花火加入
完結した後で気付いた。八尺玉ってどんな大きさだよ……兵器の類いだよそれ……。八号玉に直しておきます。
メリッサと二人で森を行く。
「静かだね」
「そうだな」
森は静まりかえっていて、微かな風音と土を踏む音が聞こえるのみ。
「ねぇレン、ちょっといいかな?」
「なんだ?」
「なんでブーメラン両手に持ってるの?」
「これか?魔力を溜めているんだ。やれる時にやっておかないと、いざというときに魔法が使えなくなるからな」
「なんか、すっごいシュールだよ」
「そうなのか」
しかし、これが一番効率よく魔力をチャージ出来るんだよな。
どうしようか悩んでいると、目の前の草むらがガサガサと揺れた。
俺もメリッサも動じることなく構える。
構え終わると同時に一匹の兎が飛び出してきた。
兎は俺とメリッサの間を一目散に駆け抜けていく。
「俺達に気づいても尚飛び出して来るってことは」
「次が来るって事だね」
もう一度草むらに視線を向けると、そこから狼が俺に向かって飛びかかってきた。
バキッ!
持っていたブーメランでぶっ叩く。
「武器ではあるんだけど、なんか納得がいかない使い方だね」
「そうか?使えるものは使うべきだぞ?」
「そうなんだけどさ」
「それよりもだ、これをどうする」
「小柄なフォレストウルフ、周囲に他の狼の気配無し。典型的な一匹狼だね。レンの好きにすればいいんじゃないかな」
「そう言われてもな。前の異常種の時は命のやり取りだったんで確実をきして頭を潰したんだが、こいつを一方的に殺すのはなぁ」
さっきの一撃で死んだんならまだしも、ここから命を奪うことはしたくない。
「うーん、じゃあ置いていく?」
「そうだな、行くか」
その場を離れようとしたとき、フォレストウルフが目を覚ました。
「あ、起きたみたい」
フォレストウルフがこちらを見る。フォレストウルフと目が合う。目が合った瞬間フォレストウルフが縮こまって尾を隠す。
「ぷふっ、レン完全に怯えられちゃってるね」
メリッサは縮こまっているフォレストウルフの頭に右手を伸ばす。その手が頭に触れそうになった時、急にフォレストウルフが顔を上げ、メリッサの手に噛みつこうとした。
ドスン!
メリッサの降り下ろした左手が、噛みつこうとしていた狼の鼻先を掠めて地面にめり込む。
「こらこら、おいたは駄目だよ狼さん」
狼はすぐさまメリッサからとびすさって俺の背後に隠れ、ガタガタと震え始める。
「あんだけ怯えていたのにこっちに来るのか」
「え~?私、拳は当ててないのに」
「当ててないから怖かったんだろうに」
俺が歩こうとすると、フォレストウルフがその後をびくびくしながら着いてくる。
「着いてきたところで何も無いぞ?」
まぁ、狼に言ったところで通じないのだが。
狼はそのまま体を擦り寄せてくる。
「うーん、これは……」
「どうしたメリッサ」
「もしかしてこの狼くんに主と認められたかもしれない」
「どういうことだ」
「時折あるんだよ、殺さずに、一方的に、差を付けて倒し、その後優しくするとモンスターに主と認められるの。世間ではテイムって言うらしいけど」
「主と認める、俺をか?」
「ワウッ!」
肯定するような狼の一鳴き。
「そうなのか?」
「ワウッ!」
また反応したように鳴く。もしかして……
「お手」
ぽんっ、と狼の手がのる。
「お座り」
すちゃっと狼が腰を下ろす。
「言葉が通じてるのか……」
「賢いんだね、この狼くん。ほーらお手~」
狼は俺の後ろに隠れる。
「うだー、嫌われてるー!」
「そりゃあな、さてどうする?こいつを飼うか、飼わないか」
「飼いたい、飼ってみたい!だって、テイムってあんまり起こらないんだよ?」
「そういうならそうするか。となると名前が要るな……」
「名前かぁ、名前、うーん」
「タマ……?」
メリッサが名前を連呼していると、不意にそんな名前が浮かび上がってきた。
「ワウッ!」
狼が気に入ったように鳴き声をあげる。
「タマが気に入ったの?」
「ワウ!」
「え……いや待て」
「よし!じゃあタマだ!君の名前はタマだよ!」
「ワウワウ!」
一人と一匹がヒートアップしていく。
「タマってのは俺の故郷で猫に良く付ける名前なんだが……」
俺の一言でさっきまで盛り上がっていた一人と一匹が急に静まりかえる。
「おいメリッサ、やっちゃったみたいな顔して固まってるんじゃない。そしてそっちの狼、主さまがくれた名前だからこれでもいいかもしれないという感じに首を傾げて考え込むんじゃない」
「でも……」
「ワウ……」
「息ぴったりだな。じゃなくて、もっといい名前を付けてやるから」
「ワウ!」
「ポチ……ハチ……コロ……」
「ハチとかタマとか、レンの国って犬や猫をよく飼ってるんだね」
「そうだな、八……玉……八号玉……花火?」
「ワウッ!」
「気に入ったのか?」
「ハナビでいいんだねレン!?何か他の生き物によく付ける名前じゃないよね!?」
「ああ、大丈夫だ」
「ハナビ!君の名はハナビだよ狼くん!」
「ワウワウ!」
一人と一匹が盛り上がっている。こうして、新たな仲間花火が加わるのだった。




