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怠惰で勤勉な俺は旅に出る  作者: 渡鳥 陸
遺跡へ続く町フラット
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実力の証明

 体と魔法のトレーニングを繰り返し3ヶ月がたった。


 合間合間にギルドの仕事をこなし、ギルドのランクがブロンズランクに上がった。


 そして、あるトレーニングの日。


「レン、この3ヶ月で君は凄く強くなった。私が指導できることはほとんど無くなったよ」


 メリッサは、俺にそう告げた。


「そうか」


「だから、私は遺跡へ潜ろうと思う。君は今のままトレーニングを続けてればこの辺りの魔物で死ぬ事は無いと思うよ」


 それは、親衛隊との約束()あるため、容認できない。


「なぁ、メリッサ」


「何、レン」


「遺跡、俺も連れていってくれないか?」


「駄目」


「それは、俺がまだ弱いからか?」


「そうだね、君は遺跡に挑むには少し弱い」


「そうか、じゃあ力を見せればいいんだな?」


「どうする気?」


「実戦練習をしよう」


「まさか、私を倒してみせるって言う気?」


「そのまさかだよ」


「そう……いいよ、相手してあげる。でも、今日は手加減はしないからね」


「分かった。あぁ、そうだ全部(、、)使っていいんだよな?」


「ブーメランのこと?もちろんだよ」


「そうか」


 俺とメリッサは距離をとり、互いに構える。


「いくよ?」


「あぁ」


 一瞬でメリッサの姿が掻き消える。

 俺はラウンドシールドを左手前につき出す。

 その場所にメリッサが現れ、正拳突きを放ってくる。

 俺は盾を引き込み、メリッサの正拳を和らげつつ逸らそうとする。

 しかし、いつもよりメリッサの拳が強く速い。

 力を逸らしきれずにふき飛ばされる。

 俺は空中で体勢を立て直しつつブーメランを2つ投擲する。

 片方はメリッサ自身を狙い、もう片方はメリッサの接近を止める為に投げる。

 メリッサは近いて連撃を叩き込むことができず、ただ着地するのを見るのみ。


「どうしたの?それだけ?これ位ならやっぱり連れては行けないよ」


「まだまだだ」


「そうこなくっちゃ」


 メリッサがもう一度掻き消える。

 俺は手元に戻ってきたブーメランをもう一度投擲する。

 魔力を流して(、、、、、、)

 投げられたブーメランの軌道に水の壁が出来ていく。


「魔法!?でも遅い!」


 水の壁が出来きる前にメリッサは内間に入りこんできて正拳突き。


「読んで……いた!」


 俺はメリッサの腕を取ると勢いに任せてぶん投げる。

 メリッサを投げた方向は水の壁。

 その水壁を抜けてメリッサはびしょ濡れになる。


 その水壁はやがて、崩れていき、地面に水で描かれた楕円が現れる。


 俺はもう一度ブーメランを投擲する。

 今度は空気中に散らばる様に水が撒かれる。


「こんな目眩ましで!」


 メリッサは撒かれた水の中を駆け出す。


「これで……」


 俺は剣を引き抜き、足元の水溜まりへ刺す。


「終わりだ」


 剣に溜まって(、、、、)いた魔力が電気へと変換され、水を迸る。

 魔力によって操作された電流は地面へ逃げることなく水の中を、時には空中にある水をも経由してメリッサへと殺到する。


「くっ……」


 メリッサが膝を着く。


 俺は更に、ブーメランを3つ取りだし、魔力を流して水溜まりに落とす。

 ブーメランが落ちた水が凍りはじめ、メリッサの全身を氷漬けにする。


「どうだ、メリッサ。これでも足りないか?」


 一歩、一歩凍った地面を踏みしめ、氷を砕きつつ俺は近づく。

 メリッサの目の前に剣を突きつける。


 その瞬間メリッサの氷が砕け散る。それと同時に眩い光が迸る。


 その光が収まった時には、メリッサはもう俺の懐で正拳を振り抜いた形で、その拳は腹に当たることなく寸止めされていた。


「負け……か」


「はぁ、はぁ、3ヶ月トレーニングした程度の相手に、ま……負けてらんないよ」


「それでメリッサ、連れていってくれるのか?」


「それを今聞く!?結構今メンタルぼろぼろなんですけど!!」


「どうなんだ?」


「うぅ、君が駄目なら多分私も駄目だよ……」


「連れていってくれるんだな」


「はい!はい!!連れていきます!連れていきますよ!!」


「そうか、それは良かった」


「あぁ、もう。なんでそんなについて来たがるの!?」


「頼まれたから、それと俺自身も心配だったから」


「君だけには心配されたくなかった!」


「何故?」


「何故って、危なっかしいからに決まってるでしょ!」


「そうか?」


「そうか?じゃないでしょ!そもそもこのトレーニングの理由が君が死なない様にするためのトレーニングだったでしょ!」


「そうだったな」


「そして、あの魔法は何?」


「あの魔法か、あれはクロニコと言う人物に教わった」


「誰にじゃなくてどうやって……いや、クロニコさん!?あの!?」


「どのクロニコかは分からないが俺に教えてくれたのは黒づくめの人だったな」


「やっぱり『宵闇』のクロニコさん!?」


「有名人か?」


「このギルドで最強の魔法使いって言われている人だよ!」


「そうなのか」


「それで!?何を教わったの!?」


「魔力操作と魔法のイメージのトレーニング位しかやってないぞ?」


「それだけ?あのブーメランの魔法は?」


「あれは、魔力操作の応用で、ブーメランに溜めていた魔力を使って魔法を放っただけだ」


「溜める?ブーメランに?」


「あぁ、中位ほどの魔法使いなら知ってる事らしい。魔力の秒間の出力が弱くても、何かに溜めれば大きな魔力を扱える。強大な魔法を使う為には良く使う裏技的な物らしい」


「じゃあレンがずっと魔力を込め続ければ、ものすごい魔法が使えたり?」


「それは無理らしい、物も人と同じように最大魔素の量が決まっていて、それ以上溜めると壊れてしまうらしいんだ。それに、自分が出せる魔力量を越えると、操作が大変になる」


「そっか」


「それより、遺跡へ行く準備を始めなくては」


「そうだね、一緒に買いに行こうか……ごめんレン、この服乾かしてくれない?」


 こうして、遺跡へと連れていって貰える事となった俺。

 しかし、メリッサをびしょ濡れにした男として、町中から今まで以上に殺気の籠った視線を向けられる事となったのだった。

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