第15話 同じ夜
G1の十二月、同じ夜のことだった。
東京のテクノフォース施設で、アラタは自室の天井を見ていた。黒崎に会ってから三日が経っていた。眠れなかった。
長野の修練施設で、ユイは窓の外の山を見ていた。雪が降り始めていた。
アラタは端末を開いた。
ユイへのメッセージ画面を開いた。最後のやり取りは八月だった。ユイからの
「神様を信じることにした。戻れない」という一行。それきりだった。
アラタはメッセージを打ち始めた。
何度も書いて、何度も消した。
元気か、と書いた。消した。
会いたい、と書いた。消した。
帰ってこい、と書いた。消した。
結局、何も送れなかった。
端末を閉じて、天井を見た。
Project DSに参加すれば、神を消せるかもしれない。戦争を終わらせられるかもしれない。しかし、答えはまだ出なかった。篠田が死んだ。次も誰かが死ぬかもしれない。それでも、今の自分には決断するための何かが足りない気がした。
何が足りないのか、アラタにはわからなかった。
長野の山の中で、ユイは窓を開けた。
冷たい空気が入ってきた。雪の匂いを感じた。
翼を少し出した。白い光が部屋を照らした。この四ヶ月で、翼は最初より大きくなっていた。光が強くなっていた。
ユイは翼を窓の外に向けた。光が山の暗闇に散った。
颯太のことを思った。
もうすぐだよ、とユイは心の中で言った。もうすぐ神様が答えてくれると思う。もうすぐ会えると思う。
そう信じていた。信じることしかできなかった。
翼を閉じた。光が消えた。山の暗闇が戻った。雪が降っていた。
ユイはベッドに横になった。目を閉じた。
東京で、アラタは目を閉じた。
篠田のことを思った。死んでないんで、大丈夫っす、と言っていた声。
颯太のことを思った。ありがとう、と言った声。
二人とも死んだ。守れなかった。
これから先、また誰かが死ぬだろう。戦争が続く限り。
アラタは一つだけ確認した。自分が今、何のために戦っているのか。
テクノフォースのためではなかった。正義のためでもなかった。
ただ、生き残ることだった。今はまだそれだけでよかった。
何のために生き残るかは、まだはっきりしなかった。でも、はっきりする日は来る気がした。
アラタは目を閉じた。
長野の山の中で、ユイも目を閉じた。
同じ夜だった。
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