ブーメラン
暫くして、メリッサがなんとか動けるようになった。
「メリッサ大丈夫か?」
「だ、大丈夫……やる事は色々あるからね、急がないと全部やりきる前に日が暮れちゃ」
きゅう~。とメリッサのお腹から可愛らしい音がした。
「そうだな、昼飯も食わないといけないもんな」
「うぅ~!」
メリッサが口を膨らませて涙目で睨んできた。
「落ち着けメリッサ、まずは移動だ。文句は後で聞く」
「うぅ」
「よし、行くぞ……っとその前に花火を呼んでこないとな」
メリッサと一緒に中庭に向かう。そこでは花火が知らない女性にワシャワシャされていた。
その人は、20代位の若い女性で、白金に輝く髪を背中辺りまで伸ばし、透き通った肌をしていて、柔らかな笑顔を浮かべていた。
「あーモフモフだー癒されるー」
白髪の女は力強く花火を撫で続ける。花火は諦めたような顔をしつつもされるがままに撫でられている。
「花火、行くぞ」
花火は俺がかけた声に気づくと、女の手をすり抜けて俺の側へ戻ってきた。
「あぁーモフモフがぁー」
花火に逃げられた女はがっくりとうなだれ落ちると、俺の方へと迫ってくる。
「すみません飼い主さん達ですか!?その子はまたこの宿に戻ってきますよね!?」
「あぁ、そうだ。今日は日が暮れるまでには帰ってくる予定だが」
「そうですか!有り難うございます!……あ!名前を言い忘れていました、私アリア·ベルといいます!それでは、お待ちしておりますので!」
そう言うとアリアは走って行ってしまった。
「パワフルな人だったね」
「そうだったな」
「ワウ」
「さて、行くか」
フロントへ向かう。
「お出かけですか?」
「夕方には戻る。昼食をとりたいんだが、お薦めの店を教えてくれないか?」
「昼食ですか、それなら大通りの途中にある『兎串屋』お薦めですよ。屋台ですからそちらの狼さんを連れていても問題無いと思います」
「花火の事まで考えてくれて有り難う、昼飯はそこでとることにするよ」
「どういたしまして、では鍵をお預かりします」
「あぁ」
部屋の鍵を少女に返す。
「確かに。ではいってらっしゃいませ」
「いってくる」
少女に返事をして宿を出る。
大通りの兎串屋は沢山の人が並んでいた。どうやら店名の通り、兎の串焼きを出しているみたいだ。
「わぁーいい匂いがするよ!レン!」
「そうだな、とても美味しそうだ」
メリッサ、花火と並んで待つ。
「次のかたどうぞ!」
「えっと、レンは何本にする?」
「2本でいいな」
「わかった、じゃあ8本ください!」
「あいよ!」
「8本……俺が2本、花火も2本として4本食べる気なのか、結構量があるっていうのに」
「だ、だって美味しそうで……」
「お客さん、はい8本だよ」
「ありがとうございます!」
「歩きながら食うか」
「うん!」
返事をしつつもメリッサの口にはもうすでに兎の串焼きが入っていた。口いっぱいに兎肉をほおばるメリッサの顔は太陽の様な笑顔で、周囲を歩く男達どころか、女達までもが振り返る程だった。
それと共にフラットの町でも味わった、嫉妬の視線が突き刺さってくる。まぁ、慣れてしまってたいして気にならないのだが。というより殺気や呪詛が飛んでこないんだから問題は無いのだ。
串焼きを食べつつ大通りを行く。
「花火の首輪だがどこで買うのがいいだろうか」
「んー、ふひははいいんははいの」
「……すまなかった、食ってから頼む」
「んく、えーとね武具屋がいいと思うよ」
「武具屋?」
「革の防具とかも扱ってるだろうから、旅用に丁度良い首輪を作ってくれると思うよ」
「そうか、じゃあそうしよう」
「ついでにレンの武器防具でも新調する?」
「よさげなのがあればな」
全部食べ終わった俺達は近くにあった武具屋に入る。
「らっしゃい」
厳ついおっさんがカウンターに座って肘をついている。
「この狼の首輪を探しているんだが」
「ほぉ、テイムモンスターか。ん?これは、このブーメランは……あんたなぜこれを持っている」
こちらを見るおっさんの顔が急に険しくなった。
「あんた……」
空気が張り詰めていくのがわかるようだった。




