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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
第二遺跡セカンダ
28/106

襲撃

 盗賊のお頭は、草葉の隙間からこっそりと目だけを出して様子を窺う。

 その視線の先には、木にもたれかかって静かに眠るメリッサの姿があった。


「中々の上玉じゃねぇか……おい、斥候はなんて言ってた」


「へい、一緒にいた男と狼の姿が無いといってやした」


「男と狼か、まぁいい女を人質にとればもし戻ってきたとしても問題は無くなるだろう、やるぞ。角笛を吹け」


「へい」


 角笛の音が静かな森に響きわたる。その音とともに茂みの至る所から男達が現れ、瞬く間にメリッサを包囲する。


「かかれ」


 頭がそう合図を出そうとした瞬間、包囲の中心に人間が一人、木の上から落ちてきたのだった。


 ▽ ▽ ▽


 着地の衝撃を完璧に逃がした後、辺りを見回す。不意を突かれた男達が立ち上がった姿のまま固まっていて、手に取るように配置が見える。

 こんなに綺麗に引っ掛かるとは、こいつら馬鹿なんだろうか。まぁいい、奴らが動き出す前に始めないとな。二本のブーメランを腰から引き抜く。


「舞え、双燕(そうえん)


 一本目のブーメランが円を描いて飛ぶと、その飛んだ軌跡に尾をひくように濃い霧が産み出されていく。

 一本目をキャッチするとともに、二本目をすぐさま投擲。二本目のブーメランは紫電を纏って濃霧のなかへ入っていく。


「なんだ!?鳥!?ぐわぁぁ!」

「鳥だ!鳥に気をつけ、がぁぁ!」


 ブーメランに溜められていた魔力は電気に変換され、その電気は大気の水を媒介として盗賊達の体を貫いていく。

 各所で声があがっていく様子を暫く見ていると、


「動け!霧から出ろ!」


 と声があがった。

 いい判断だが遅い。

 取り替えたブーメランの先を声のした方へ向け、ブーメランから雷を放つ。雷は霧によってほぼ減衰することなく飛び、指示を出した人物を打つ。囲んでいた賊の殆どは、二投目のブーメランに倒れ、動こうと音を出した賊も俺が撃ち抜いた。暫くしてブーメランの霧も晴れて森に静寂が戻った。


「よし、縛るか」


 巾着袋から取り出したロープで近くにいる山賊から縛り上げていく。


「それにしても、この森の中に倒れている山賊全部探しだして縛るのは大変だな。一ヶ所に集めて一網打尽のほうが簡単だったか?」


 そう呟きつつ、次の山賊に手を伸ばそうとした瞬間。


「動くな!」


 と野太い声があがった。

 振り返ると、メリッサの首にナイフを当て人質としている山賊がいた。


「手を上げろ!この女がどうなってもいいのか!」


「はぁ」


「なんだその返事は、こっちは殺してしまってもいいんだぞ!」


「いやな、こうも見事に引っ掛かるとはな。やれ」


「は?何を言って……ぐっ」


 盗賊の腹に刺さる肘鉄、勿論それをしたのはメリッサ。山賊が一瞬怯んだすきにメリッサは山賊の手の内からすり抜ける。それとともに木の上から花火が飛び降りてきてナイフを持った方の山賊の手に噛みつく。驚いた山賊はナイフを取り落し、それと同時にメリッサの回し蹴りが盗賊の顎を貫いたのだった。


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