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姫の戦略time-2

本日2話更新しています。

 私の高校生活は、真っ暗闇だった。


 だって。


 誰も、私を見てくれないんだもの。




 中学までは私だけを大切にしてくれたお友達が沢山いたのに、高校では皆が私を馬鹿にする。でも、学校に行かないのは負けたようで悔しくて。

 友達がいないまま、数か月過ごしたある日。


 その人は、私の目の前に現れた。




 ――初めまして。君、ヒロインちゃんて呼ばれてる子?

 

 胡散臭そうなその言葉に、ムッと顔を顰める。


 ――何よ、馬鹿にするなら放っておいて!


 顔はいい癖に、ムカツク性格ね……!!!


 私の言葉に、目の前の彼は目を薄く細めた。


 ――ヒロインならヒロインらしく、お友達を侍らせたりしないの?


 嫌味にしか聞こえない言葉を吐くのは、長めの黒髪を後ろに流した三十代くらいの眼鏡を掛けた男性。最初見た時ドキリとした鼓動は、嫌味な言葉で一気に冷めた。



 ――うるさいわね! モブだらけの世界でどうしろっていうのよ!




 ずっとずっと、おかしいと思ってた。

 ずっとずっと、悩んでた。

 だって私よ? こんなに可愛い私なのに、どうして皆馬鹿にするの?


 でもね。懸命に考えた末にたどり着いた答えは、簡単なものだった。

 そうよ。私が悪いんじゃない。

 こんな特徴もない一般庶民がぞろぞろ通うような学校で、私に相応しい生活ができるはずないんだもの!




 ――君に足りないのは、環境だよね。


 ――っ……!?



 私の内心を見透かしたようなその言葉に、ばっ……っと顔をあげる。そんな私を見る眼鏡の奥の目は細められたまま、楽しそうに口元が弧を描いた。



 ――ねぇ。環境、あげようか?



 ――は?



 ――君が、本当の君になれる場所。

  環境と情報を、君にあげる。

  その代わり、一つだけ条件があるんだけど。……どう?


 ――条件? 環境と情報って……


 ――言葉の通りだよ。

  でもまぁ、望みを叶えられるかどうかは……君次第だけどね







 そう言われて、この学校を一度見に来て。

 私の気持ちは固まった。

 






「姫! 今帰り?」

 

 突然かけられた声に、過去を思い出していた来栖は少し驚いたように目を瞠った。けれどそれもほんの少しの事で、すぐさま口元を緩める。一つ瞬きをして、にっこりと笑顔を浮かべた。


「うん! もう帰るよ!」


 くるりと振り返れば、少し顔を赤くさせた男子生徒の姿。確か、隣のクラスの子だ。今日の合同授業の時に、たまたま隣になった男の子。

 来栖の返答に満面の笑みを返したその男子生徒は、来栖の前まで歩いてきて足を止めた。


「よければ、一緒に帰らないかなと思って」

 想像してた言葉と一言一句違わない内容に、心中苦笑する。嬉しくないわけはないけれど、彼は攻略対象者じゃない。私が好きなのは、彼ら達だけなんだから!


 意図的に申し訳なさそうな表情を浮かべながら、きゅっと彼の手を両手で握る。


「ごめんね! 私、用事があって寄り道しないで帰らないといけないの。また誘ってね!」

 私の手に握られている自分の手に視線を落としていた彼は少しショックを受けたように目を見開いたけれど、すぐに表情を改めて残念そうに眉尻を下げた。

「また時間のある時に、誘わせて」

「うん、ありがとう! バイバイ!」

 にこやかに笑いながらさっさと手をはなして、くるりと踵を返す。




 ――さーて、早く家に帰って作戦練らなきゃ!


 私が見つけた、私のお友達の為に!







攻略対象者リスト ――来栖 姫冠調べ――


生徒会


生徒会会長

大海おおみ みお18歳 三年

176cm

内部持ち上がり組。この学園都市を運営する一族の一人。

幼稚舎からこの学園に通い、役職は違えど幼稚舎から高等部まで生徒会の役員をこなしてきた。

口数は少ないが、態度で示す。生真面目だが器は大きい。

昔から理事長一族の一人として視線を浴びてきたため、ここ数年は長い前髪で視界を隠す傾向にある。



生徒会副会長

田所たどころ 雅臣まさおみ17歳 三年

170cm

内部持ち上がり組。社長令息

幼稚舎からこの学園に通っている生粋のおぼっちゃま。とにかくかわいい、周囲にでかい男が乱立しているお蔭で実際よりもちびっこに見える。

穏やかではあるが、芯は強い。



生徒会議長

小暮こぐれ 御津みつ 17歳 三年

181cm

公立小出身 中学より学園に入学

外部スカウト組

会社経営をしていた父親の失脚により一般家庭へと生活水準を下げたが、両親の努力により過不足のない生活を送れるまでになった。

茶髪にピアスとチャラチャラとした格好をして性格も軽く見せているが、実際はとても冷めた性格で達観している面がある。



生徒会書記

金森 圭 (かなもり けい) 16歳 二年

165cm

内部持ち上がり組  社長令息

ふわふわのくせっ毛が目立つ、少し気の弱いおぼっちゃま。

幼い頃体が弱かった面もあり、周りに大切に育てられた。そのおかげと言っていいのか、丈夫になった後も甘えん坊気質が残る。




風紀委員会


・風紀委員会委員長

清宮きよみや あお18歳 三年

183cm  

公立中出身 スカウト組


荒事に対応できる身体能力を買われ、スカウトされてきた外部推薦入学。

冷静とかクールとか言われて全学年に人気がある。

基本無表情だが、面倒見のいいトップタイプ。



・風紀委員会顧問

木ノ本 樹きのもといつき28歳 教師

177cm 

化学教師として新卒採用され、有無を言わさず風紀委員顧問にならされた若干流され体質な教師。

それでもなんだかわからないまま職務をこなしていける、器用さを持ち合わせた真面目な性格。





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 学園都市を形成する地域一帯の中心に立つ、高層ビル群のひとつ。最上階の部屋で、彼は無表情のまま彼女から手渡された一枚の書類を視線を走らせていた。

「姫でも緊張するんですって。そう言いながら、凄く楽しんでいますけどね」

 楽しそうに笑う彼女は、姫のサポートキャラとして選んだ直属の部下。

「君も楽しんでいるんだろ? 似たかよったかなんじゃない?」

「あはは、そうかもしれませんねぇ。でも、姫にはならないかな」


 そう言い放ってにっこりと笑うと、彼女は部屋から出て行った。ドアが閉められてしまえば、防音仕様のこの部屋に響いてくる音は一つもない。

 彼は持ったままだった書類を机に滑らせて、彼女がついでにと持ってきた珈琲を飲もうとカップを持ち上げた。琥珀色の水面にうつる自分の顔が、ゆらゆらと揺れて像を結ぶ。




 眼鏡の奥の目が、細められる。




 ねぇ、……君は。君達は。


 ……最後に何を手に入れるんだろうね?

さてさて。

前にお伝えしていました検査なのですが、いやー駄目でしたー(苦笑

という事で、更新はしばらくミミズの歩み位になるかもしれません。

どうぞご了承くださいますよう、お願いいたします。


次話更新予定は、ヘタレる蒼くん!(笑


篠宮

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