表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/26

サポートキャラ、確認!

本日2話更新しています。


-皆様にご連絡-

今後の更新についてのお知らせです。

身内が入院することになりまして、今後書いている時間があまり取れないと思います。

現状では5月の更新はお休みを頂き、次回更新は6月以降とさせて頂きたいと思います。

もし書く時間が取れれば更新したいなーと思っていますが……。

どうぞよろしくお願いいたします。


また以上の理由から今回きりの良い所まで更新させて頂いた為、とても長くなっています。

申し訳ございません。

「皆川さん、こんにちは」


 購買でお昼ご飯を買って教室への帰り途中だった皆川は、後ろから掛けられた声に内心うんざりと溜息をついた。もちろん表情に出すなんてヘマはしないけれど。

「田所先輩、こんにちは」

 おかしくない程度の笑みを口角に浮かべ、皆川はその場で立ち止まり振り返る。

 すると案の定、今、名前を口にした男子学生がにこにこと笑ってこちらに近づいてきているところだった。

 田所雅臣、生徒会副会長。童顔キャラで温厚。……の、予定だった。

「今からお昼? 俺はこれからなんだけどねー」

 なんでもない様に世間話を口にした田所に視線を向けながら、内心はある程度冷静に……けれど半分以上はイラつきと不可解な闘争心が煽られていた。

「そう言えば、皆川さんは来栖さん達と一緒にご飯食べないの?」

 もうそろそろ暇を告げようとした皆川は、その心打ちを見透かしたような田所に思わず目を細めた。

 自分という人間は、事情を知っている人間からしたらこうもイライラする存在なんだな……と田所に自己投影をしつつ、小さくため息をつく。

 ここで自分を出すのは簡単だけど、それでもまだ私には役目が残ってる。


「だって、私が傍にいたら生徒会の方々に睨まれてしまいますよ。姫は皆の姫ですが、生徒会の方々にとってはそうではないでしょうから」

「話題が合わないとか? やっぱり色々違うと思うし」

話を上手く誘導される。やっぱりこの男は一筋縄ではいかない。

「……話題ですか? んー、どうでしょう。好みは人それぞれですからね」

 うふふ……と笑みを浮かべながら肩を竦めると、田所が思わずといった風体で吹き出す。取り繕う様に口元を押さえたけれど、その笑いは隠せていない。

「そ、そうだよね。好みは人それぞれだもんね。ぶふっ……いやいやごめん。うん、じゃ俺はこれで」

 肩を揺らしながら横をすり抜けて行った田所を、皆川は周囲に人がいないのをいい事に眉間に皺を寄せて睨みつける。



 ……年齢の事がばれてるような気がするけど、どーなのかしら。

 それにしてもカマの掛け方性格わるっ、全く可愛くない!


 

 田所が廊下を曲がるまで見ているのもしゃくだったので意地で視線を外すと、皆川は教室へと足を向けた。







「……面白い様に表情から内心駄々漏れ」


 二階の廊下の窓からこっそり二人のやり取りを見ていた今だけ仲良し現風紀委員長と次代風紀委員長&そのまた次代の風紀委員長達は、皆川が廊下から消えたのを見計らって俺の持っているスマートフォンから耳を離した。

 先程まで聞こえていた田所と皆川のやり取りだったが、今は通話を切ったようで何も聞こえない。真っ暗になった画面を確認してズボンのポケットにそれを押し込むと、階段から田所が姿を現した。

「やほー、どうだったー? 煽ってみたけどー」

 笑いが止まらないのか、ぐふぐふと肩を揺らしながら田所が傍に来る。

「面白かった」

 これに尽きる。もう一つ付け加えるなら、田所が黒かった。

 土井も桑島も、俺の言葉に頷く。

「これが、田所先輩が見せたかったものですか」

「うん、そ。なんかさ……」


 そこまで言って、田所は手近な教室のドアを開けた。そこに促されるまま、後ろに続く。ドアをぴしゃりと閉めて、田所が振り返った。


「今までってさ、得体が知れなかったから怖かったじゃない。でもさ、これ……誰かが仕組んでたらって考えたら……」

「仕組む?」

 思わず問い返せば、田所は気分を害するような雰囲気もなく頷いた。

「乙女ゲームじゃあるまいし……って、思ってる子、多いと思うんだよね」

「乙女ゲーム?」

 なにそれ。

 首を傾げた俺の横で、土井がうんうんと頭を縦に振った。

「私もそう思ってました! 二次元がリアルに飛び出してきたって」

 田所は、手帳に書いた図を俺に差し出した。

「清宮はこういうの興味ないだろうと思って、書いてきた。桑島君は……?」

「ギャルゲの男版って考えればいいんすかね」

「……うん、その顔でギャルゲとか聞きたくないかもね」


 顔面だけは真面目そうだからね。

 田所は苦笑しながら、ボールペンで開いているページを叩いた。


「これ。ヒロインと攻略対象、そして悪役がいてゲームが成り立つんだけど、実は一番重要なのはここ」

 ぽんっとペン先で示された場所には、サポートキャラと書いてある。これって……

「昨日お前が言ってた、キーパーソンのこと?」

「そ。ヒロインが対象者を攻略していくにあたって、情報を与えたり周囲の環境を整えたりして全面的にサポートを請け負うキャラ。ここがしっかりしてないと、対象者を攻略しようにも一から情報を集めて周囲も気を遣い尚且つ攻略も進めなきゃいけないという恐ろしいルートが待ってる」

「……お前が詳しい事に、今若干の戸惑いが」

 田所くんは、乙女ゲームをなさっているのかな?

「ためしに遊んだことはあるよ、傘下にゲーム会社あるし。まぁ、スマホのアプリだけど」


 ……要するに、仕事の一環という事か。さすが御曹司、高校生ですでにお仕事……。


「要するに、多分だけど」

「うん?」


 場を仕切り直すように田所が口を開く。


「俺の予想だと、この学校でリアル乙女ゲームが進行してる」


「……リアル乙女ゲーム?」


 思わず、三人の声がハモる。


「最初は、ただ来栖さんがちょっとお花畑に行っちゃってるだけかと思ってた。でも、違うよね」

 それに頷き、引き継ぐ様に口を開く。

「確かに……あんな状態でも嫌われない、そして情報操作が凄すぎるという点でさすがに素人とは思えなかった」

 だからこそ、恐怖を感じていたのだ。ただの女子高校生に、出来る芸当ではない。

「今までは来栖さんが上手くやってるか、周囲を丸めこんだんだろうなって思ってたの。でも、前回土井さんと食堂で詰め寄られた時に、サポートキャラの存在に気が付いた。それがさっきの皆川さん」


 さり気なく言葉を上手く操って、来栖を「無邪気」で「天然」で「素直」なキャラクターに変換していくその術は、賞賛すべき技術だと思う。

 まぁ、それでこっちは迷惑かけられてるんだからありがたくもなんともないけど。

 

 そう続けた後、田所は机に寄りかかった。


「調べたけど、皆川さんはこの高校に転校してきたわけじゃない。普通にスカウト組で入学し、そしてまったく接点がないはずの転校生である来栖さんを今サポートしてる。そして学校全体が情報統制を敷かれたような状態。その上、噂にでもなれば真っ先に是正を求めそうな生徒会役員の親たちがそれを放棄している」


 ……田所の考えを聞いているうち、背中がうすら寒くなってきた。

 それと同時に、今までのアレとかコレとか来栖に振り回されてきた過去が脳裏によみがえってきて、眉間に皺が寄る。

「田所先輩、……もしかして」

 土井がおずおずと口を開くと、田所は……正解……とでもいう様に頷いた。


「多分ね、学校ぐるみだと思う。あと対象生徒の保護者。まぁ、清宮はスカウト組だし木ノ本先生は教師だからそれはないとして。うーん、うちの親も関係ないとありがたいけどねぇ」 


「こっわ。だから嫌なんすよ、金持ち連中って」

 桑島が両腕をさすりながら震えるもんだから、思わず笑いが漏れる。

「お前も金持ち連中の一人だろ」

「そりゃ人それぞれですけどね、俺はそう言うのが嫌だからさっさと離れたいんだって。早く蒼ちゃんの部下にしてくれればいーのに」

「嫌なこった」

 土井が不思議そうな表情を浮かべているが、それはまた今度。話が混同しそうだから。

 事情を知っている田所も苦笑を浮かべながら、追求せずに話を変えた。


「しかも、ゲームが成功しようがすまいが結果は関係ない。それに対処する対象生徒の行動を観察してる……そんな感じじゃないかな。基本的に、うちの学校は生徒には不干渉。重大事件以外は本人達で解決しろっていうのが基本でしょ? だからそういうの、やりやすいんじゃないかなって思う」


 ……それって怖い話だよな。

 知らないうちに知らない思惑に巻き込まれてるとか、確かに閉鎖的なうちの学校なら遂行しやすいと思う。

 それに逆に考えれば富裕層は自分の子供の実力を計れるし、スカウト組は多額の奨学金や優遇措置を考えると害がなければ特に気にするものではないだろう。


 闇の組織みたいな構図が頭に浮かんで、げんなりと肩を落とす。

 やっぱり上手い話には裏があるわけだなぁ。なんか凄いむかついてきた。俺のここ数か月の面倒くささは、一体何だったんだ。


 田所は開いていた生徒手帳を内ポケットにしまうと、人差し指をぴっと立てた。


「という事で、そんな訳の分からないゲームに強制参加させられている俺達は、逆に言えばそれを壊すことも許容されてると思うわけ」

 

 どう?


 声に出すこともなく問いかけられた言葉に、当たり前だと目を細めた。


「内情理解してしまえば、怖くもなんともない。俺にとっては、不思議すぎる来栖が怖かっただけだしな」

「右に同じ」

「左に同じ」


「仲のいい風紀委員だよね、ホント。じゃ、もう一つ笑えるネタ提供するね」


 もう一つって、リアル乙女ゲームが笑えるネタになるのか。田所の度胸半端ない。

 そんなことを考えていた俺達に、田所は笑いながらこっそり囁いた。



「皆川さん、高校生じゃないよ多分。成人してる。サポートするために年齢偽って入学したんじゃないかな……学校ぐるみじゃないと、そんなことできないでしょ?」


 ……。



「はぁぁぁ?!」



 推定二十歳以上が入学式から女子高生やってるってこと……?!



「女子高生の制服着た成人女性? OL? なにそれエロゲのロマン」

「お前馬鹿だろ」


 桑島の脳天にげんこつが落ちるのは数秒後。

それでは皆様、次の更新にてお会いしてくださいお願いしますm--m←(笑

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ