最終戦4
遠くの方で大きな火柱が上がった。
「あっちでも何かあったか、ぐだぐだじゃないか……」
本体の剣をいなしつつ、練華はそう呟いた。
「はぁっ!」
シャラが、本体へ跳び蹴りを放つ。それを本体は片手で受け止めた。
「まずっ!」
本体は、右手の剣を振りかぶる。
シャラの右足に食い込む指の力はまるで万力のようで、その場から逃げることが出来ない。
本体は、シャラの足を断ち切る為に剣を振り下ろした。
と、その腕が跳ね返るように上に弾きあげられる。
「レンの体にそういうことはもうさせないよ!」
メリッサの蹴りが本体の手首を打ったのだ。
次いで二発目の蹴りが本体の腹を打つ。
たまらずシャラを離した本体は、三人から距離を取った。
「黒髪の嬢ちゃん!状況は!?」
「迂闊に手を出した奴が何人か斬られた。攻撃しなければ、目標とした相手を殺らない限り次には行かないらしい」
「なるほど……物見兵!タリア神国の様子はどうなっている!?」
「距離をとったまま動きません!」
「よし、指揮官はどこだ!」
「ここにいます!」
「弓兵はタリア神国に向かって待機させておけ!魔法兵は一旦下げて待機!他の兵はあいつらが戦いやすいように広場から離れた所で待機だ!」
「分かりました!」
指揮が通るようになり、全体の混乱が収まっていく。その上、中央広場が広くなり戦いやすくなった。
「んで、そいつはどうする?被害も出ている、もう斬っていいか?」
「このまま気を引き続けて戦えば砦の外まで誘導できる気がします!少し待ってください!」
「わかった、外に出す方向で行くんだな。来るぞ!」
メリッサは、するりと本体の突きを紙一重で避けると、そのまま籠手で剣を弾きとばす。
「脅威度上方修正、優先対象を変更します」
「よし、そのまま私を狙って!」
特訓の成果か、メリッサは危うげなく本体の剣を捌いていく。
このままいければ本体を外まで誘導できる、そう皆が思った時。
「南東から何かが飛んできます!」
物見の一人がそう声をあげた。
「南東だと!?そんな山の方からいったい何が!」
「モンスターです!大きなクワガタ虫がこちらに向かってきます!」
「弓で射落とせ!」
「弓隊攻撃準備!放て!」
クワガタ虫のモンスターは無数に飛んでくる矢を機敏に避けると、刃物のように鋭い鋏で弓隊の五分の一の首を斬り飛ばしながら砦の内部に着地した。
「あれは!ブレードスタッグ!?何故ここに!エルフの国の遺跡にしか居ないはずじゃ!」
「構わん!通常部隊!囲んで叩け!」
待機していた部隊がブレードスタッグに向けて剣を振り下ろす、しかしその甲殻は固く、一切の剣を受け付けない。
そして返す鋏で数人が横一線に斬り飛ばされたのだった。