苦痛の記憶
ドラゴン達からなんとか逃げ出して息を整えつつ歩く。
「なぁ、メリッサ今はどこなんだ?」
「えっと、あそこっからこう曲がって走ってきたから……ここかな」
そう言ってメリッサは広げた地図の一点を指差す。
「下への階段と反対方向だな」
「そうだね」
「まぁ、連携の確認もしつつゆっくりいくか」
「了解、連携の確認だね」
▽ ▽ ▽
「で、どうしてこうなった」
「えへへ、やり過ぎちゃった」
通路にはドラゴンやらスネークやらが死屍累々の様相を呈していた。
一応目的の階までは来れた。しかし、それにかかった時間は予定していた時間の1.5倍程。
メリッサは連携の確認をしようと、近くにいたモンスターに次々挑みかかった。
俺達はその全てを打ち倒しつつここまでやってきため、メリッサとの連携はスムーズに行くようになったが、最後には血の匂いに寄せられてやってきたドラゴン三体と戦うことにまでなったのだった。
「なぁ、確認って言ったよな」
「え、えへへ、なんか息が合っていく感じが楽しくなっちゃって」
メリッサはそう言って純粋な笑顔を浮かべる、少し童顔なこともあってかその笑顔はとても眩しい。
「まぁ、いいか。とりあえずここには着いたしな」
前に顔を向けると目に入ってくる、下に続く小さな階段。
「不思議、やっぱりここから先はモンスターが居る感じがしない」
「そうなのか……何かあるのか?」
「何でなんだろうね」
不思議に思いつつ階段を降り、通路を渡ってあの部屋へ入る。
目に入るのはあの黒い直方体。
それ以外には特に目につくものはない。
「やっぱり大きいな」
黒い直方体は俺の二倍ほどの大きさで、小部屋の天井までそれは続いている。
「この黒い直方体の裏とかに何か隠されていたりしないかな?でもこれ事態には特に仕掛けは無さそうなんだよね、こっちの壁とかに仕掛けがあるのかなぁ……」
メリッサは黒い直方体がない壁を調べ始める。
黒い立方体。それに引かれるように俺は近づいていく。
伸ばした手が黒い直方体に触れる。
「これに俺は封印されていたのか」
俺がそう呟いた瞬間、突き刺すような痛みが頭を走る。
「が!?がぁああああああ!!」
「レン!?どうしたの!?レン!」
メリッサが駆け寄る姿もボヤけて見える。
久しぶりに感じる痛みは、容赦なく意識を奪おうとしてくる。
「レン!レ……!……!!」
やがてメリッサの声も聞こえなくなり、テレビの電気が落ちるように視界が真っ暗になった。
▽ ▽ ▽
「――――は成功か」
「はい、成功しました。しかし、――――は物凄いものです、もし反抗されたりしたら私達は……」
聞いたことのない声、いや聞いたことはあるのか?
分からない、うっすらとした微睡みの中で思い出をみるような不明瞭な記憶。
「構わない、こいつは反抗することはない」
「なぜ?」
「―――の秘術を使う、あの――――――達を用意しろ」
「ですが―――の秘術を用いてこの者の―を抜くといたしましても、その―を植え込んだ――――――が動き出すことになりますよ?」
「それなら各地の遺跡に一つづつ封印しておけばいい、ちょうど7つあるんだ7つに裂いて各地に置いておけば一つに成ることも無いだろう」
「分かりました、ではそのように致します」
「あぁ、頑張ってくれ」
「全ては―――様の為に」
「全ては―――様の為に」
その言葉とともに意識が浮かびあがっていった。
▽ ▽ ▽
「……てよ!!ねぇ起きてって!!レン!!」
「メ……リッサ」
「レン!?」
目を開けるとそこにあったのはメリッサの顔。
俺が返事したことに気づくと、メリッサは強く抱きしめてきた。
「レン、良かった」
心に染み込んでくるメリッサの声。
「メリッサ、大丈夫だ、大丈夫だから」
震えているメリッサを落ち着かせるように声をかける。
「ねぇレン、何があったの?」
「記憶を……見ていた気がする」
「記憶?」
「自分で封印していた記憶……あれは何時の記憶なんだ……」
「大丈夫なの?」
「体に問題はない。そうだメリッサ、たぶん俺に関わる何かはここにはない」
「それは、その記憶で分かったことなの?」
「あぁ、詳しいことは分からないが、俺に関係する物は一遺跡に一つしか存在しないようだ」
「一遺跡に一つ……つまり全ての遺跡を回らなきゃいけないってことだね」
「……そうだな」
「よし、そうと決まったら早くここから出て次の遺跡を目指さないと!世界各地かぁ、何かちょっと楽しみだなぁ」
「! メリッサ、君はなんでそこまでしてくれるんだ」
「なんでそこまでって?実は私も最近は良く分からないんだ」
「それならどうして俺についてきてくれる」
「初めは恩返しの気持ちが強かったんだけど、最近は何か楽しいというか……暖かいというか……落ち着くというか、そんな感じなんだ。だから一緒に居たいなって」
メリッサは少しだけ恥ずかしそうにしながらはにかむ。
「遺跡は世界各地にあるんだろ?世界を一周するほどの旅になるがいいのか?」
「大丈夫、君の感情を取り戻すって決めた時からある程度の覚悟はしてたから。世界を回るってのはちょっと想定してなかったけどね」
真剣なメリッサの目が俺の目をしっかりと捉えて離さない。
「はぁ……これで断ったら逆に罰を受けそうだ」
特にあのメリッサ親衛隊の奴らにはな。
火魔法を闇魔法で覆った魔力弾を持ってにっこり笑うクロニコが目に浮かぶ。
うん、かなり恐ろしい画になった。
「これからもよろしく頼む、メリッサ」
気を取り直してメリッサに右手を差し出す。
「うん、こちらこそよろしく、レン」
メリッサが俺の手をとってしっかりと握る。
フラットの町の狂信者はどうしようか、何故だかそんなことが頭を過ったのだった。




