第8話 初陣
訓練が始まって一ヶ月が経ったG1の十月、アラタは初めての実戦出撃を命じられた。
作戦内容はシンプルだった。神徒連盟が埼玉県北部の変電施設を攻撃するという情報を入手したとのこと。テクノフォースの電力インフラを狙った妨害工作だ。アラタを含む四人のECS部隊が防衛に当たる。
出発前、教官が言った。
「初めての実戦だ。焦るな。訓練でやったことをやれ。それだけでいい」
アラタは頷いた。
隊の編成は四人。隊長は二十八歳の女性兵士で、コールサインはライカだった。残り二人はアラタと同じく訓練を終えたばかりの新兵だった。一人は二十二歳の男、もう一人は十九歳の女だった。
ライカが移動中に言った。
「初陣の人間に言っておく。相手は人間だ。翼が生えていても、光の武器を持っていても、人間だ。それを忘れるな。それと、感傷は後でやれ。戦闘中に感傷を持ち込むと死ぬぞ」
アラタは窓の外を見た。夜の高速道路。街の灯りが流れていく。
変電施設に到着したのは深夜だった。
広い敷地に変圧器と鉄塔が並んでいた。周囲はフェンスで囲われていたが、上空は開けていた。神徒連盟の戦士が空から来るなら、フェンスは意味をなさない。
四人が散開して配置についた。アラタは施設の東側、鉄塔の影に潜んだ。HUDに夜間視覚強化モードを起動した。暗闇が明るく見えた。
待った。
十分。二十分。
三十分が経った頃、HUDが反応した。上空に熱源。複数。
「来るぞ」とライカが無線で言った。
「三体。上空から降下してくる。各自、目標を確認しろ」
アラタはHUDで目標をロックした。三体の熱源が降下してくる。翼が広がっていた。白い光が夜空に浮いていた。
美しい、とアラタは思った。訓練場の標的とは違う。本物の翼だった。本物の光だった。
しかし引き金を引いた。
戦闘は短かった。
アラタがアームキャノンを撃つと同時に、ライカが前に出た。神徒連盟の戦士三体が光剣を構えて降下してくる。
最初の一体はアラタのドローンユニットが牽制し、動きを止めた。ライカが接近して近接戦に持ち込んだ。ECSのブレードアームと光剣がぶつかった。火花が散った。
二体目が横から来た。アラタは右に飛んだ。ブースターが起動して体が浮いた。空中で体を回転させ、着地と同時にアームキャノンを撃った。エネルギー弾が二体目の翼をかすった。翼の光が弱まった。速度が落ちた。
そこをすかさず、二体目を新兵二人が迎撃した。
三体目が上空から真下に向かって突っ込んできた。速かった。アラタは回避が間に合わないと判断した。エネルギーシールドを展開した。
衝撃が来た。
シールドが光の槍を受け止めた。腕に強い痺れが走った。しかし貫通しなかった。
「神の障壁!」とライカが叫んだ。
アラタには意味がわからなかった。一瞬だけ戸惑った。その一瞬、三体目が再び光剣を構えた。
直撃を受けた。
左肩のアーマーが砕けた。体が吹き飛んだ。フェンスに激突した。
視界が暗くなりかけた。
HUDがエラー表示を出していた。左肩部損傷。出力低下。アラタは歯を食いしばって立ち上がった。
三体目の戦士がこちらに向かってくる。翼が広がっている。光剣が輝いている。
アラタはドローンユニットを全基展開した。四基が同時に飛び出した。レーザーが三体目に集中した。
戦士が障壁を張った。レーザーが弾かれた。しかし動きが止まった。その瞬間、ライカが横から突っ込んできた。ブレードアームで光剣を弾き、続けて胴部を打った。戦士が吹き飛んだ。
三体目が地面に落ちた。動かなかった。
「終わった」とライカが言った。
アラタは左肩を見た。アーマーが大きく割れていた。中に衝撃吸収材が見えた。皮膚には達していなかった。
「怪我は」とライカが聞いた。
「スーツの損傷だけです」
「そうか」ライカは三体の戦士を見た。全員、地面に倒れていた。死んでいるのか気絶しているのか、アラタには判断できなかった。
「初陣にしては悪くなかった。ただし、障壁を忘れるな。神徒連盟の戦士は致死攻撃を最大四回まで自動で防ぐ。基本はそれを超えさせることを考えろ」
アラタは頷いた。
地面に倒れた戦士を見た。若い顔だった。アラタと、そう年が変わらないかもしれなかった。
アラタは視線を外した。
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