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風紀委員長な俺と可愛い生徒会副会長※男

2話目のあらすじ。

食パンをくわえて走りこんできたのは、来栖 姫冠……くるす ティアラ……という、1週間前に転校してきた2年生の女子生徒だった。

初対面だというのに、主人公を名前呼びし、先生をも名前呼び。唖然とする3人の中で、後輩一年生……土井 砂羽……のみ名字で呼び敵意を示す。

ぶつぶつと3人に聞こえないように呟く「無自覚ヒロインとか困っちゃうー」の言葉から、彼女は自分をヒロインだと思っている節があり……

※他の登場人物は気づいていません

「姫! 一緒にご飯食べよう」

「いや、俺と……」

「僕と約束したよねー」


 昼の時間に食堂に行けば、どこからともなく聞こえてくる騒がしい声。別に全員で食べればいいんじゃないかと、毎回思いつつスルーしている。



 あの、未知との遭遇からまだ二か月。……いや、「もう」なのか「まだ」なのかちょっと首を傾げてしまいそうだが多分「まだ」の方がしっくりくるような気がする。

 来栖 姫冠と名乗った女生徒は、遅刻してきたあの日でまだ一週間しかたってない二年の転校生だった。俺が知らなくて当然だった。まぁ全員覚えているわけではないが、なんとなくの範疇なら記憶されていると思う。 伊達に三年まで登校時に正門前に立っていない。



 実際、季節外れの転校生などはそう珍しくない。

 この高校自体、外部受験組と併設中学からの持ち上がり組(もちろん、勉学を含め一定の条件をクリアしなければいけないが)、そして俺を含めて数人いるスカウト組に分かれる。これは中学、もしくは他校在学中にどんな判断基準かわからないがこの高校からスカウトされて入学した生徒。


 うち高校は充実した施設や偏差値の高さだけではなく、大学への進学率(もちろんそこにはエスカレーター式に行ける併設大学も含む)、就職に有利とされるグループ企業の多さ、また奨学金募集の裾野の広さ。たくさんのメリットに加え、富裕層である有名企業の子息・息女も通っている手前、警備員が常駐していてとても治安もいい。人脈作りにも最高、そして能力のある者が多い。故に、入学を希望するものは多く、毎年凄い倍率が叩きだされる。

 小学校から大学院まで併設しているこのグループは力のある理事会が運営をしているが、それぞれの学校にある程度の自治権が認められていて、それを決議執行するのが生徒会。

 そういった特異性がある為、他と違って生徒会直属となる風紀委員の職務が煩雑になっていくわけだが。


 漫画のような設定なのだが、実際あるんだから驚きだ。


 俺は公立中学に通っていた頃に、スカウトされた口だ。

 曰く「ある一定の学力、そして風紀委員になる事を条件に、推薦入学を受けてみないか」と。提示された条件は奨学金も含むという事だったし、ほぼ自分に有利なものばかりだった。警戒して断ろうとすれば、高校の内情をある程度教えられ毅然とした風紀委員が必要だからと説得された。

 数日考えた上で話を受けて、ここに入学したわけだけれど。


 確かにこの職務を扱うにはある程度荒事が出来て周囲に認められるくらいの学力を身に着けていないと、組織に入るには舐められるな……と入学してから納得した。


 なまじ権力を持つ富裕層と一芸に秀でているスカウト組や一般的な生徒達が入り乱れているから、そのどの層からも舐められないような人間でなければ職務は遂行できない。

 手前味噌で申し訳ないが荒事に関しては護身術を含めて習得しているし、勉強は元々要領の良さで全国トップは無理にしても一割以内には入り続けていた。

 そんな俺ならば、遂行できると認められたのだろう。


 まぁ職務は多く面倒な事この上ないが、今後の人生を考えれば意味はある。

 俺の夢は、安定企業でぬっくぬくだ。グループ会社でもなんでもいいからとってくれるところに行って、趣味とのんびりで毎日を生きて行きたい。家には反対されているが、俺の人生は俺のものだ。実績積み上げて内申いいもの貰って、安定企業に就職する。目指すは九時五時残業なし!

 その為の布石ならば、頑張ろうではないか!



「やだー! 皆で食べようよ。仲間外れとか、私嫌だなっ」



 ふと耳に入り込んできた会話に、ぞぞっと背筋が震える。



 ……あぁ、いかん。話がそれた。

 そんな感じで、未知な女生徒は転校生だったわけなのだが。その転校生が有名になるのに、少しの時間もかからなかった。


 曰く「男にすり寄る」

 曰く「人の話を聞かない」

 曰く「行動が漫画」


 風紀委員の日々のチェック報告から抜粋すると、関わりたくない感が激しすぎる。……いや、行動が漫画ってなんだそれ。


 だというのに、たった一か月で三人の男が来栖に落ちた。落ちてはいけない人物が、彼女に落ちた。なぜだ……。




「……なぁ、清宮。毎回言うのもあれだけど、とめなくていいのかあれ」

 四人掛けの席で向かい合って座りながらうどんをすするちびっこ同級生が、ちらちらと騒ぎの中心に視線を向けながら俺を伺う。その言葉にながーい過去の振り返りを脳内上映していた俺は顔を上げてそちらを見たけれど、我関せずと再びかつ丼に箸を刺した。

「風紀の役目じゃない」

 風紀委員といえども、煩い=秩序を乱している→治めるのが俺の仕事! なんて職務を増やすような面倒くさい事はしない。したくもない。

 こちとらボランティアじゃないんだ。

 俺に断られても気になるのか、目の前のちびっこはちらちらと視線を向けている。

「そんなに気になるんだったら、お前が一言物申せばいいだろう。同じ生徒会なのだから」

 俺は食べ終わった丼を横に避けながらそう言うと、頬杖をついた。その途端、青くなったちびっこがぶんぶんと頭を横に振った。

「無理、俺には無理。怖い」

「俺も無理だよ」

「お前、格闘系スポーツいろいろやってるじゃないかっ」

「そこじゃない」


 全くもって、そこじゃない。

 確かに、数人の男なら相対しても負ける事はないだろう。けれど、俺の忌避したいのはそこじゃない。


「あいつらは特に怖くないが、来栖に関わりたくない。なんだろうな。天然なのか作ってるのか知らんが、脳味噌だけ赤ちゃん並みの上に都合のいい花畑に住んでいる様な高校生に相対する勇気はない」

「同感。赤ちゃん純粋だから、赤ちゃんに失礼だけどね」


 うん、と頷くちびっこの頭を撫でる。

「何すんだよっ」

「いや、お前まともだなーと思って」

 目の前では俺の手を逃れようとぎゃんぎゃん喚きながら頭を振るちびっこがいるが、癒されるだけで何とも思わん。ふわふわですねー、くせっけふわふわー。


「……委員長。副会長が可哀そうだからやめてあげてください、目立ってますよ……」

「ん?」


 横に気配を感じたと思ったら、土井だった。

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