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存在~レジスタンス~  作者: 瀧サムラ
第一章 幼少期
5/28

(新入り2)

少年は礼儀正しく挨拶を始めた。


金本三二郎(さぶじろう) 9歳です。

両親が海外へ仕事に行くので、

帰って来るまでここに入園します。

よろしくお願いします」


まだ9歳とは思えない、

物怖じしない堂々とした声だった。


大抵、新しく園に入ってくる子供は、

貧困層からの捨て子だ。

薄汚れた衣服をまとい、

先輩園児達に臆するものだ。

まともに学校など行ける筈もないので、

人前での話し方など不躾だ。


だが三二郎は明らかにその「大抵」

とは違っていた。

綺麗な身なり、しゃんと背筋の伸びた姿勢。


職員が彼の挨拶の後に補足した。

「金本君のお父さんとお母さんは、

とっても有名なピアニストです。

今回、少し長い海外公演があるので、

お帰りになられるまで皆さんと生活します。

仲良くしましょうね」


「高そーな服!」

剣斗が呟く。

「なんか、親がここに、

大金を寄付したんだって」

そう囁いたのは、剣斗の友達の麗子だ。

更にその友達の祐介がぼやく。

「絶対ヒイキされるね」


そして珍しいことに、三二郎は健常者だった。

風花園の園児達は全員「天の子」だ。

明らさまな奇形児は愛子と夢子だけだが、

実は剣斗も左手の指が二本欠けているし、

麗子は色盲、祐介は白子で髪も薄い。


「今日のお昼ご飯は、

金本君が入園したお祝いです」

職員の、薬で青白くなった手が、

三二郎の頭を撫で回す。



愛子と夢子も部屋の隅から

三二郎を眺めていた。

まず最初に夢子が見て、

体を反転させて愛子が見る。


「愛子、いつまでみてるの?

はやくゴハンたべようよ」


「あ、そうですわね」


愛子は体を半回転させ、

自分の段ボールに向かった。


愛子の心臓は鼓動を早めた。

それはすぐに夢子にも伝わった。


「愛子、どーしたの?

あの男の子、こわかった?」


「いいえ。こわくはないですわ」


その頬が淡く赤らんでいることまでは、

夢子には気付く術がなかった。

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