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ニグルーシ

ニグルアルブムに転移して1年と数ヶ月

最初の一年は、思い返したくも無い

でも俺は今、幸せの絶頂にいる

男ルーファウス・ペルツル19歳

生涯二人目の彼女にして最愛の人を見つけたのだ



ニグルアルブム─ニグルーシ地区



読んで字の如く、ロシア系の街だ

街全体が酒臭く住民はみんな怠けるか、昼間から酒に溺れて泥酔している

“シラフが正常”とはよく言ったものだ

国民の特性はどこに行っても変わらないらしい


今日、俺はある女性と待ち合わせをしていた

とある事業がこのニグルーシで少しばかりの成功を収め彼女が今日その見物にくる事になっている



「筋肉質に頼むぜ兄ちゃん!」


「分かりました、お題は描き終わってからで結構ですので」



ニグルーシの絵描きルーファウス

この地域ではちょっとした有名人だ

ここの住民は富裕層は少ないが、代わりに極端な貧困も居ない

資源が豊富な地域で適当に運営していても、中央政府への納品ノルマを上回る食糧を生産できる

この地域では通貨は殆ど紙切れ同然

物々交換が主流の最も原始的で平和な地域だった


その為、眼前のホームレスも実は食事には困っておらず金も下手をすれば自分よりも蓄えているだろう


首裏に手を回し魅惑的なポーズを演出するが、贅肉でたるみ切った彼がする格好は非常に滑稽だ

ルーファウスはこの地で取り寄せた絵の具を使ってサラサラと絵を仕上げて行く


(ラティナが買ってきてくれた筆?随分穂首が太いけど多分絵の具用じゃないよな…でも、この世界でこれだけのもの集めてくれただけ本当にありがたいけど)


自分が絵描きだと知ったラティナは、こっそりと屋敷を抜け出し何処からともなく筆と絵の具を用意してくれた

絵描きの端くれからすれば適当にも程があるラインナップだったが、彼女なりに厳選してくれた名残が見うけられ、素直に嬉しかった為に現在も使用している



「ふーん、貴方って本当に絵描きだったんだ。ちょっと疑ってたけど、確かに上手いわね」


「うお!ラティナ!?」



気付けば顔の横に黒い頭巾を被ったオッドアイの半妖精がマジマジと絵を見つめていた

驚いて筆が変な方向に行きかけるが、反射的にパレットに戻した事で難を逃れる



「お待たせ、捗ってるみたいね?」


「何だ兄ちゃん彼女居たのかよ」


「い、いやいや…彼女だなんて」


「ええ、そうです彼女じゃなくて友達です」


「別に否定しなくてもいいのにヨォ!」



ポージングを保ちつつ、こちらをニヤニヤと見つめる男が実にウザい

本当に恋人ではないのだ

彼女のことは間違いなく好きだった

だが、何処か彼女は自分との間に線を引いている

何となく理由は分かっていた


だって、寿命が違うから



「いいからポーズとっとけ!そろそろ仕上げだ」



強引に客の男を黙らせ絵の仕上げに入る

赤い絵の具をたっぷりと染み込ませ、左下にサインを書く

絵の具を脇のテーブルに置き、完成した絵をそのまま彼に手渡した


「まだ乾いてないから洗濯挟みにでも挟んで乾かしときな?」


「おう!…ってなんだこれ、真っ赤じゃねえか。絵の具が全部真っ赤!」


手渡した絵は全て赤色で統一してある

最初は真面目に様々な色の絵の具を使用して描いていたが、色が偏りめんどくさくなったからだ

その色と威風堂々とした男の姿は、隣国の労働者帝国のプロパガンダポスターを彷彿とさせる


「おや、ロシア人は赤色が好きなんじゃ無いのか?」


「何だそりゃ…まぁいいや!これはこれで味がある、ありがとな!」



男はニカッと笑い代金2.000ガイラを支払って去っていった


「凄いね、アンタって実は現世でも凄く有能な人間だったんじゃない?」


「アハハ…そう、だな」


耳が痛い話だ

こちらの世界では俺のスキルは評価される

だが現世では何一つとして通用しない

皆の平均が下がっただけで、自分は特別でも何でもないのだ



「ははぁ…成る程ね」


「何だよ」


「何でも無いわ…なんてね。ゴメン嫌な言い方だったよね?」



ラティナは何かを察したように鼻を鳴らし、そして申し訳なさそうに謝罪する

ラティナが謝罪したのは、そんな下卑た理由では無い

無意識に見下すような態度をとった事を謝罪しているのだ

少しばかり劣等感を刺激されるが、そんな程度の事は気にならない


「別にいいよ事実だから、この世界の芸術のレベルが低いおかげで自分がマシに見えるだけ。多分この世界でもトップ層に比べれば自分は凡人以下なんだろうな」


「はい、自分を卑下しない!ウザいよ?それやって良いのは可愛い女の子だけです。メンヘラ男子に需要なんてないからね?」


「…グハッ!」


「フフフ、元気になったみたいで良かったわ。さてと、じゃあ今日は私に付き合って?」



そう言うとラティナは俺の手を取り、何処へともなく歩き始めた

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