到着
遅れました、すみません。それもこれも全ては○ケモンのせいなんや。
メリッサに顎を蹴り抜かれた盗賊が地面に倒れ伏す。
あれは顎の骨が砕けたかもしれないな。まぁ自業自得だろうが。
「それにしてもよく盗賊が来るなんて分かったなメリッサ」
「んー、なんて言うんだろうね、視線が来るとチクチク刺さる気がするんだよ。遺跡のモンスター達でも感じるあの感じ、言葉にするなら害意ってとこかな」
「害意か……今回のは邪な気だと思うが」
「それよりもレン、早く盗賊達を縛っていかないと、目を覚まされたら大変だよ!」
「そうだな、いくぞ花火。盗賊の位置を教えてくれ」
「ワウ!」
花火が次々と盗賊が倒れている場所を見つけてくれる。そのお陰で簡単に全員を縛り上げることが出来た。
ついでに木に括り着けて動けないようにしておく。
「よし、この後はどうするんだメリッサ」
「盗賊を捕まえたら、魔法を使えないように目隠しするか目を潰すんだよ」
「成る程。魔法は術者が念じれば発動する。魔法を使えなくさせるには魔力を使い切らせるか、本人を殺すしかない。その為生け捕りの場合は狙いを着けさせない為にも目をかくさなくてはいけないのか」
「そうだよ、ほら早く」
俺達は盗賊一人一人の目を布切れで覆っていった。
「よし、後は町に行ってここを報告すればおしまいだよ」
「メリッサ、町までは後どれくらいだ?」
「何も無ければ半日弱位だよ」
「半日弱か。よし、朝飯を食ってから行くか」
「ワウ!」
「本当に何も無ければいいんだけどね……」
▽ ▽ ▽
半日後、俺達は新しい町の門の前に立っていた。
「本当に何も無かったね……」
「平和そのものだったな」
「まさか森のモンスターがあんなに直ぐ逃げていくなんて、遺跡じゃ考えられないことなのに」
「ワウ?」
なんで?普通逃げないの?というようなポカンとした顔をして花火が首を傾げる。
「遺跡では普通、見つかったら襲いかかってくるもんな」
「ワウ」
そうなんだ、なんかおかしいねとでも言いたいかのように花火は鳴いた。それと同時に、
「すみませ~ん、ギルドカードの確認が終わりました。レンさん、メリッサさん、どうぞお通りください」
と俺達に声がかかる。この町の門兵である。
「それとレンさん、このフォレストウルフにテイムモンスターだと分かるような首輪か何かを着けてください。多分無いとは思いますけど、何も着けていない状態で他の冒険者さんにテイムモンスターを殺されてしまっても正当防衛が成立してしまいますから」
「分かった、ありがとう」
言われた通り、何か目印になりそうな物を巾着から探す。しかし、使えそうな物はロープ、空のブーメラン、布切れぐらいしか無かった。
「んー、とりあえずはこうだな」
ロープをブーメランに巻き付けて落ちないように固定し、そのロープをフォレストウルフの首にまわす。即席の首輪(ブーメランのアクセサリー付き)である。
「は、はは。こんなところまでブーメランかぁ」
メリッサがひきつった笑いをあげる。
「仮だ、仮。町に入ったら良い首輪を探すさ」
「それよりもまずは宿探しなんだけどね」
「それでしたら良いところをお教えしますよ?」
「本当!?是非お願いします!」
ひきつった笑いから一転メリッサの満面の笑顔攻撃(本人に自覚は無し)が炸裂する。
「はっ!はい!それではお教えします!ここから一番近いのが……」
それにやられた門兵が張り切ってメリッサ宿の情報を教え始める。メリッサと特訓していた3ヶ月間よく見た光景である。
「……で総合的に見ますと、一番最初に言った宿が一番のお薦めですね」
「そうだね、本当に為になったよ!ありがとう!」
「い、いえ!どういたましまいして!」
最終的には興奮の余り口がもつれたか。まぁ、この町の人にはメリッサに対する耐性が無いだろうからな、こうなるのも当然か。
「レン、行こうか」
「ちょっと待て、何か忘れている気がするんだが」
「ワウ」
花火が盗賊は?と言ってるような気がした。
「そうだ、盗賊だ」
「あぁ、忘れていたね」
「盗賊!?メリッサさんを襲ったんですか!?許せない!どこに居るんですかそいつらは、さっさと行って捕まえてきます!」
「落ち着け、返り討ちにして道中の木に縛ってある」
「分かりました、ではさっそく行って参ります。お二人はぜひこの町をお楽しみください!」
門兵はそう言うと、詰所に駆け出して行った。
「さて、行くか」
門の脇の通用口から入り、お薦めされた宿へ向かう。
「なんというか、フラットの町にそっくりだな」
「同じ時代に発展していったからね、様式が一緒なんだよ」
「そうか」
立ち並ぶ店々も多少は違うが大体同じ、宿屋が遺跡じゃないほうの大通りに多いのも同じである。
「えっと、紹介された宿屋は……あそこの道を一本入った裏手だったね」
宿屋にたどり着く。外観はそこそこ年季の入ったような木造の家で、しかししっかり手入れされているのか痛みが少ない。
扉を押し開けて入ると、
「いらっしゃい」
と可愛らしい声がかけられた。カウンターに座って居たのは小さな女の子。
「ようこそ止まり木亭へ、宿泊ですか?」
「そうです。とりあえず一週間、部屋二つ有りますか?」
「生憎と部屋は二つ無いですねぇ、今はファイアフロッグの大量発生時期なので」
「あっ、そうか忘れてたよ。冒険者が集まってきてるんだ」
「ということは他も部屋が無いってことか?」
「部屋があるんだとすれば一番最底辺の宿位じゃないですかね」
「うーん、じゃあ一部屋借りるだけでいいか」
「まいど。あ、そちらの犬さんは中庭に寝て貰っていいですか?」
「大丈夫か?花火」
「ワウ!」
「大丈夫そうですね、空き部屋は203号室になります」
「レン、荷物をお願い。支払いは私がやっておくから」
「分かった」
荷物と鍵を預かり階段を上がっていく。
「203、203これか」
扉を開ける、少し狭いが綺麗な部屋だったのだが……
「ダブルベッドか、どうするか……」
「レンー、部屋の様子はどう?」
「綺麗だ、だがベッドがダブルだ」
「だ、ダブル!?えっと、どうしよう」
「ソファーがある、俺はこっちに寝るか?」
「それは悪いよ。うん。二人で寝よう!」
「いいのか?俺はいいんだが」
「レンだけに辛い真似はさせられないからね」
「そうか、ならそうさせてもらうが」
「それで決まりね!じゃあ、ベッドの件も済んだことだし。遺跡の情報収集と花火の首輪を探しに行こうか」
「無理しなくていいんだぞメリッサ、顔が真っ赤だ」
ぼふんとメリッサの顔がさらに赤くなり、メリッサは踞って動かなくなる。メリッサが動けるようになったのは、暫くしてからの事だった。




