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アルヴの森

赤い招待状の地図に従いルーファウスは今、東ドイツ南部に存在するアルヴの森を闊歩していた

頬をを撫でる森の新鮮な空気と、耳を澄ませば聞こえてくる虫の囀り

パキリパキリと歩くたびに地面に落ちた枝がへし折れ、痛快な音が鳴り響く


「樹海、まさに樹海!これこそ俺が求めていた俺の居場所だ!」


ルーファウスは、その御伽話の絵画をそのまま抜き取ったような美しい自然を心ゆくまで堪能していた

まだ深夜03:00だと言うに、ランプが全く必要ない程森は明るい

偶然か主催者が狙ったのか定かでは無いが、満天の星空と月光が自身を導いてくれる


「こんな場所がこの世界にあったなんて、しかし何だ…人がまるで居ないじゃないか。まさか迷った?」


怪訝に思ったルーファウスは手元の赤い招待状を開きもう一度よく確認する

やはり間違っていない、ここが集合場所の筈だ

しかし周りにあるのは巨大な樹木と枯葉のみ


「……そうか、わかったぞ」


ルーファウスはしたり顔で周りを見渡す

そして大声で笑って見せたあと、こう続けた


「兄貴、騙したな!俺をおちょくる為にここに呼んだんだろ!」


確信めいた声音だった

だが返事はない

帰ってくるのは木々に跳ね返った自分の声だけ

確信と自身が徐々に崩れ落ち、代わりに恐怖が湧き出てくる

先程までの興奮はどこへやら、誰もいない神秘的な森林が悍ましい悪魔の巣窟へと変貌する



騙された

国家保安部の主催なら案内人が最低でも1人はいる筈だ

浮かれてそんな単純な事にも気づかなかった自分を激しく罵る



「畜生…またかよ…またなのかよ!」



忘れかけていた劣等感が再度心に火を灯し、燃え滾る溶岩のように溢れ出した



「死ね!!くたばれ!!!こんな世の中ウンザリなんだよ!!!もう殺せ!!!!」



どれだけ木々を罵倒しようが返事は帰ってこない

今まで押さえ込んできた心の膿を全てこの森林にぶち撒ける



憎い!この世の中が、世界が、人間が!!!全てが憎い!!!!!



─パリン─



突如何かが割れる音がする

それと同時に襲い来るは、身を浮かす程の突風と萌葱色の光

体の自由を奪われ、視界が星々一色になる

全身を振るわせ抵抗するも、大木のように体が鈍く身動きが取れない

必死に眼を動かし光の発信源を辿る

彼が最後に現世で見たものは 兄から贈られた紹介状だった


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