飛び込めルーファウス ラティナの胸に
良い匂いがする
フローラルな柔軟剤のようで優しく太陽のような香り
その裏にほんのりと香る肌と汗と、女の子の匂い
あまりの幸福から再び股間が熱くなるのを感じた
「ヒッ!」
「待っててラティナ様、この腐れ肉のタマキン切り落とすから」
「ままま、待つでやんす!いくら何でも切り落とすのはやり過ぎでやんす!人間の男はエルフよりも性欲旺盛だからしょうがないでやんすよ!」
喧しく目の前で討論するのは先ほどの救世主
片翼の妖精ラティナと、その配下らしい男女二人
男のイヴァンという男はエルフにしては美形でもないが、とても愛嬌のある顔立ちでマスコットのような愛らしさがある
対するフローゼは吊り上がった殺人鬼のような瞳で、宛ら纏う雰囲気は獲物を狙う鷹のようだ
「アンタ達は甘いのよ、男ってのはね世界で1番邪悪な生き物なの。汚されちゃったら女の子は二度と元には戻れないのよ?ここで去勢するのがベストなの、こいつにもラティナ様の為にもね」
冷ややかなガラスの様な視線だ
この世界に来てそんな目で見られたのは初めてだ
だが、不思議と悪い気はしなかった
なんだか、人として嫌悪されている
それだけで幸せにすら思えた
「いくら何でも極論すぎるでやんすよ…ほらお前も何か言い返し…って何で嬉しそうなんでやんすか?変態なんでやんす?」
「当たり前よ、初対面の女の子にフル勃起かますなんて…ホント不潔」
「フ、フローゼ…別にいいのよ。その、ほら…ちょっとビックリしただけだから。それに”あんな目”に合ったんだからしょうがないよ…」
彼女の口から語られたのは、自身に対する憐れみだった
一瞬とてつもない程に温かい気持ちになり、一瞬で引き戻される
脳裏に齧り付く悍ましい記憶が燻る性欲を一瞬で掻き消す
「…うっ…うっ……」
まただ、また涙が零れ落ちてくる
先程の比ではない
解放された安堵と、穢された自分への劣等感
そして、この地で初めて味わう人並みの優しさ
溜め込んできた感情が濁流となり、彼の全てを曝け出す
「うわああああ!何で、何でもっと早く来てくれなかったんだよ!俺、俺!俺が何したって言うんだよ!クソォクソォ!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だぁああ!!」
無我夢中で今最も欲している者へ飛び込む
顔に柔らかな感触が伝わり、腕にそのしっとりとした肌が触れビクりと震えるのを感じた
だが、彼女は決して俺を引き離さなかった
そっと自分を受け止め、頭を撫でてくれる少女
半日にも渡り彼女の抱擁を求め続け、呆れたフローゼに引き離されるまで俺は彼女を求め続けた




