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『EX episode2 永遠の淑女』

『EX episode2 永遠の淑女』



 満天の星空の下。胸の前で手の平を重ね合わせ、瞼を閉じる。

 心静かに祈りを捧げる聖女さんを傍で見つめていると、穏やかな心地に包まれた。


 普段は賑やかな聖女さんだが、祈りを捧げるこの時間は別人の様に静かになる。

 余程集中しているのだろう。

 真剣な様子でこの星の為に祈りを捧げてくれることに、感謝の気持ちが尽きない。


 聖女さんの周囲を包む、ふわふわとした清廉な光が徐々に薄れていく。

 祈りの時間が終わりを告げて、俺はいつの間にか詰めていた息を吐き出した。


「……ふぅ。今日のお勤めおしまい! どう? 大分聖女らしくなったっしょ?」


 ぱっちりと目を見開いた聖女さんが、俺を見て自慢げに笑う。

 すっかりいつもの調子を取り戻した聖女さんに、俺もつられて笑ってしまった。


「ああ、もうすっかり立派な聖女様だな。まだこっちに来て日が浅い上に、こんな状況下でも本当に良く頑張ってくれていると感服するよ」


 この特異な状況でも頑張ってくれている聖女さんに、素直な賞賛を送る。

 すると、聖女さんは少し黙ってから照れたように頬を指先で掻いた。


「あー、そりゃあ色々と大変だけど、文句言っても変わらないし? やれるんならやる! って感じでしてるっていうか?」

「やれるならやる……か」


 前向きな言葉を噛み締めながら、俺はビーチェの事を思い出していた。


 ビーチェもまた、自分にやれる事があるならやるというタイプの女性だった。

 断りもなく聖女として召喚されたにもかかわらず、その特異極まる力から人類の御旗として先頭に立つと決めたのも、また彼女自身の意志だった。


「ビーチェも、良く似たような事を言っていたよ」

「へぇ~。あっ! ねぇねぇっ、折角だし奥さんの話聞かせてよ!」

「ビーチェの? あー……どんな?」

「そうだねぇ……やっぱり出会いとか? どこで出会ったの?」

「それは……」


 聞かれて答えに詰まる。

 俺とビーチェの出会いは戦場だった。

 人類連合軍の御旗である聖女を殺せと魔王直々に命を受け、渋々向かった戦場で出会ったのがビーチェだったのだ。

 既に聖女さんには俺の素性は知れているので、詳細を隠す意味はないが……なんかこう、気恥ずかしいな……。


「……町の中で、偶然」

「偶然!? 偶然出会って恋に落ちたの!? 運命じゃん!」

「いやまぁ、そうだな。運命だと思うよ、うん」


 実際、ビーチェとの出会いは運命だったのだと思う。

 穏やかな海の色。

 鮮やかな空の色。

 そんな深い蒼の瞳と目が合った瞬間、魔王から受けた命令など頭の中から一瞬で消えてしまったのだから。


「目が合った瞬間に全部忘れて、ビーチェの事しか見えなくなったなぁ……」

「うんうんっ、恋は盲目って言うよね~。奥さんもオジサンに一目惚れしちゃったの?」

「いいや、そうでもなかったな」


 思い出して苦笑する。

 元々、俺はビーチェを斬り殺すつもりだったのだ。

 剣を構えた男が目の前に現れて、驚かない奴はいない。

 ビーチェも例外なく驚いてはいたが、その驚き方は実に個性的なものだった。

 剣を構えたまま身動きが取れなくなった俺に、屹然とした態度で平手打ちを浴びせて来たのだ。


「驚いてる間に、思い切り叩かれてしまってね」

「あー……、オジサン、出会い頭にやらかしちゃった系?」

「まぁ、大分……」


 剣を構えて飛び出すのは、やらかしの中でも相当なやらかしに部類されるのではなかろうか。


「けれど、ビーチェはすぐに俺を理解してくれた。君が俺の運命だ、全てを捨てて君の為に生きる……初対面でそんな事言われても困るだろ?」

「めっちゃ重いなって思う」

「俺も思う。が、本当に心の底からそう思ったんだ。彼女に出会う為に、俺は今日まで生きてきたんだってね。有難いことにビーチェも何かを俺に感じてくれたのか、すぐに微笑んで俺の手を取ってくれたよ」


 実際は人類連合軍の兵士に囲まれ、剣と槍に串刺しにされた挙句の告白だったのだが、まぁ、そんな血生臭い話はしなくても良いだろう。


「周囲の理解を得るのは大変だったが、ビーチェも協力してくれたから辛くはなかったな」


 当時の俺は魔軍幹部として名を馳せていたので、俺が聖女、ひいては人類側に付くと言っても中々信じてもらえなかったものだ。最終的に信頼を得ることが出来たのは、魔王エクリプスを討った後の事だった。


「色々と苦難はあったが、最終的にはご存知の通り、夫婦になったって訳だ」

「なるほどね~。オジサンのノロケ、ご馳走様でした! あーあ、オジサンといい、志乃さんといい、私も運命的な恋したーい!」

「運命は何処に転がってるか分からんからなぁ~」

「私の運命どこー!」


 君ならきっと良い運命に出会えるさ。

 そう思いながらも口にするのは憚られ、頑張れとだけ口にした。



 END



「私の運命の人……顔が良くて、優しくて、強くてカッコよくて、スタイルも良くて八頭身くらいでっ、私のこと甘えさせてくれるし私にも甘えて来てくれて、休みの日は一緒にいつもどこかデートしてっ、一生食べるのに困らないだけの貯えがあって、健康的で誠実な人が良いなぁ~」

「あはは……見つかると良いね……」


 うーん、乙女の欲望は無限大……。

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