おっさん×幼女2:旅へ出よう
「××ちゃん、いっつもお人形あそびばっかり」
「…………」
「お外であそぼー」
「……いかない」
「うう、ママー」
子どもらしい部屋、机が2つに2段ベッド何処からどう見ても2人部屋なのが分る、女の子の人形で遊ぶ幼女を外で遊ぼうと誘う幼女、素気無く断られ母親の元へ去っていく、人形遊びがしたいから邪魔をしないで…。
「……っ、うわ、俺今ちょっと寝ちゃった?」
宿の部屋のベッドの上ではっと目を覚ます、また前世の夢を見ていたのか、可愛らしいお部屋に人形と人形の家、綺麗なお洋服…《アルテレシア》では貴族それも高位貴族でも中々お目に掛かれない上質な代物にバンクは溜息を吐く。
「いいなーって…いかん!道具屋に行かないと…」
手早く身支度を整える、そう言えば鏡も無い今まで気にしてなかった、髭も元からそんなに濃くもないし、髪は手入れが面倒だと短くしているから適当に手櫛でいつも整えていたが…。
「髪、伸ばそうかな……ちょっとだけ」
前髪の白い部分を摘まみながら溜息を吐き戦斧を背に、更に荷物を入れた背負子も背負って馴染みに道具屋へ向かった。
「あんたか、何のようだ?手入れか?」
「いや、買い取って貰いたいんだ。これとか」
「…これはあんたの商売道具だろ?」
「あー冒険者稼業は暫く止めて旅をするんだ、大きいだろ?旅にはちょっとな」
街の老舗の歴史ある道具屋、見た目の入り口は小さいが奥行きは広く至る所に武器や道具が並べられ奥には馴染みの店主が不愛想にバンクを出迎え、バンクは背に背負っていた背負子を床に置き長年愛用していた戦斧をカウンターに置き、店主はまじまじと戦斧とバンクの顔を見比べ買い取ってくれてと言うバンクをうろんげに見つめ査定を始め、その間旅に必要な物を見て行く。
「長年の相棒をあっさり手放しまうとはな、手入れも行き届いているし大事にしていただろう」
「だって、可愛くないし重いし」
「ん?」
「いや、何でもない。俺も歳取ったし軽い得物に変えたいから」
店主は査定しながらバンクがどれほど得物を大事にしていたか知っている、それを手放すとはと言うが当のバンクは無骨な戦斧を可愛くないの一言で手放そうとしている、なんとなくそれらしい理由を付けておく。
「これいい、綺麗」
「…あんた趣味が変わったのか、それは切れ味は保証するが無駄に魔石を付けた宝飾品のような物だ。以前はそういった物は嫌だと言っていただろう」
「あーやっぱり歳を取ると色々変わってくるんだ、これ軽いし。これを買う」
バンクが手にしたのは白色の鞘と柄の細身の剣に色が付いた魔石を埋め込んだ繊細なデザインの物、店主はバンクならそれは選ばないであろう物を選びを首を傾げていたが、バンクは見た目が綺麗だから選んだとは言えず旅をするから軽い方が良いと白い剣を買う事にした。
「この戦斧は500万ロネで買い取ろう」
「え!そんなに?」
「おいおい、望んで銀級《絶断》のお前が長年愛用していた武器だぞ?正直500万でも安いがこの店で出せる上限がこれだ。他ならもっと値が付くかもしれんぞ」
「銘有りとかじゃないけどな、買った時と変わらない値段だな。その値段で売るよ」
店主から伝えられた額に目を丸くする、剣や旅の必需品を買っても暫く仕事しなくても良い位だ。
「そうかい、じゃ、これ、その剣と他の品を引いた分の200万ロネでこれは餞別だ」
「携帯食と干し肉か…ありがたいな」
「達者でな」
「おお、そっちも」
葉に包まれた干し肉と紙に包まれた携帯食料をありがたく受け取り背負子にしまう、軽い挨拶を交わしバンクはそのまま旅を始める。
「旅なんていつぶりだろうな、南の方がいいな。次の街で護衛の仕事でも受けて荷馬車にでも乗るかな」
店を出て南に向かっていく、徒歩の旅は過酷だろうから所々要所要所で護衛の仕事を受けて旅を進めれば良いかと歩き出した…。
数日後…
「バンクのおっさんはどこだ?」
「ちょっと小銭を手に入れたからって遊んでるのかしら」
「まったく、せっかく仕事を持ち掛けに来たのに」
「………」
数日後に遺跡管理ギルドを訪れた《熱杭》のメンバー、どうやら稼いだ金を使いすぎまた遺跡ダンジョンに向おうと赴きバンクの姿を探している様子を見て職員が溜息交じりに口を開く。
「銀級バンクさんなら街を出ましたよ、暫く…いえ、もうここには戻らないと思います」
「は?せっかく使ってやるって言っているのに」
「なあに、どこいっちゃったのよ。あのおっさん、使えないわね」
「あの歳でやはり冒険者は辛いと感じたのでしょう、仕方ありません。メンバーを募りましょう」
《熱杭》のメンバーは口々にバンクを非難し、メンバーを探す為周囲をみるが皆目を逸らす。
「おいおい、銀級の俺ら《熱杭》のパーティに加えてやるって言っているんだぜ」
「そうよそうよ、今なら分け前も弾むわよ」
「ええ、銀級の私たちと遺跡に行けば攻略も有利ですよ」
そう宣伝するが誰も彼も《熱杭》が遺跡ダンジョンの攻略が進んでいたのはバンクのお陰だと知っている、《熱杭》のメンバーは徐々に必死にメンバーを募るが誰も相手にしない、職員がもう迷惑だから出て行けと言われるまでそれが続いた…。




