。

 なんだこれ。


 花火が大きく右に回り込むように走る、ベルもその進行を塞ぐように走り出す。


「はっ!」


 ベルが飛びかかる。その瞬間、花火は鋭く切り返してベルを綺麗に回避する。


「ぶへっ!うー」


 避けられたベルはヘッドスライディング。


「ワウ!」


 捕まらずに逃げられた花火は嬉しそうに尻尾をフリフリする。

 結局これはなんだったのだろう。


 そう考えていると花火が俺の手に顔を擦り寄せてきた。


「ハム」


 というか甘噛みされた。


「どうした花火……ん?」


 先程の小さなバトルを見るついでにブーメランに魔力を溜めていたのだが、花火はそのブーメランを持つ手に噛み付いてきた。すると、ブーメランに流していた魔力の一部が花火に流れていくではないか。


「お前、吸っているのか?」


 花火は尻尾をパタパタと振ることで返事をする。


 しばらく吸われていると花火の方から甘噛みを止めてその場に座った。


「レンー準備終わったよー、って何この状況」


「抱きつこうと飛び込み、綺麗に避けられてヘッドスライディングしてこの状況だ」


「なんだろう、すっごく情景が簡単に浮かんでくる」


「それは置いておいて、メリッサ。テイムモンスターが魔力を吸うって事あるか?」


「魔力を吸う?ごめん分からない、そもそもテイムモンスター自体事例が少ないから」


「そうか……」


「花火が魔力を吸ったの?あ、そうだほら花火、朝御飯だよー」


 メリッサが干し肉を花火の顔の前に差し出す。

 しかし、花火はそっぽを向いて食べようとはしない。


「あれ?いつもなら勢いよくかぶり付くのに」


「まさか、さっき魔力を吸ったからか?」


「そんな、まさか」


「しかし、人間もエネルギーを魔素にして蓄えているんだろ?なら魔力自体を吸っても食事になるんじゃ無いのか?」


「普通ならあり得ない……んだけど、それは人間としての常識で、モンスターは分からないから本当にそうかも知れない」


「そういえば、遺跡のモンスター達はどこで食事をとっているんだ?」


「え?……えー、あー。分かんない」


「あの遺跡の中には食物連鎖の最底辺となる植物が存在しない。ということは食物連鎖で生活しているわけではない。それなのにあんな巨体を維持できる。どういうことだ?」


「それこそ、魔力を食べているとしないと成り立たない……」


「ということはやはり、モンスターは魔素そのものを取り込んでエネルギーに変える事が出来るんだ」


「つまり花火の食費がかからない!?」


「そ……そうだな」


「与えちゃいけないものとかも気にしなくていいし、凄い発見じゃない!?これ」


 凄く反応に困る。


「それよりも、早く遺跡に行くか」


「あ、そうだね。ずっとここで喋っているわけにはいかないもんね」


「ということで、鍵を返してきてくれ」


「分かった」


 メリッサはフロントへ向かっていく。


「それにしても」


 モンスターが生きていける環境が整えられている遺跡とは一体何なんだ?

 そんな疑問が頭を突いたのだった。

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