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侮ってました。

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……あぁ……(我に返る)



 もう、言葉にもならない。なんで来るんだよ、訳わからん……元から分からん奴だったか。そんな奴と話そうとした俺が悪かったのか。


 頭を抱えたままぐるぐるとそんなことを考えている間にも、ラスボスはずずいと傍に寄ってきていて。まだ離れた位置にも関わらずもういちど、きゅるんっ(雰囲気根雰囲気)と目を瞬かせつつこちらに向かってくる。

「……」

 状況を察した田所が椅子から腰を浮かせたのに気が付いて、その腕を慌てて掴んだ。

「……」

 離せ、と目が語っていたがそんなのスルーに決まってるだろ俺を見捨てるな我が友よ!


「蒼くん! おはよう!」


 ぎゃぁぁぁぁっ、来たぁっ←心の声


 無言の攻防を二人で繰り広げている間に何の障害もなく俺の隣に辿りついた来栖は、罪悪感も何もミジンコほどにも浮かんでいない満面の笑みで胸の前で両手を組んだ。

「なんだか変な事になっちゃったね」

 ……変な事になってるのに気が付いていたのか!! ならもっと責任感じてくれ!


 ちょっと驚いて目をパチパチとしていたら、恥ずかしそうにぺろりと舌を出して来栖ははにかんだ。


「でも私……蒼くんの言う事ちゃんときいたからね」

「……は?」

 

 俺の言った事? 俺、何か言ったっけ? 来栖に何か望むことがあるとしたら、俺に関わらないでとかそういう事なんだけど。


 きっと来栖の言ってる事とは違うんだろうと思いつつ眉間に力を入れたら、彼女は人差し指を伸ばして俺の眉間を軽く伸ばすように触れた。びっくりして固まっている俺をそのままに、この騒動に油を投下しやがった。


「余計な事するなって、……えへ」


 その言葉が来栖の口から零れた途端、ギャラリーの皆々様が息をのんだ。つられて俺も息をのんでみたけど、来栖の言ってる意味はまったく飲み込めない。


 余計な事? 俺が? 言ったか?


「すっごく恥ずかしいけど……。でも私、蒼くんのこと大切だから我慢するねっ」

「え、ちょ、まっ……!」

 言葉の意味がまったく分からない俺がぽかんと口を開けてる間に、来栖はキラキラエフェクトをまき散らしながら教室から出て行ってしまった。

 慌てて呼びとめようとしてみたけど、もうそこにはいない。


 あ、うん。もうすぐ授業だからそれは学生として正しい行動なんだけど。お願い、疑問と疑惑を置いて出て行かないで……!!!


 ――俺、そんな事言ってないよな……?


 一生懸命、昨日来栖と会話した時の内容を思い浮かべる。



+++++++++回想スタート



「そんな、風紀委員長って……来栖さんと……」

「……は?」

「いや、誤解しないでほしいのだが。転びそうになった来栖を助けただ……」

「ちょっ、やだっ! こんなとこ見られるとか恥ずかしい!!」



 ここら辺からだよな?



「違うのっ、違うんだよ!」

「いや、来栖。その言い方は……」



 で、女子生徒が階段下りてって……



「ちょっと待て!」

「蒼くん! ごめんねっ! ちゃんと私が言っておくからっ」

「いや来栖が言うと誤解されるしかないような気がするから、余計な事はしないでくれ」



「……嘘だろオイ」



+++++++++++++回想終了



 どこで俺言った? 余計な事……? ……ん?



「あっ」



――いや来栖が言うと誤解されるしかないような気がするから、余計な事はしないでくれ←


 

 最後から二行目に言ってるじゃねーかぁぁぁ!!!! でも、意味が違う!!!



 思わず叫び声を上げた俺を見て、クラス内に満ちていたひそひそ話が一気に声高になった。

「委員長納得した!?」

「ってことは、来栖さんの言い分が正しいの?」

 一瞬、しん……と静まり返る。

「……それって……風紀委員長の方から告白したってこと?」

「ホントは好きだったってこと?」


 それは話しているうちに興奮してきたのか、だんだん叫び声のように変わっていって……。


「誰かにその場を見られたけど、噂になっても構わないから余計なことするなって……、そう言ったってこと?!」

「はあ??」

「風紀委員長やっぱり落ちたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! 最悪!!!」


 やっと我に返った俺が上げた声が、クラス内(廊下で様子を伺っていた奴らも含めて)の生徒達の叫び声と重なった。

 誰かが最後に言った言葉になぜかほとんどのクラスメイトが納得したらしく、興奮と嫌悪の坩堝は治まらない。しかし少なくとも当事者の俺の話は聞いて欲しい。

 興奮気味の会話の合間を縫って、なんとか声を上げた。

「ちょっと待て! 何を勝手に……っ」

「……」

いつもならあまり出さない大声に話しを止めてこちらを見たクラスメイト達が、一斉にまた声を上げた。

「それだけ必死に庇うとか、もう、私誰も信じられないー!!」

「待て! 本当に来栖とはなんでもな……」

「聞きたくないぃぃぃっ!!!」


 何であっさり騙されるんだよ、皆……。



 誰も自分の言う言葉に耳を貸してくれないとわかって肩を落とした俺の頭を、可哀そうにとでもいう様に田所がぽんぽんしていてちょっと癒された。

蒼くん、カワイソ……←

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