第27話 中継地点
目標の中継拠点は、山の中腹の開けた場所にあった。
平らに整地された二百平方メートル程度の広場で、木造の小屋が二棟と、資材を積んだコンテナが数基置かれていた。神徒連盟の部隊が七体。地上に三体、空中に四体が散開していた。
東から接近したアラタたちは、稜線の手前三十メートルで展開した。岩と木を使って身を隠した。HUDで敵の配置を確認した。
空中の四体は、やや高い位置に固まっていた。南の方角から橘隊が来ることを待っているらしかった。視線が南に向いている。地上の三体は小屋の近くにいた。一体が小屋の中に入っていった。
「南ルートの牽制が入ったら、空中の四体が動く」と
アラタは無線でライカに言った。
「その隙に地上三体を処理する。空中は後から」
「順序が逆だ」とライカが答えた。
「空中を先に処理する。地上は逃げ場がない。空中は散ると厄介になる」
「了解。南の合図を待ちます」
三十秒待った。
南から爆発音がした。橘隊が動いた。
空中の四体が一斉に南を向いた。翼を広げた。降下する姿勢になった。
「今だ」とライカが言った。
アラタは岩の上から出た。ブースターを起動して空中に出た。ドローン四基を全展開した。空中の四体のうち二体に割り当てた。残り二体はライカと部隊員が担当する。
空中に出た瞬間、四体のうち一体がアラタを視認した。反応が速かった。光の槍を投げてきた。
左にブースターで跳んだ。槍が右を通過した。
ドローン四基が二体に向けてレーザーを集中させ、複数回撃った。障壁が光った。削れていった。一回、二回、三回。
もう一体が上から降下してきた。アラタの真上から。
HUDが警告を出した。見上げた。翼を畳んだ戦士が、速い。
シールドを展開した。衝撃がきた。シールドが押された。吹き飛ばされた。空中でバランスを崩した。
一瞬、体勢が乱れた。
その隙に、先ほどの一体が再び槍を投げた。
回避できなかった。
槍がスーツの左側面を掠めた。アーマーに大きな損傷が出た。HUDに警告が複数点滅した。左側のドローン制御系に支障。一基が自動回収された。使えるドローンが三基になってしまった。
アラタは強引に体勢を立て直した。
残り障壁一回の一体に向けて、アームキャノンを高出力モードで構えた。チャージ。二秒。
一体が突っ込んでくる。距離が縮まる。
撃った。直撃した。弾のダメージ自体は障壁で防がれているが、弾のエネルギーそのものは無効化出来ない。
衝撃で一体が落下していった。
残り一体。ライカが処理していた。
「地上に移る」とライカの声が無線に来た。
アラタは着地した。左側面の損傷を確認した。動けないほどではなかった。ただ、左のドローンが一基減った。有効打が減った。以後は慎重に動く必要があった。
地上の三体は建物の裏に隠れていた。橘隊の牽制が来ていた。挟まれた形になっていた。
五分かけて制圧した。三体とも戦闘不能になった。
小屋の中を確認した。物資があった。通信機器があった。地図があった。地図は回収した。通信機器は壊した。小屋に火をつけた。
「完了」とライカが無線で橘に報告した。「撤収する」
帰路は来た道を戻った。アラタは左側面の損傷を気にしながら歩いた。ドローン三基は正常だった。アームキャノンも動いた。戦闘は続けられる状態だった。
山道を下りながら、アラタはHUDのログを確認した。
今日の戦闘で障壁を四回削ることができた。障壁の枚数を正確に数えながら戦うこともできていた。先月の戦闘より精度が上がっていた。
ただ、上から来た一体への対処が遅れた。視野の上方への意識が薄かった。そこは課題だった。
「肩と側面の損傷、帰ってから診せろ」とライカが後ろから言った。
「動けます」
「そういう話じゃない」
アラタは頷いた。ライカは事実を言う人間だった。動けるかどうかと、診てもらうべきかどうかは別の話だった。
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