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チンチンの化け物

朝だ

今日もこの時が来てしまった

あの日から一体どれ程の何月が経ったのだろうか

この地へ降り立ったあの日、忘れもしないたった一度の過ち


「おはようございまぁーーす!さぁ今日もバンバン子作りして貰いますよぉ?」


寝起きを出迎えてくれたのは、ガラス越しに顔をめり込ませ、ニヤニヤとコチラを眺める女

可愛らしいおかっぱの下に覗くのは、大きな丸メガネに潰れた鼻

綺麗に切れ込みの入った二重をその贅肉が台無しにする

醜悪という言葉をそのまま人の形にしたような存在だ


「…うっ…うっ…オエッ」


涙が溢れてくる

衣服を剥がされ、雁字搦めに縛られた四肢

口を猿轡で封じられ、そこからチューブで強引に栄養を与えられる

そして、これから行われる地獄の一日


一体自分が何をしたと言うのか

あの女に出会ってから悪い事ばかりだ

ルネとかいう女を抱いてから、気づいたら俺はここに居た



「え!?ちょっと何泣いてるんですか?理解不能!毎日女の子とセックスできるんですよ!?男の夢、ハーレムじゃないですか!」



もう、怒る気力すら無い

鎖で縛られ、毎日交代で部屋に来る女に犯される日々


自らが男であることを激しく憎悪した

女であれば一度孕めば次を作るまでに時間がかかる

だが、自分はどうだ

安定した食事を与えられる限り、精子が尽きる事はない

毎日毎日、白く美しい女が股の上でミシンのように踊る日々

気持ちよさのかけらも無い


「お?誰か来たみたいですねぇ!ちょっと待っててくださいねぇ?」


ガラス越しに踵を返しその場を後にする女博士

もう、二度と戻って欲しくない

ほんの数日でいいから放っておいて欲しい

そうすれば俺は餓死できる


ここに来てから空腹が、この業苦からの解放の希望になっていた

うっかり博士が3日間食事を摂取しなかった時がある

意識が朦朧とし、ようやく死ねると思った


その後、満面の笑みで栄養食を押し込まれた時の絶望は今でも覚えている


博士が壁の向こうに佇む女を迎え入れる為、謎の液晶画面に手をかざす


…ズッ…ズッ


鈴のような音が鳴った後、白い扉がゆっくりと開く

その先に居たのは、黒装束に身を包んだ低身長の何か

黒いフードの内側からは、自分と同じ黒髪

そして片方のみに燦然と輝く黄金の瞳


「……んー?お主はだれ?女の子だけどブラン人じゃないですねぇ?」


「死ねゲス野郎」


突如、彼女の左背後から漆黒の翼が服を引き裂き顕現する

周囲一帯に黒い羽が飛び散り、その一つ一つが不気味に蠢き瞬く間にドス黒いカラスへと姿を変える


「ぬっ!お主は左翼妖精ですな!?私の愛の巣に無断で押し入るなど言語道断、成敗致す!」


─黒の剛腕─


女博士の拳が突如肥大化し、影で覆われた大木に姿を変える


「…ふーん、中位魔法か…やるわね」


「やりますねぇ!」


女博士が剛腕を天高く突き上げ、凄まじい勢いで振り下ろす

拳が空気を裂き、謎の女のすぐ頭上へと迫った


─八咫烏─


声と同時に巨腕が彼女を捉え、一瞬遅れて豪雷の如き炸裂が部屋中に木霊する

床が弾け飛び、謎の女性は無惨に床の瓦礫と一体化したかに思えた


「…こっちよ、ウスノロ」


女博士の背後に悠然と立ち尽くす片翼の女

いつの間にか彼女の手には、異常に長い持ち手の刀が握られていた


─聖槍エルフリーデ─


彼女は翼を盾に突進し、未だ体制を立て直せない女博士に急接近する

ギョッとした女博士は強引に巨腕を振り払い、彼女は翼で巧みにそれを受け流す

振り払った勢いでガラ空きになった女博士の胴体を目掛け、翼の後ろに忍ばせた聖槍を勢いよく片翼の女が突き立てた


「ウッシャア!!!」


ドスの効いた掛け声と共に、女博士の胸に深々と聖槍が突き刺さる


「ンアッーーーーーー!!!!」


甲高く情けない咆哮と共に彼女は床に倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった


「自業自得よ腐れ肉、にしても残念ね…本当は捕らえて色々聞き出そうと思ってたのに」


大きな溜息と共に、ピクリとも動かなくなった女博士を見下す女


(…誰だアイツ?まぁ誰でもいいや!おい、こっちだ!おーい女さーん!ここだぁ!)


猿轡の裏から必死に声を上げ、コチラに気づくようにアピールする

鎖で縛られた身体を全力で揺すり、まだ生きている事をアピールする


「…さてと、囚われのノワール人はどこかなー?……………え?」


全力のアピールが功を制し、一瞬だが確実に目が合う

純銀の瞳と金色の瞳

そして、先の攻防で脱げたフードから覗く尖った耳

御伽話に登場する森の守護者、エルフだ



(か…可愛い!!!!)



なんて…なんて可愛い女の子なのだろう

黒い巻き髪と金髪のメッシュ

小さな身体に似合わない豊かな胸と、シルクのように優しい白い肌

そのあまりの可憐さにルーファウスの凍てついた心は一瞬で氷解し、代わりに今まで強引に犯されてきた死肉と化した下半身が息を吹き返したように熱くなる



(しゅ…しゅきぃぃいいい!!!)



全身から溢れ出る求愛ホルモンと、その本能を一点に全て集約した下半身

そんな、桃黄色のオーラは男を経験した事のない彼女にとって耐え難いものだった


「ギャァアアア!!!フローゼェェエエ!!チンチンの化け物よおおおお!!!!」

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