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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
第二遺跡セカンダ
31/106

月明かりの下

「あんた……これをどこで手に入れた」


凄みを聞かせたおっさんが静かに尋ねてきた。


「これはフラットの町のある教会に奉納されていた物を神父から譲り受けたんだ」


「どんな神父だった?」


「色々と規格外だったな、このブーメランも要らないし邪魔だから持って行けと。あんなのが神父でいいのか?」


その言葉におっさんは眉をしかめ、


「くっ……ふはははは!」


盛大に笑い出した。


「成る程、信奉者が奉納した品を要らないから持って行けとはあの神父さんらしいな」


「そういうあんたは?」


「それの製作者だ」


おっさんが指した先には、花火の首に括りつけられているブーメラン。


「これを122本も作って教会に置いていった信奉者はあんただったのか」


それを聞いたおっさんの顔が驚きの表情になる。


「ほう、そんなことも知っているとは。じゃああんた、今そのブーメラン、何本持ってるんだい?」


「121本だ。一つは噛み砕かれた」


驚いていた顔が更に驚きに満たされる。


「こりゃあ驚いた、あれを全部持ってきたってのかい」


「あぁ、ここにある」


「は?」


「今ここに121本揃っている」


「兄ちゃん、からかってんのか?」


「いや違う、カウンターを借りるぞ?」


「何を」


カウンターの上に巾着袋から取り出したブーメランを次々と置いていく。


「これは……兄ちゃん空間魔法の使い手か何かか?」


「そんなところだ」


「そんなところってなぁ、ん?」


何かに気づいたようにおっさんはカウンターに並べられたブーメランの一つを手にとった。


「こいつ、雰囲気が違うな……他にも何本か感じが違うやつがある。だが偽物という訳ではなさそうなんだよなぁ、どういうことだ?」


「それは、魔素入りのブーメランだな」


「魔素?あの魔素かい」


「そうだ」


「なんで魔素が……どんな使い方をすればこんな風になるんだ?」


「なにって、ブーメランの木材部分に魔素を溜め込んだだけだが」


「レン……それじゃ伝わらないよ……」


先程まで静観していたメリッサが諦めたように口を開いた。


「嬢ちゃんも何か知ってるのかい?」


「はい、レンはそのブーメランを魔法の杖代わりに使っているんです」


「杖だぁ?これをか?奇特な奴もいたもんだなぁ」


「町の中でも特に奥まった所に在るような教会に122枚もブーメランを奉納するような奴に言われたくはない」


「ぐっ、と、とにかく、杖に使うとなると魔力の流れが悪いんじゃねぇのか?なんでこんな物を杖として使ってんだ?」


「俺は時間辺りの魔力量が少なくてな、魔素を貯めるためのタンクが欲しかったんだ、だから効率は気にしていない」


「タンク……そんな役割もあんのか……」


「それより、花火の首輪を注文したいんだが……」


「あぁ、そうだったな。人用の既製品にちょちょいと改造を加えて……ざっと2日で出来ると思うぞ」


「それで頼む」


「あいよ、銅貨60枚、先払いだ」


「あぁ」


巾着か貨幣入れを取り出し、銅貨60枚を出す。


「60枚確かに、それじゃあ楽しみにしててくれ」


「楽しみにしよう」

「ワウ!」

「よろしくお願いします」


「おう!任せときな!」


威勢の良いおっさんの声を背中に受けつつ店を出る。


「次は情報収集か、どこに行くんだ?」


「情報収集といえばあそこしかないでしょ」


「あそこしか無い……か」


その言葉でひとつの単語が思い出された。


「そうか情報収集の定番といえば酒場だな」


「違うよ、ギルドだよ。レンどうしたの?」


「酒場で話を聞くんじゃ無いのか?」


「酔った人の誇大妄想入った話なんて玉石混淆すぎて逆に情報が掴みにくくなるだけだよ、それより確実な情報を提供してくれるギルドが一番なの」


「なるほど」


「ということで、レッツゴーだよ!」


「ワウ!」


▽ ▽ ▽


ギルドからの帰り道、疲れた顔したメリッサ、まだまだ元気な花火と歩く。


「まさか……ファスタ遺跡とほとんど一緒なんて……」


「見たことのある地図だから一瞬間違えられたのかと思ったな」


「まぁ、お陰で隠し通路の目星はついたんだけど」


「ファスタ遺跡と違う場所、だな」


「3ヶ所あったから3日もあれば回れるね」


「そうと決まれば今日はもう休むか」


「そうだね」


宿に着くとアリア・ベルが玄関の前に立っていた。


「あぁ~花火く~ん」


「ワウ!?」


ベルは勢い良く走り寄ると、がっしりと花火を抱きしめモフモフしはじめた。


「あ~モフモフ~」


「ここだと邪魔になる、中庭でやれ」


「指摘するとこ、そこ!?」


「分かりました!さぁ花火君!一緒に中庭に行きましょう!」


ベルは花火を抱えて宿の中に走っていった。


「さて、俺たちは明日の為に寝るとするか」


「あ……うん」


そして、フロントの少女から鍵を貰い、俺たちは眠りに着くのだった。


▽ ▽ ▽


〈side:メリッサ〉


(あぁ!もう!全然眠れないよ!)


ダブルベッドの半分、自分の背中側ではレンが眠っている。それだけで脳が覚醒している。


(それにしても、あんなにすぐ眠っちゃうとは……感情が無いせいなのかな)


そんな事を考えていると、突然レンが起き上がってベッドから降り、窓を開けて外を眺め始めた。


「星……月……綺麗だな……」


なにか様子がおかしい。


「僕、生まれてきて良かったな」


「貴方は、誰……?」


そう、尋ねてしまった。レンであるはずの人物がこちらに振りかえる。


「今晩は、メリッサ。いや、初めましてと言うべきなのかな?」



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