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孤児養護施設『風花園』
かつてこの国の首都であった東京。
20××年、
日本を襲った未曹有の人災により
その面影は欠片も残っていない。
公共の交通ルートは
数本の路面電車のみ。
街の中心は市場や盛り場。
そこから東へ行けば、裕福層の暮らす
進歩的で華やかな地帯。
西へ行けば、
トタン屋根の並ぶ、
一日を生きることだけで精一杯の
貧困地帯。
極東には大金持ちが住み、
極西は浮浪者が溢れている。
そんな東京の、
やや東寄りにある西の町。
そこに、私立の孤児養護施設
『風花園』はあった。
0歳から16歳までの入園児30人。
職員は園長含め5人。
園内環境は、劣悪。
親の跡を継いだだけの園長と、
薄給の職員に、
子供の世話をしたいという気持ち
は少しもなかった。
年上の子供が、
乳児や幼児の世話をしている。
それを片目に、
職員達は薬物に耽っている。
春。
園庭には花の咲かなくなった桜の木が
数本、濁った風に煽られている。