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存在~レジスタンス~  作者: 瀧サムラ
第一章 幼少期
4/28

新入り(1)

急に洗面所の扉が開いた。

愛子と夢子は慌てて鏡の前から移動する。

その歩き方は独特だ。

均等に縦半分、それぞれの神経が

右利きに通っているので、

どちらかが前方へ歩くと、

どちらかが後ろ歩きになる。

本人達は慣れきっていたが……。


「うわっ、化け物かよ」


入って来たのは12歳の男児、剣斗だ。

入園歴6年。

「朝っぱらから遭遇するなんて

今日はついてないな」


洗面所は女児も男児も兼用だ。

誰も清掃などしない、ぼっとん便所。

夏場には毎年ハエが飛び交い、

ウジが湧く、悪臭ゾーンだ。


だがもっと西にある施設には

便所そのものがない。

外で用を足し、土で隠すのだ。

ここは、少し東寄りなので、

これでもマシな方だった。



やがて昼食の時間になった。

いつもは園児達が

長テーブルを一番広い部屋に並べる。

そして職員が気だるそうに

大鍋と食器を持って来ると、

全員我先にと群がる。

まだミルクの必要な赤ん坊にだけ、

職員がついてやる。

食事の内容は、

茶色い雑炊のようなものを

お碗に一杯ずつだけだ。

たまに野菜や肉の切れ端が入っていると、

園児達のテンションは跳ね上がる。


しかし今日の昼食はいつもと違った。

なんと、2品ある!

白いご飯と、豚肉入りの野菜炒め!


「なんだろう!?」

「いい匂い!」

園児達は騒ぎ出した。


職員は珍しく笑顔で、彼らを落ち着かせた。


「はい皆さん座ってくださいね」


皆食事を運んで長テーブルに座る。

だが愛子と夢子だけは部屋の隅で、

段ボールをテーブル代わりにしている。


自分達が、剣斗に言われたように

「化け物」だと気味悪がられている

ことを認知し、

他人を不快にさせてはいけないと思い、

自ら長テーブルから離れているのだ。


実際、愛子と夢子に好んで

近付こうとする児童は皆無。

職員からも厄介者扱いだ。


「今日は新しいお友達が入園します」


職員は違法薬物により目は虚ろだが、

声音は普段より穏やかだ。


そして、部屋の扉を開けた。


「それじゃ、ご挨拶してくださいね」


そう促され、園児達の前に立ったのは、

小綺麗な白シャツと緑色のベスト、

ベルトの付いたズボンを身に付けた

少年だった。





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