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スタート

前回の興味ないに引き続き、乙女ゲー設定に喧嘩売ってるかもしれませんごめんなさい。基本的にはギャグです。設定もストーリーもフィクションです。あるわけないだろご都合主義を詰め込んでいますので、ご容赦を。

また、前回みたいなすっぱりざまぁになるかは未定ですので、併せて宜しくお願い致します。

「おはよーございます、風紀委員長」

「お疲れ様です!」


 朝の登校時チェックの為、正門横で同じ委員の後輩といると、高確率……というよりもほぼ100%の確率で声を掛けられる。

「おはよう」

 ただ一言返せば、甲高い声を上げて女子生徒たちは走っていく。けれどそちらを見ずに、次々と校門を通り過ぎていく生徒たちに視線を移した。

 俺にとっては普通だが、他の当番に聞いてみたらそんなことはないと即答されてしまった。ついでに、イケメン爆発しろだと。


 こんな面の皮一枚を見て、何が楽しいんだか。そう言ったら余計怒らせた。悪かったよ。そう言っても怒られた。

 ……俺にどうしろと……!


 重苦しい感情を吐き出すように、小さくため息をついた。





 俺の通う高校は風紀委員はありこそすれ、そこまで校則は厳しくない。登校時チェックも基本的には予防的な意味合いが強く、あまりにも常識を逸脱していない限りは通過させる。その上で、必ず教師が一人昇降口近くに立って最終チェックを行っている。もし風紀委員が見過ごしていた、もしくは気付いたのに私的理由で見逃した違反生徒をチェックし指導する。もし教師に指摘された生徒がいれば、その日の担当風紀委員の最上級生に指導が入る。故に、緩いチェックとはいえ手を抜けるものではないのだ。


 それは最上級生とペアになっている下級生にも同じ事。自分のミスで見逃したとあれば、指導を受けない分罪悪感が残る。


 ……嫌な慣習だ。



 そんなことを考えながら腕時計に視線を落とすと、もうすぐ予鈴が鳴る時間だった。予鈴はHRの二十分前に鳴る事になっていて、その時間で正門を閉め遅刻者を五分取締り終えれば後の事は教師に引き継がれる。風紀委員がチェックしている時間までに正門をくぐる事が出来ればチェックリストに載るだけで済むが、教師の取締りにあってしまえば生徒手帳は没収。違反者チェックを手帳の処罰欄に記入されて、昼休みに担当教師から返されるという苦行が待っている。

 その行為を5回繰り返せば、反省文提出の上に内申点に響くというおまけつきだ。


「委員長、そろそろ時間ですね」


 俺の隣でチェックしていた風紀委員の一年生が、ほぅ……と安堵のため息をついた。まだ委員会に入って三ヶ月、新入生という事もあり勉学に交友にと忙しい時期のはず。その上、高校の中でも一番多くの職務を担当する風紀委員になって、戸惑う事もそして緊張することもあるのだろう。

「あぁ、今日も何事もなく終わりそうでよかった。朝からお疲れさま」

 労わりの言葉を書ければ、ぴっと背筋を伸ばしてぶんぶんと頭を横に振る。

「いえ! 委員の仕事はまだ慣れてはおりませんが嫌いではありません。委員長の足手まといになっていなければと、そう思うだけで……」

 声が大きい事に途中で気が付いて、尻すぼみに続く言葉。風紀委員を毛嫌いする生徒も多い中、こういう事を言ってもらえるとやはりほっとする。




 基本的に一年生で風紀委員会に入ると、他の委員会と違って特別な事情がない限り卒業までずっと担当しなければならない。クラスに何人いても逆にいなくても、二年生以上は固定される。唯一の生徒会直属委員という事もあるし、秘匿すべき条項も多々ある故なのだが。

 また風紀委員長の役職は既に一年時の夏までには決められ、その年は現風紀委員長と行動を共にし職務を引き継ぎ理解していかないとならない。

 そして二年になると、逆に単独の職務が増える。委員長になる前の慣らし期間ともいえるけれど。


 それはこの高校の特異性に理由があるのだが……。


 少し俯き加減で、今日のチェック者を纏めている一年生を見遣る。今までの風紀委員長は来年度も含めて代々男子生徒が受け持っているが、次はこの新一年生に任せてみたいと実は思っている。女子生徒には精神的にも体力的にも負担をかけてしまいそうだが、一年生の中で一番職務に熱心で真面目な生徒だ。


 

腕時計のアラームが、小さく一音鳴り響いた。


「さぁ、正門を閉めてしまおう」

「はい!」


 もう既にほとんどの生徒は構内に入っていて、遅刻の取締りと言ってもそんなに仕事はない。たまに遅刻する生徒を取り締まればいいだけだ。

 後輩と一緒にガラガラと校門を閉めていると、通学路を駆けてくる女子生徒が視界に入った。

「まってぇぇぇ」

 なんとも気の抜けた掛け声が、耳に飛び込んでくる。時計をもう一度確認すれば、予鈴は既に鳴り一分は過ぎていた。

 辿りつく前に正門横にある通用門を開けておくと、肩で息をしている女子生徒が駆け込んでくる。

「セーフ? 私セーフかしら!?」

 そう言う女子生徒を見て、思わずぽかんと口を開けてしまった。


 既定の制服、そして既定の持ち物。特に指摘する点はないのだが……。



「……なんで彼女は食パンを……くわえているんだ? いや、その前によくその状態でしゃべれるな……」



「……そうです、ね」



 俺と一年生の声が、空しく響いた。

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