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神なき世界の創り方―神を信じた幼馴染と、神を殺す兵器を使う俺―  作者: 知識渇望


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第35話 八月の終わりに

G2の八月が終わろうとしていた。


アラタは八月の最後の週、Project DSの定例会に出た。月一回の観測データの共有だった。作戦部隊の六人が集まる。黒崎が正面に立っていた。


「今月の観測値を報告する」と黒崎が言った。


「神のエネルギー、先月比二十三パーセント上昇。累計の上昇率は六月比で四十一パーセントだ」


誰も声を出さなかった。


「顕現までの推定を更新する。現在の上昇率が維持されれば、十四ヶ月から十六ヶ月の間に顕現する可能性が高い」


先月は十六から十八ヶ月だった。また縮まった。


「変数はある。上昇率が鈍化すれば推定は延びる。加速すれば縮まる。現状は加速傾向にある。夏の戦況が直接影響している」


部隊員の一人が聞いた。


「装置の準備はどうなっている」


「設計の第二段階が完了した。次は試作機の製造に入る。完成まで八ヶ月の予定だ」


八ヶ月で試作機。顕現が十四ヶ月後なら、余裕は六ヶ月しかない。試作機の検証と実用機の完成を六ヶ月でやる計算だった。


「間に合いますか」とアラタは聞いた。


「間に合わせる」と黒崎は答えた。


「スケジュールは厳しい。だからこそ今ここで話している。各員は引き続き前線での戦闘経験を積め。最終作戦の精度に直結する」


会が終わった後、廊下に出た。

黒崎が後ろから来た。


「少し話がある」


作戦室に入った。二人になった。


「月城ユイの動向について情報が入った」と黒崎は言った。


「八月に入ってから群馬南部で複数の交戦記録がある。前衛としての参加が増えている」


アラタは黙って聞いた。


「翼の出力が高い。短期間での戦術習熟が報告されている。神徒連盟の中でも注目されている個体だ」


個体、という言葉が少し引っかかった。しかし黒崎の言い方はいつもそうだった。感情を挟まない言い方だった。それはアラタにも必要なことだとわかっていた。


「報告は以上でしょうか」


「一つだけ聞く」黒崎はアラタを見た。


「今月の任務で三回の装備損傷が記録されている。連続する損傷について、何か原因があるか」


「連続投擲への対処が一手遅れる傾向がありました。シールドで受ける選択肢を加えて改善中です」


「いつから改善している」


「今月十三日の任務後から」


「改善が確認できるのはいつになる」


「次の任務で確認します」


黒崎は短く頷いた。


「自己管理を続けろ。以上だ」


廊下に出た。

窓の外に夕暮れが始まっていた。夏の終わりの空だった。雲が橙色に染まっていた。


十四ヶ月。


数字として受け取った。焦りは持たないようにしていた。しかし確実に近づいていた。近づくということは、準備が間に合うかどうかの問題になっていくということだった。


今できることは何か。


前線で戦い続けて精度を上げること。装備損傷を減らすこと。Project DSの訓練を続けること。それだけだった。それ以外に今できることはなかった。

施設に戻る廊下を歩いた。

ライカが反対方向から来た。


「定例会だったか」


「はい」


「どうだった」


「十四ヶ月の可能性があります」


ライカは少し間を置いた。


「縮まったな」


「はい」


「変わることは何かあるか」


「今やることは変わりません」ライカは頷いた。


「それでいい。今夜は早く眠れ。明日また任務がある」


「わかりました」


廊下が分かれた。ライカは別の方向に歩いていった。

アラタは自室に戻った。

机の上の端末を見た。Project DSの試作機、八ヶ月後。顕現、十四ヶ月後。余裕は六ヶ月。

その数字を頭に入れた。入れた上で、考えるのをやめた。


今夜考えるべきことは別にあった。

明日の任務の準備。スーツの点検。それだけだった。

窓の外、夏の最後の夜が暮れていった。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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