ポニーテールが跳ねて見えたうなじは最高だった
深夜の思い付きのシリーズです
作業の合間に書いているので不定期投稿です
※『推しのことが好きすぎて異世界に転生しちゃいました』とは一切関係ない作品です
五月二十二日。水曜日。
白石さんとの週番という楽しみが半減してしまったけど(勘違い)それでも楽しかった。しかし明日からは違う。
高校生活で初めての中間テストが待っている。
そんなボク達を気遣ってか本日最後の授業となる四時間目の体育は男女で別れて好きなスポーツをやるというものだった。
しかしボクは好きなスポーツなんてものはなく特に意見することなく流れるままに男子はバスケットボールをすることになった。
ボク的には個人競技は試合中目立つし、集団競技はチームメイトに迷惑をかける。つまりボクはなるべくスポーツをしたくない。
当たり前だ、勉強が嫌いな奴は勉強をやりたくないようにスポーツが嫌いな奴はスポーツをやりたくない。
正確にいうのであればボクはスポーツの楽しみ方が分からない。絶望的に何もできないので、楽しくなくすぐに諦めてしまう。
ボクはモブ同士でチームを組もうと思う。
ボクもバカじゃない、別にモブだからと言って常に一人でいるわけでも嫌われているわけじゃない。ただ目立たないだけなんだ。ボクみたいなヤツは、普段一人でいるもよし、同類でで固まるもよし、ただこういう緊急事態はなるべくお互いの手を取り合うのだ。
さて、ボクはどいつと外交すればいいんだ……。
「よーし、チームはクラスから四つ作れ、出席番号順でな」
体育教師からかけられた言葉はトリッキーなものだった。
は!?
なんだと?
無駄な配慮してんじゃねぇよ。
普通こういうのは「好きな奴と組め―」って言われたら大体一人になってしぶしぶ入れらてもらうのがボクらの仕事なんだぞ。いや結局モブ同士で外交しないじゃないかそれなら。
ではなく……、ボクのチームは……、
「よろしくな、新保」
だ、誰だ?
なんでボクなんかに肩組んでんだ……?
「あ、よろしく、えっと……」
あ、確か馴れ馴れしいサッカー部。
「えー忘れたの?俺中学同じ中学校の青陽だよ」
「同じクラスになったことありましたっけ?」
「ひっでぇなー、中学の頃三年間同じだったけど覚えてくれてないのか……」
ま、マジか、そ、そんな奴がいたのか。てことは今年で四年連続同じなのか……。
ボクの中学は完全なる暗黒期(今も大して変わらない)。それを知る人物がこんな近くにいたなんて……。
「これで覚えたろ?」
「は、はい。一生忘れないと思います……」
「なんか、顔怖いなんだけど」
「すみません」
「いや、謝ってほしいんじゃなくてさ……」
「あ、すみません」
「いや、だから……」
「あ」
「まぁいっか」
「おぉーい、明楽、何してんだ?」
遠くから青陽(下の名前は明楽っているのか、軽々しく心の中でも呼べないな)を呼ぶ大きい声がする。
「ほら、新保も来いよ……!」
ボクは青陽に手を引かれる。
女子の方を覗くと女子もバスケをやるそうだ。
体育着の白石さんもかわいかった。
特に運動するために縛られたポニーテールはボクにとって破壊力抜群だった……。
「おい……また白石さんの方を見てただろ?」
「……」
「かわいいけどなー、白石さん」
「そ、そうですね……」
青陽も白石さんの事狙ってるのかな……。
「今、新保が思ってること当ててやろうか?」
「……!」
「俺も白石さんのことが好きかどうか、だろ?」
ボクは慌てて青陽から視線を外した。
……どんぴしゃで当てられた。
「新保ってやっぱ、おもしれ―。わかりやす。なぁ?どっちだと思う?」
「どっちでもいいです」
「なんでだよ?」
「どうせ僕が白石さんに興味を持ったって、振り向いてくれないので……」
そう、最初から分かってる、白石さんがボクなんて相手をしてくれないこと。
だからボクはモブとなって傍観者、観測者としてあり続けるんだ……。
「新保、お前、面白くないな……」
青陽は急に冷たい顔になってボクに冷たく放つ。
そうなんだ、結局青陽はボクが面白くて見てただけ、関わりたくて話していたわけじゃない。
でも、少しだけ明るい青陽がこんな顔をすると思うと怖くて、悲しい気持ちになった。
「なぁーんてな」
と思ったら急に笑顔になった。いつもより造りが過ぎた笑顔。
「でも、新保、諦めるなよー、諦めたら叶うものも敵わないぞ」
そう言ってひいていたボクの肩を叩いて、青陽の事を呼んだ男子の元へと行った。
さっきの真顔は冗談の様には想えなかった。
ボクは絶望的にバスケのセンスがなかった。
中学の頃から分かってはいた事だけどそれでも時が経てば少し位上手くなっていると期待していたけど成長は一切していなかった。当たり前だ、時間が経つだけで成長するならじじぃになったら誰でもプロ選手になれてしまう。
ボクは敵陣のゴール前に立ち、ロングスローを受け取る役目になった。
ボクのディフェンスは結構邪魔らしい。
青陽も擁護してくれないぐらいには……。
ボクが試合をしているとき仕切りのネット越しに見える隣のコートではちょうど白石さんが試合をしていた。
高く飛び相手のシュートをブロックした。周りを見てパスコースを探すけどなぜか白石さんは味方にパスを出さずダムダムとボールをつきドリブルを開始した。ボクは見ていてもよく分からなかったけど簡単に相手チームの女子を躱していた。スピードが明らかに違った。
あっという間にスリーポイントラインに到達して、ボールを掴みシームレスにシュートモーションに入った、高く飛び敵のブロックなどあざ笑うかのようにシュートを打つ、放物線を描いたシュートはリングに当たることなくネットと擦れた。
「うまっ」
自然と口に出してしまった。
シュートを打つときポニーテールの部分が跳ね、若干汗ばんだうなじが見えた。
最高だった。
ボクはぼーっとしていると、
「しんぼ!」
僕を呼ぶ大きい声が聞こえそちらの方を向くと……、
「ボコッ」、そんな音はならなかったけどボクにはそうなったように聞こえた。
「いたっ」
頭にボールが、ぶつかった。
ボクはボールの行方がどこに行ったか分からず、周りをみると、視線はボクよりも上にいっていた。
「ガタッ」と音がした後、ネットがこすれる音がした。
その後、ドカっと爆笑が起こった。
「あはははははは」
「新保おもれー!」
……僕はすごい笑われた。どうやらロングパスがボクの頭に当たった後、直接ゴールに入ったようだ。
見ていた他のクラスメイトも、相手チームの別クラスの生徒もボクを笑う。
少し恥ずかしかったが、別にボクのことを笑っていたよりも、一連の出来事がおかしくて笑われれていたので別に嫌な気分じゃなかった。
けど少しだけ頭が痛かった。
女子の方も「なになに、男子どうした」と何が起きたのか気になった様子だった。
それは少しだけ嫌だったが、なぜか白石さんも少しだけはにかんでいるように見えた。
結局あの後授業が終わっても話題はボクのへんてこプレーでもちきりだった。
女子にもその話題は広まり、体育館から教室へ帰る途中「新保、ナイスプレー」と女子にも小ばかにされた。
「はい、じゃあ気を付けて帰るように……」
担任のその掛け声で皆は一斉に「さよならー」と帰っていく。今日はテスト前なので掃除当番もないようだ。
今日は白石さんが日誌を書いてくれるのでボクも今日は早く帰ることができるが、ボクは軽く掃除して帰ることにした。
塵取りと箒を使って、埃を取る。テストをするとき埃が少しでもない方が受けやすい。多くの人間が使う場所だから今日やったところで明日はまた埃がたまるだろうけど。
気の持ちようだ。
いくつか机の上にはまだ鞄が置いてある。おそらく学校で勉強してから帰る組みだろう。
ボクは家でやった方が効率良いタイプだからこういう人のために掃除をしているとしよう。
ある程度を掃き終え黒板を消そうとしたとき扉が開く。
顔を向けると、白石さんだった。
「あ、新保君えらいねー」
「あ、いえ。こちらこそ日誌ありがとうございます」
「そういう当番でしょ」
まだどぎまぎするけどなんとか会話をするだけの脳のリソースはある。
「あ、はい」
「今から黒板消しやるの?」
「あ、はい」
「手伝うよ」
「い、いえ、ボクが勝手にやってることなので……」
「いいのー」
ボクらは並んで黒板をきれいに掃除する。白石さんは体育の後だったけどとてもいい匂いがした。
「よぉーし終わったー。きれいになったねぇ」
「あ、ありがとうございます」
「全然大丈……わっ……」
「危ないっ……」
ボクは咄嗟に白石さんの体を支えるために……、手を引いた……。
「あ、すみません……」
白石さんが教壇から転びそうになったのでボクは咄嗟だった。だから白石さんの体に触れてしまった。ボクは光速で手を引っ込め、
「危ない危ない。ありがとうねー」
土下座をした。
「ちょ、どうしたの!?」
「すみません!」
ボクは謝ることしかできない。それぐらいしか今は払えない、今度バイトして慰謝料払おう。
それぐらいモブがしてはいけないことをした……。
「え?ちょ?え!?」
そりゃ、キモがるよな、モブなんかに体を触られたら……。
「顔上げてよ……、私が助けられた側なんだし……」
まさか……、なんてことだ困らせてしまっているんじゃないか……?
ここは土下座を直し礼の姿勢の方がいい。
「すみません、勝手に体に触れてしまい……、以後三メートルの範囲には近づかないので……」
ボクは何を言っているんだ!?
ただキモイだけの奴じゃないか……。でもそれだけの事をしでかしてしまったんだ……。
ボクは大罪人なんだ……。
「もー、大げさだよ……。むしろ謝るのはこっちだし。ごめんね、そしてありがとう」
白石さんにお辞儀をさせてしまった。
……どうしようどうしよう。
モブとしてあるまじき事を白石さんにさせてしまった。
「すみません……」
「もー、だからなんでそっちがそんなに謝るの?助けてくれたのは新保君でしょ?」
「そうなんですけど……。体に触っちゃったので……」
「そんなの助けてもらったんだから気にしてないよ。さっきも言ったけどむしろこっちがありがとうだよ」
ボクはそんな感謝されていることはしていない。
「そうですか……?」
「うん、うん。あ!ごめんね!もう帰らないと。体支えてくれてありがとうね!それからもうひと助けても謝らないでよ!じゃあね!」
白石さんはニコっと笑って自分の鞄をもって教室を出た。
顔を上げた時に匂った白石さんの髪は、はちみつのいい匂いがした。
読了ありがとうございます!
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