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存在~レジスタンス~  作者: 瀧サムラ
第一章 幼少期
3/28

タマゴのユメ

月のない真夜中のような漆黒の羽根と

海底に潜む真珠のような純白の羽根が

天高くで交差する。


重なり合った二つの羽根は暫く動かない。


やがて大きな風が吹き、雲が揺れた。


羽根は去り、

そこには二つの卵が残された。


天の最上から、重たい金の音が響く。


二つの卵はゆっくりと地上へ降りていった。


そして地中深く、時を待った。

その間、二つだった卵は融合し、

一つに合体。


約二千年後、

時を知らされた卵は

人間の男性器に、精子と姿を変え宿った。


20×1年。

さびれた助産院で一人の女性が出産した。

しかし、産まれてきた赤ん坊からは

誰もが目を反らした。


赤ん坊は双子の女児。健康には問題なし。

だが、後頭部から腰まで完全に癒着した

所謂「両面人間」だったのだ。






20×7年


『風花園』


汚れた洗面所の鏡に、

6歳の幼女の顔から肩までが映る。 


幼女の頭上には天使の輪が浮かび、

頭皮からは小さな悪魔の角が生えている。

そして肩からは、

天使の白い羽根と悪魔の黒い羽根が

生えている。


「夢子さん、きょうもタマゴのユメでした?」


「うん愛子。タマゴのユメよ」


鏡に映っている幼女は愛子。

そして返事したのは同じく6歳の幼女夢子。

いつも愛子の背面にいる。

いや、愛子が背面なのだろうか。


二人は乳児の頃からずっとこの園にいる、

両面人間だ。


最近二人は頻繁に同じ夢を見る。

そして鏡越しには、

どちらも先程形容したような姿で映るのだ。


愛子は繰り返し夢子に言い聞かせていた。


「夢子さん、これはだれにもナイショですわよ」


「うん。ナイショ」


「わたしと夢子さんがテンシとアクマのアイノコって

みんながしったら、

ここからおいだされちゃいますわ」


愛子の喋り口調は、

お気に入りの絵本の中の、お姫様の受けうりだ。


「わかってるもん」


繰り返し見る、

漆黒の羽根と純白の羽根から産まれた卵の夢。

彼女達はそれが確実に

自分達の事だということを理解していた。

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