兄弟姉妹
リリスの変化を見て、第一王子アーサーは内心喜んでいた。以前の彼女は常に俯きがちで、控えめを通り越して存在感を消しているような妹だった。しかし、ここ数日、リリスが図書室に籠って魔法について学んでいる姿や、ダンスレッスンに熱心に取り組む様子を目にし、何かしらの変化を感じ取っていた。
夕方、アーサーは自らリリスを訪ね、微笑みを浮かべてこう提案した。
「リリス、このところ随分元気になったね。それに伴って、僕も考えたんだが…しばらく皆で顔を合わせていないだろう? せっかくだから、兄弟姉妹で夕食会を開こうと思うんだが、どうだろうか?」
リリスは目を丸くした。
「皆様で夕食会なんて、ずいぶん久しぶりですね……。でも、お忙しいのでは?」
アーサーは穏やかな笑みを崩さずに答えた。
「それもあるが、僕が直接誘えば断る者はいないさ。君の元気な姿を皆にも見てもらいたいんだ」
そうして、翌日の夕食会が決まった。会場は王宮内の王族専用の小食堂だ。
小食堂のセッティング
小食堂は、高い天井に彫刻が施された木梁が張り巡らされ、壁には王家の紋章が彫られた大理石の装飾が目を引く。中央には長いテーブルが置かれ、白金の縁取りが美しい真紅のテーブルクロスがかけられている。テーブルの中央には、異世界らしい不思議な光を放つ花が飾られ、その周囲には豪華な燭台が置かれていた。
各席には、煌びやかな銀食器と異世界の動植物をモチーフにした陶器の皿が配置されている。
侍女たちは壁際に整列し、それぞれの主に控えていた。給仕たちは厨房と小食堂を行き来しながら、次々と料理を運び込んでいる。
夕刻、リリスの兄弟姉妹が次々と小食堂に入ってきた。
第一王子・アーサー
アーサーはいつも通り品格のある装いで現れた。濃紺の軍服を基調に、肩には王族の紋章を象った金のエポレットが光っている。堂々とした姿と冷静な表情は、彼がいずれ国を背負う存在であることを物語っていた。
第二王子・フェリクス
フェリクスはアーサーとは対照的に、柔らかな薄紫のローブを羽織り、飾り気のある装飾品を身に着けていた。いつもの快活な笑みを浮かべ、気軽な足取りで席につく。
第二王女・クラリス
クラリスは深紅のドレスに身を包み、宝石が散りばめられたティアラをつけていた。鋭い目つきと整った顔立ちは、彼女の知性と野心を象徴している。食堂に入ると、アーサーに軽く会釈しながら自分の席へ向かった。
第三王子・レオン
レオンは真面目な顔つきで現れ、シンプルながらもしっかりとした装いの黒いスーツを着ていた。まだ幼さの残る表情の中に、彼が日々努力を重ねていることを示す真剣さが見える。
第三王女・リリス
リリスは淡いブルーのドレスに身を包み、髪を緩やかに編み込んでいた。以前より顔色が良くなり、内気だった彼女が少しずつ自信を持ちはじめたことを感じさせる微笑みを浮かべていた。
第四王女・ソフィア
ソフィアはピンク色のフリル付きドレスで現れ、特有の無邪気な笑顔を振りまいていた。愛らしさを存分に発揮し、入室した瞬間に場の空気を和ませた。




