表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/26

風紀委員会の先生、久しぶりにたくさんしゃべる。

あけましたねおめでとうございます!←おそっw

今年も宜しくお願い致しますm--m

「少しは落ち着いたか? 清宮」


 あの後、木ノ本先生に連れてこられたのは風紀委員室。流石に昼休憩時にここに来る生徒は少ない為、委員長室にはいかなかった。鍵は閉めたけど。

 深々と息を吐き出して、俺は椅子の背もたれに体重を乗せた。ぎしりと軋む音が、どうにもくたびれて聞こえるのは今の自分の状況がそうさせるのだろう。

「落ち着きました。すみません、手を煩わせることになって」

 他の生徒の模範にならなければならない風紀委員長、……いや、生徒会長だって議長だって会計だってそうなんだけど……が、いかに不名誉な噂を治めようとしたからって騒動の中心になってしまったら本末転倒もいい所だ。

 肩を落とした俺に苦笑しながら、傍で座って昼ご飯を食べている俺の楽しい仲間たちに視線を移した。


「それでお前達は、何をバクバク飯食ってんだ。もう少し労わってやれよー、仲間だろうよ」

 まったくだ。

 俺の楽しい仲間たちのはずの田所と土井は学食でテイクアウトの弁当を買ってきたらしく、ここに着くなり落ち込む俺をしり目に食事に勤しんでいる。

 あのさ、もう少しこう……俺を労わるとかない? ねぇねぇ。

 

 木ノ本先生の言葉にちらりと顔を上げた二人は、視線だけ見合わせるとよく分からない頷きを見せて食事へと戻った。意識が。

「お前らはもー。……まぁいいや、時間もなくなるし清宮も飯食え」

 呆れながらも二人の態度をスルーした木ノ本先生が、ビニール袋を俺に差し出した。中にはパンがいくつか入っていた。

「これ、木ノ本先生が……?」

 わざわざ買ってきてくれたの?

 木ノ本先生は苦笑しながら、顎で横を示した。


「……」


 二人が買ってきてくれたのはいいんだけど、感動とかありがたみとかなんかそこら辺の感情が出てこないんだけど俺。

 ……まぁ、いいか。


「ではありがたく、頂きます」

なんとはなしに三人に向かって言うと、ビニールに包まれたパンをばりっと開けてかぶりつく。成長期の食欲舐めんなよ、昼飯は楽園だ。


 何も言葉を発することなく昼ご飯を食べ続ける俺達を見ながら缶珈琲を一口呷った木ノ本先生は、ふぅ……と疲れたように溜息をつく。

「それにしても、あの子は強敵だなぁ」

 しみじみとしたその言葉に、パンを噛み千切りながら首を傾げた。

「木ノ本先生にも、何かしてたんですか?」

「何かしてたんですかじゃないよ、何もされないように逃げ回って疲れたよ俺」

「……どういう事?」

 それまで黙っていた田所が、弁当のふたをぱちりと閉めながら顔を上げた。

 確かに意味がよく分からない。


 木ノ本先生は「あぁぁぁ」と唸りながら、がしがしと頭を掻いた。

「あれは、凄いな。最初、俺に面と向かってアプローチ掛けてきたけど、それに嫌な顔して避けたら、方法変えてきやがったし」

「方法?」

「そ、教師と生徒だから見られないようにしなきゃですよね分かります! とか言って、人気のない教室とか校舎裏とか……」

 ……人気のない教室……っていうか校舎……!

「それデジャブ!」

 思わず素で叫んだ俺を、木ノ本先生は可哀そうな視線を向けて肩を軽く叩いた。


「そう。あいつからのアプローチを受けたくない&周囲に誤解されたくない俺らにとって、逆にオープンに来られた方が避けようがあったよな……。変に人目のない所だと、言い訳のしようもない」

「その通り……!」


 マジか……!!!

 んじゃ、俺の立場に木ノ本先生がなっていた可能性もあったってことか!

 新事実に打ちのめされそうだ……。出来れば俺の方が回避したかった……。


「まぁ清宮には悪いが、何とか俺は回避できたってわけだ。この先も、釣り上げられないように気を付けなきゃな……」

「生徒を見殺しにしたわけデスネ、木ノ本先生」

「これも運命だと思って諦めろ」

 俺の為に諦めろって聞こえるのは、なぜだろう。


 やさぐれそうな気持ちを何とか表に出さないようにして、昼ご飯を再開する。一応先生だから。生徒を生贄にしてる気がするけど、一応教師だから。

「清宮、言葉になってる。ってまぁ、怒りたい気持ちもわかるけど、俺と清宮の立場の違いで勘弁して」

「立場ですか?」

「そ。もし清宮の立場が俺だったら、とりあえず即謹慎確定」

「……あー」

 確かに。思わず納得した。

 富裕層のいるこの学園で生徒間のアレやコレやならまだしも、対教師は一番まずいわな。

「仕方がないので諦めます」

「助かる」

 へらりと笑う木ノ本先生は、一般的に見てイケメンと呼ばれる部類。見目の良い男子や立場のある男子に狙いをつけているであろう来栖にとっては、やはり獲物になるのだろう。


 茶色いくせっ毛は地毛らしく、童顔ともあいあまってどうも年齢より幼く見えてしまう。しかし、委員会の中で生徒会に次ぐ重要ポジションの風紀委員を担当しているというだけあって、しっかりとした評判のいい教師だ。

 ちなみに生徒会には担当している教師はいない。その上は、すぐに学園長や理事会に直結する。



「それで、田所と土井はどこにいたんだ? ずっと食堂?」

 五個ほどはいっていたパンをすべてたいらげると、やっと一息ついて二人に問いかけた。俺よりも先に食べ終わっていた田所と土井はお互いに目を見合わせた後、はぁぁぁっと深く息を吐き出した。


「ど、どうした……」


 何でもっと早く来てくれなかった……と愚痴を言おうとした俺は、二人のその溜息に首を傾げた。

 あれ? もしかして、二人に何か……?


 一抹の不安を覚えた俺の勘は、あっさりと当たっていたらしい。


「捕まってたんだよ」

「……? 捕まって?」


 嫌そうな表情で、田所が吐き出す。


「来栖のクラスメイトに」



 ……、うん。背中に冷や汗が伝ったのはなんでだろう!


さて。

今年ものんびりと更新していきます。

ゆーっくりとお付き合いいただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ