EX episode3 女子会!
『EX episode3 女子会!』
色々とあった決闘が終わって、みんなへとへと。
気前の良い王様のお陰で、今夜は王宮でお泊りになった。
あの王様の嫁になる気はないけど、友達ならあり寄りのあり!
今晩も豪華な客室で過ごす事になったけど、今夜は私とルナーの他にもう一人。大神官サマも一緒! オジサンの代わりに私たちの事を守ってくれるそうだけど、ここでは気を張らなくても大丈夫だからと楽にしてもらう。
少し困ったようにして、それから大神官サマは優しく微笑んでくれた。
美人の笑み、疲れに効く……!
広々としたソファに私を挟んで三人横並びに腰を掛け、メイドさんが注いでくれた紅茶に口を付ける。
ほどよい温かさが、色々とあった体と心に染みていく。
「随分と立派な客室ですね。このもてなしも、あの王からは考えられない上質さで驚きました」
大神官サマが目を細めて小さな溜息を吐き出す。
だよね、と私は同意して、テーブルの上に置かれたお菓子の類を大神官サマの前に差し出した。
「お菓子もめっちゃ美味しいので、ぜひぜひ!」
「ふふっ、一応勤務中なのですが、聖女様からのお誘いは断れませんね。いただきます」
大神官サマのしなやかで細い指先が、クッキーを一枚摘まみ上げる。
クッキーを口に運び口に含む動作すら絵になる。
あー、絶対あっちの世界(私の居た世界ね)に行けばモデルさんになれるよ。間違いない!
「というか、この世界の女性、やけに美人が多すぎない!?」
「はぁ? ちょっと、何いきなり大きな声出してるのよ……」
「いやさっ、大神官サマもルナーも美人プラス可愛い系じゃん? 女王様だって美人だし、司祭さんはカッコいい系。志乃さんは元々あっちの世界の人だけど優しくてキレイだし! どーなってんの異世界! 美の秘訣なんかあんの!?」
くだらないと言い捨ててルナーは、スフレチーズケーキを口に運ぶ。
こっちの世界で親しみのあるスイーツが食べられるのは、先代の聖女様達のお陰で、特にこのケーキ類は志乃さんが旦那さんと一緒に広めてくれたんだって。感謝!
「無いわよ。特に何もしてなくてもこう。つまり天然ものよ。私はね。そっちの大神官は知らないけれど」
ジトッとした目でルナーが大神官サマを見る。
どうにも大神官サマに対してツンツンしてるんだよね、ルナー。魔物からすると、大神官サマはどうしても怖い存在みたい。でも決闘の最中、守ってくれたことには感謝しているらしく、密かにお礼を言っていたのを私は知っていたりする。
「僕も特に何もしていませんよ。そう言う聖女様だって可愛らしいじゃないですか」
「いやいや、私なんて普通だよ、普通~」
「自分の事は意外と分からないものです。ね、ルナーさん?」
「えっ!? あっ、ええ、そうね、そうよ、そういうものよ」
「ルナー、大神官サマにビビり過ぎじゃない?」
「誰がビビってるですって!?」
「やだなぁ。僕、怖くありませんよ?」
ルナーに向かって大神官サマがやわく笑む。
うーん、ドキドキしちゃう。
「ふっ、ふんっ、分かってるわよ! 全く……私の知る大神官とは大違いね」
「ルナーさん、前代の大神官をご存知で?」
「前代かは知らないけれど、大戦時の大神官は知ってるわ。兄様と戦っているところを見たから」
お兄さんの事を思い出して、ルナーはうっとりとした顔付きで語りだす。ただし語りの内容は大神官についてではなく、お兄さんの事がメインだった。
「あぁ! あの時の兄様の、風になびく翡翠の髪がとても美しくて! あれは兄様ベストショットトップスリーに入るわね。あぁ、いえもっと素晴らしいものがあったわ。そう、あれはクレセントと一緒に魔獣狩りに出た時の事よ」
止まらないルナーの兄トークに耳を傾けながら、私はスコーンをかじる。いやー、焼きたて美味い。
「ルナーさんはお兄様の事がお好きなんですね」
「当然よ! 兄様は本当に強くて、カッコよくて、美しくて、私の自慢の兄様だったわ」
「クラトス様よりも?」
「ハァーッ!?」
にこにこした大神官サマの突然のぶっこみに、ルナーがあられもない悲鳴を上げた。大神官サマ、ナイス!
「なっ、なんでそこでアイツの名前が出るのよ!? 関係無いでしょう!?」
「いやいや、それ程までに立派なお兄様が身内にいると、並大抵の男性では恋愛対象にはなり得ないのだろうな~と思いまして」
「もちろん兄様は最高の御方よ! でっ、でもっ、だからって別にクレセントが劣っているってワケじゃなくて……っ」
顔を真っ赤にして、ごにょごにょとオジサンの名前を口にするルナーは正直大分可愛い。
オジサンのこと好きだって丸わかりだよ。良いねぇ、恋する乙女。私も話しに混ざりたいけど、口の中スコーンで一杯で無理だわ。
「分かりますよ。至高の存在と最愛の存在というのは別ですから。僕もそうです。僕にとっての至高は女王陛下。そして最愛は……」
えっ、えっ!?
大神官サマがなんかちょっといやらしい感じの笑みを浮かべている! 私だけじゃなくて、ルナーまでもつい顔を赤くして息を飲んでしまう。最愛って、そんな……大神官サマの心を射止めたのは誰~!?
「タマくんのふわふわの毛、ということにしておきましょうか!」
「ですよねッ!」
分かる! タマの毛、気持ちいいよね! でもそうじゃない!
やれやれと肩を竦め、ルナーは呆れたようにソファーにごろりと身を預けた。
「何よ、勿体ぶって。やっぱりアンタ、ヤなヤツね」
「すみません。でも、ルナーさん。僕達やっぱり、良い友人になれると思いますよ」
「いいわよ、別に。でも、至高と最愛が別っていうのは良いわね。採用するわ」
「ありがとうございます」
二人のやり取りが妙におかしくて、私は間に挟まれながらくすくすと笑ってしまった。
……今日は本当に色々あった。
辛い事の方が多くて正直大分きつかったけど、二人のお陰で今は大分楽になっている。ありがたいなぁ……。
「よしっ! 一緒にお風呂行こう! ここ、大浴場あるんだよ! ねっ、ルナー!」
「お前、またあそこへ行くの!? 確かにお湯は気持ちが良いけど、恥ずかしいわ!」
「大丈夫だって~。女同士、裸のお付き合い~。大神官サマも行きましょっ!」
「いいですね! あぁ、安心して下さい。覗こうとする不埒者が居れば、僕がすぐに消し炭にしますから」
「わーっ! さっすが大神官サマ、頼もしい!」
「仕方がないわね、今日だけよ……!?」
なんだかんだ言って意外と付き合いの良いルナーと、大神官サマの手を引いて、私は大浴場へ向かうのだった。
しっかり休んで、明日からもまた頑張れるように。
END
あれ? 待って。
私だけ食べてるだけじゃなかった……!?




