遺跡をゆく
扉を開けて出ると横幅3メートル、高さ5メートルで一面レンガの様な形をした暗い青の石材で組まれた一本道が続いていた。
しばらく歩くと天井に穴が見えた。
「あそこから落ちてきたんだ、私」
「そして一本道に沿って歩いてきた結果、俺のところまで来たと」
「まぁ君を助けられたんだからよかったんだよ、きっと」
「まだ助かったとも言えないだろ」
「それはそうだけど」
そういったやりとりを交わしつつ道を曲がると、階段が見えた。
階段の下までやって来ると、気配が変わったメリッサは少し待つように言うと、階段の上へ一人で上がっていった。
▽ ▽ ▽
「レン、大丈夫そうだよ、おいで」
驚いた。見ていた筈の場所にメリッサが立っていて、手招きしている。
「隠密というのは凄いな、見ていた筈なのに気づかなかった」
「ありがと、まぁこれがないとろくに探索もできないからね」
階段を昇りきる。左が行き止まりのT字路へと出た。そして自分たちのいる通路をふさいでいて、L字の形で通路を作っていたであろう壁が粉々に散らばっていた。
「メリッサ、これは君が壊したのか?」
「これ?あぁ、これはハリボテだよ」
言われて、破片の一つを持ってみる。異常に軽い。少なくとも石材ではない。
「壁のあっちがわには、かなり高度な幻覚魔法の魔方陣が組んであったみたいで、私も事前情報なしであっちから見たら、気づかなかったはずだよ。こんな仕掛け今まで無かったんだけどなぁ」
そう漏らしつつ、メリッサは進む。
次の層へ上がる階段で上に上がるまでにアナコンダの二倍以上ある蛇3匹と2頭のドラゴンをやりすごす。
魔物達を見て、この世界が地球ではないと、確信を深める。だが、不思議と混乱はしていなかった。
その日は安全地帯と呼ばれる小部屋で休む事になった。
安全地帯の中央には、魔物避けの効力を持った篝火が焚いてあるらしい。涼しげな青い炎が小部屋を照らす。
「安全地帯というわりに人がいないな」
「そもそも、迷宮探索は日帰りが主流だからね、ここで泊まる人の方が少ないよ、年に十人位じゃないかな?しかも、基本はここより更に下の層で泊まってることが多いし。食料はもしもの時用に3日分くらい持って降りるのが常識だけど」
「そうか、なら主力が起きている必要はないな、メリッサ寝ていいぞ」
「え?なんで?君が寝るべきだよ、こういうの慣れてないんでしょ」
怠惰100にセットとイメージする。また、やる気が抜ける感じ。
「怠惰を100にした。これなら、寝なくても平気だ。それに俺はあの黒い金属塊の中で寝てたからな今は眠くないんだ」
何か反論したげなメリッサだが、俺がこの状況で一番確実な生存方法を選んでいると分かっているからだろう、なにも言うこと無くこちらを見る。
「他の人達に襲われなくても、君に襲われる可能性がある」
苦し紛れにメリッサはそう言った。
「襲うなら、命の危険が無くなってから充分襲うさ」
すぐさま返す。
顔を赤らめつつ頬を膨らませたメリッサは毛皮の毛布を被ると、こちらに背を向けてすやすやと眠りだした。
次の日、更に次の層へ上がる。あまりに順調で俺は油断していたのかもしれない。
その次の層へ続く階段の前の広場にそれは鎮座していたのだった。