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引きこもりたいのはお年頃? イイエ、ソウデハアリマセン

ご無沙汰をしています、篠宮です。

だいぶ間が空いてしまい、大変申し訳ございません。

そして今後もゆっくりゆっくり更新になると思います。

今の所、2週間に一度の更新で続けられればと思っております。

どうぞよろしくお願いいたします。

 帰りてぇ。


 脳内で悪態をついてしまうのは、きっと思春期だから。あは。

「あはじゃねーよ、何だよこれ誰か助けてヘルプミー」

「おぉぉ、風紀委員長の頭が壊れた」

 目の前に座る田所が、苦笑しながら頬杖をついた。




 ――とうとう、風紀委員長も姫に落ちたって!




 内心びくびくしながら翌日登校してみれば。案の定な噂に呆然愕然唖然に悄然……あと同じような意味の言葉どんくらいあったっけ。


 落ちてねーよ、全く落ちてねーのにどうしてくれるんだこの噂!!!


「いやぁ、心配になって早めに来てみれば凄いね。噂って」

「……本当にな。まさか、昨日の今日でここまでとか」

 噂って怖い。


 

 結局昨日は土井を宥めるだけで終わってしまった。

 その後、一縷の望みをかけて特別教室棟で会った女子生徒をもう一度捜してはみたものの徒労に終わった。まぁ長い髪と眼鏡に隠れて、よく顔が見えなかったっていうのも敗因だろう。驚いたからか、口元押さえてたし。ほとんどの生徒の顔は大体なら覚えているが、さすがにそこまで手がかりがなければお手上げだ。


「しかしさ……ここまで大事(おおごと)になってるのに、理事会とか何も言ってこないんだよね。そりゃ気づかれないようにはしてるけど、生徒会の仕事も滞り気味だから絶対バレてるのにさ」

「理事会……」

 田所の言葉に、確かに……と頷いた。



 この学園を含めいくつかの学校を運営している本部組織は、基本、ほとんどの裁量権を学園に任せている。さすがに人事を含めた学校法人としての運営は校長を代表とした職員会が握っているものの、基本的な学園の運営は学生……主に生徒会……に任せられている。

 

 まぁ、私立だからこそできる事なんだろうけれどね。


 学園に影響を及ぼしているとはいえ、突き詰めればこんな男女問題。こちらから助けを求めない限りは、きっと口なんて出してこない。理事会なんてもっとだろう。



 田所はうめき声をあげながら、がしがしと両手で自分の髪を掻きまわした。

「特に会長は理事の親戚なんだから、ホントこの状態やばいのにどうして気付かないかな。多分、今後の進路というか将来にかかってくるなんて馬鹿でもわかるのよね。なんで本人は分かってくれないの馬鹿なの? あぁもう、馬鹿なの」

 自問自答にも似たその言葉に、俺は溜息をつきながら賛同した。馬鹿っていうところも含めて。


「そうだよな。もしこれが誰かの罠だったら、ここが学校じゃなくて会社だったら。トップが三人も女にグダグダになるって、唯の阿呆だよな」

「ホントそれ」


 田所はそう言い放つと、がっくりと机に突っ伏してしまった。



 こう見えても、田所はとある大手企業の長男だったりする。書記くんもだし、会長なんて田所が言う通りこの学校を運営している理事一族の一人だ。

 生徒会全てがそういった社会的地位の高いメンバーだけを揃えているわけではないけれど、少なくとも箔をつけるためとか社会に出た時の予行演習のような意味合いでメンバーになる富裕層の生徒は多い。

 特に今年度生徒会には、理事一族の会長がいる。力を認められれば、最終学歴関係なく理事の運営している会社……ここの学校を含んだ色々な企業も含めて……に就職するにはいい点数稼ぎになることは確実だろう。生徒会じゃないけど、なんたって俺もそれを望んでる。



 頑張れば、のんびりのびのび安定企業でぬっくぬく人生に王手を掛けられる(かもしれない)のだから!



 まぁこの法人や他企業側としてもむしろそういった実力者を見つけるための期間であり、企業に連なる本人達にとっても社会に出る前から会社を背負っているともいえるわけで。


「ん?」



……そう言えば。



「田所は大丈夫なのか?」

 今の生徒会の現状がばれたら、この法人ではない企業の社長子息とはいえ評価に関わってきてしまうんじゃ……。


 珍しく心配なんぞをしたからか田所はきょとんとした表情を浮かべた後、口端を歪めてひらひらと手を振った。

「大丈夫に決まってるじゃん」

 あまりにも簡単に答えるから反射的に「そうなのか?」と問い返せば、「そうだよ」と笑みを浮かべたまま目を細めた。


「だって俺、馬鹿じゃないもん」


「……」



……はい、すんません。



 たまに垣間見る田所の底の見えない性格は、やっぱり生まれつきというか環境がそうさせたんだろう。将来確約されている社長の椅子に座る為に、身に着けなければならなかったもの。それは生まれつきの性格でもあり、努力の上に作り上げたものでもあり。


 こういうところで、やっぱり立ち位置の違いを感じる。



 ――うん。俺、庶民でよかった。




 そんなことを考えていたからだろうか。

 罰が当たった……いや罰が自ら体当たりしに来た……? いや、そもそも俺、罰当たるようなことしてねーよ!



「蒼くん!」



教室に響く甲高い甘ったるい声に、思わず机に突っ伏した。




オネガイ、誰か助けて。



次回、蒼くんさらにヘタれるの回です(笑

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