異世界ニグルアルブム
将軍に連れられ訪れたのは白い大理石に覆われた不可思議な町
巨大な湖を囲うように岸辺には下から順に家屋が立ち並んでいる
そして、一際大きく聳え立つは漆黒の影に覆われた謎の空に浮遊する天空城
「あの、神父様…あの空に浮かぶ城は何ですか?」
恐る恐る黒装束の男に問うがあまりピンと来ていない様子だ
少し考えたあとで、ハッと気付いたように応える
「ああ!神父というのは私に言ったのですね?」
「ええ、あ申し訳ありません牧師様でしたか?」
しまった、カトリックではなくプロテスタントだったか
ドイツ語を話す黒装束の男、あいにく宗派には疎いために気付かなかった
失礼なことをしてしまったと心の中で反省する
「いいえ、是非貴方様にはフリードと。この地域では聖職者と一括りにされているのです」
「あ、そうでしたか。これはとんだ勘違いを」
「いえいえ、純血のノワール人であるならば当然でしょう」
「のわーる?」
「その説明は後ほどに、あの螺旋塔についての質問でしたね?」
聞き慣れない単語に僅かに不安を覚えるが、この男は恐らく信用に値する
それに何も知らない未知の土地でのことだ
ここは大人しく耳を傾けておいた方が良いだろう
「あれはミリスティリスの螺旋塔といいます。200年前に降臨した神狩りの使徒達の根城、その頭目たるイエロアニス卿を討伐したのち、勇者達は原住民と共にこの地に国を作り上げました。それがこの神聖ニグルアルブムと言う訳です」
降臨、空中浮遊都市、見知らぬ文化
確信した、この世界は現世ではない
「そう、この世界は貴方の故郷とは──」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
突如雄叫びを上げるルーファウスに瞠目するフリード
彼にはこの喜びが理解できないだろう
現世では何もいいところがなかった、ない一つだ
しかし、神は私を見捨てては居なかった
過去を全て清算しやり直す機会をお与えくださったのだ
「バンザーイ!別世界ニグルアルブムバンザーイ!!!!!」




